谷 好通コラム

2017年02月22日(水曜日)

2.22.営業と不動産仲介者が一体となった存在意義と弊害

ある建設業者、○○ハウスは、
その営業を不動産仲介と一体化して、
独特のビジネスモデルで莫大な利益を上げ、発展した。

 

その不動産仲介のような営業マンとしての仕事のポイントは、
地主さんに対する徹底したサービスで親密な人間関係を作ること。

 

地主さんは、親から相続した土地を持っている人であることが多く、
事業に成功した人であることは稀で、
ましてやその土地を開拓したわけでもない。
だから、もらったその土地を貸す以外に活かす方法を知らない。
かといって、先祖伝来の土地を自分の代で売るのは嫌だ。
近所の不動産屋さんに「誰か借り手はいないかな」と話をする程度。

 

一方、町の不動産屋さんは”客待ち”の姿勢で、
積極的に物件を開発することはない。
また積極的に借り手を探すようなこともしない。
貸地を探している企業が訪ねてくるのを待っているだけで、
地主さんに借り手探しを頼まれていたが、一向に見つからない。

 

そんな地主さんの所へ、
その土地に商業施設を建てたら有用であると
目を付けた○○ハウスの営業マンは通った。
用もないのにいつも世話(せわ)話をしに、
手土産を持ってせっせと通った。
数年がかりで人間関係を作り、すっかり地主さんの信頼を得て、
「君は本当にいい人だ、私の土地の運用については、君に全部任せるよ。」
と、言われるぐらいまでになった。
その信頼を応えるために営業マンは、
○○ハウス独自の営業ネットワークをフルに使って、
良い商業物件を探しているチェーン店の物件担当者を次々に紹介する。
しかも、そんな人たちは平身低頭で「貸してください。」と言ってくる。

 

今まで長い間、借り手が見つからずに困っていた地主は感激だ。
しかも、地主が出した条件を見事にクリアしているのです。

 

一方、チェーン店の物件担当者は、
町のあちこちの不動産屋さんに足を運んで物件を探していたが、
どの不動産屋さんも預かっている物件の数が少なく反応が鈍い。
ネットに物件紹介のサイトに載ってくる物件は、
条件が悪くてなかなか不動産屋で借り手が見つからなかった物件が多く、
ほとんど役に立たなかった。
そこへ、○○ハウスの営業が、
ネットに流れていない新鮮な物件を持ってきた、
条件も常識的な線でまとまっている。
持っている土地の好立地に目を付けて地主さんの元に通った物件だ、
悪いわけがない。
しかもこの営業マンは地主さんの全面的な信頼を得ていて、話が早そう。

 

両者の都合が合って、
話はとんとん拍子に進んだが、
土地の貸借を仲介した○○ハウスの仲介手数料はたかが知れている。
とても、数年がかりで地主さんに通ったコストが賄えるものではない。
しかし、この賃貸借の契約には、○○ハウスは仲介者としてだけではなく、
○○ハウスの「建築条件」を付けていた。

 

仲介者である○○ハウスが、
その土地に借主が建てる商業施設の建設を請け負うという条件がついている。
地主さんも世話になった○○ハウスの営業マンの願いを、
当然のこととして快く受けている。

 

借りる側の企業も、
どうせどこかの業者さんに建築をしてもらわなくてはならないので、
その建築条件付きを最初から承知している。

 

そこで、○○ハウスが借主の店舗、商業施設の建設を請け負うことになった。
多くの場合は借主の会社が施主であり、
建設協力金方式を地主さんが希望される場合は地主さんが施主となる。
しかしその場合でも、結局、工事費は借主が払うことになるので
借主が施主のようなものだ。

 

ところが、その建設費の見積もりを見てびっくり、
想定していた金額より30%以上は高い。
あきらかに建築費に30%は上乗せされている。
建築費が7千万円とするならば、○○ハウスからの見積もりは1億円。
○○ハウス利益率30%である。

 

その利益3千万円を払うのは実質的な施主である借主、
つまり、どこかの成長期にあるチェーン店の会社であるから、
出来上がった店舗が償却資産となるならば、
最終的にはすべてが経費となるわけで、その分、法人税が減るので、
実質的に1千6百万円程度の支払い増となるだけで、
それくらいならば、商売の中に十分吸収できる。
借主は余分に建築費を払う理不尽さを感じながらもOKする。

 

地主さんは、自分が払うのではないので関係ない。

 

○○ハウスは、表面的にはわずかな不動産仲介料を得ただけだが、
建築条件付きの不動産仲介を成立させた結果、
自らの本業の建設部分で、膨大な利益を造り出し、
数年がかりで作り上げた人間関係の成果でコストを一気に回収し、
会社に対して有り余る利益を生み出すことになる。

 

これを三方両得というか、
今流に言えば「ウィン、ウィン、ウィンの関係」と言うか、
誰も致命的な後悔をしない不思議なビジネスモデルである。

 

しかし、今ではこの成功が、
町の普通の不動産屋さんまで、マネするようになって、
やたら建設コストが上がり、やりにくくなっていることも事実だ。
○○ハウスのコマーシャルを見ると、
思わずため息が出てしまうのは、私の被害妄想なのであろうか。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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