谷 好通コラム

2014年07月31日(木曜日)

7.31.大きな飛行機より小型の飛行機の方が安心。

出張で飛行機に乗る時、
たとえば仙台行きや、福岡行きでは、
便によっては、ボンバルディアDHC8 Q400のようにプロペラ機もあって
一緒に乗る観光客らしき人たちが
「いやだな、こんなに小さな飛行機じゃ、怖いわ。」と言っています。
飛行機は小さいほどよく揺れて、
落ちやすいとでもいうような誤解があるのでしょうか。

 

イメージとして、
・小さい飛行機→小さい、弱い、落ちやすい、怖い。
・大きな飛行機→大きい、強い、落ちない、安心。
・・・
いえいえ、そんなことはありません。

 

飛行機の機体の料は、
ジュラルミンなどのアルミ合金であり、
最近ではかなりの部分が複合材で出来ています。
それは大きい飛行機でも小さな飛行機でも、ほとんど同じで、
同じ強度を持った材料で構成されています。

 

同じ強さの材料で造られているなら、
大きな構造物より、
小さな構造物の方が、
構造物全体として頑丈であることは容易に想像できます。
根本的に、小さな構造物である小さな飛行機の方が、
大きな構造物である大きな飛行機よりも、
構造物全体としての強度は高いのが当然です。

 

電子機器も大きい機体の方が、少し複雑なだけで、基本的には同じです。
飛行機を飛ばすソフトも、技術も変わりません。
飛行機が空を飛ぶための方法である翼による揚力の発生は、
同じベルヌーイの法則から成っており、何も変わりません。

 

加えて、
小さなプロペラ機は、万が一、エンジンが止まってしまっても、
細長い主翼で滑空し、
グライダーのように着陸する事もできます。
大きなジェット機は、
高速が出るように空気抵抗の少ない翼で、
エンジンが止まれば、滑空して・・という訳には行きません。
ほとんど、真っ逆さまです。

 

飛行機の操縦士の腕前はどうでしょう。
操縦士は、訓練を受けている初期の段階では、
同じ練習機、同じシミュレーションを使って訓練を受け、
そこで成績の優秀な人が大型機の操縦免許のコースに行くのでしょう。
私はよく知りませんが、
いずれにしても操縦士になるまでに、
試験の「成績」で、分かれることには違いないと思います。
だとしたら、
大型機の操縦士は試験の成績のいい人の傾向であって、
小型機の操縦士は、試験の成績があまり良くなかったのかもしれません。
しかし、飛行機の操縦能力とは、試験だけで、
能力の優劣が決定できるものとは思えません。
小型機の操縦士でも十分に優秀だと思います。

 

また、
飛行機の操縦士のキャリアは、
一般的に「飛行時間」で表されます。
飛行時間が長ければ長いほど、経験豊な信頼できる操縦士となります。
しかし、私はいつも思うのですが、
小型機は比較的短い距離の路線を乗るので、
頻繁に離着陸をしており、
しかもプロペラ機などは高度5,000~7,000mくらいの低い高度を飛び、
つまり、比較的気流が安定していない高度を飛んでいます。
つまり、小型機の操縦士は、いつも忙しく操縦していると思うのです。
それに対して大型機は、国際便が多く、
ヨーロッパ線、アメリカ線など、片道10時間以上もかかるような、
長距離の路線を飛ぶ機会が多いでしょう。
長距離便の飛行は、
11,000~13,000m以上の比較的気流の安定した所を、
自動操縦で、コーヒーを飲みながら計器を見ているだけの飛行が長く、
同じ飛行時間でも、
せっせと操縦している小型機の操縦士に比べて、
大型機の操縦士は、のんびりしている飛行時間が長いのではないでしょうか。
だから、
同じ飛行時間だとすれば、
小型機の操縦士の方が熟練していて、
操縦の能力は高いのではないか、と思うのです。
もちろん、私の勝手な想像で、根拠などありません。
私のいい加減な話です。

 

今朝の新聞に、
格安航空会社(LCC)の日本の草分け「スカイマークエアライン」が、
世界最大の巨人旅客機「エアバスA380」を6機、1,900億円?で注文していて、
もうすぐ、1機目が、納入される直前だったのですが、
全機キャンセルするそうです。
それで700億円ものキャンセル料をエアバスから請求されているそうです。

 

最近、日本の国内線には、
JET STAR、ピーチエア、スターフライヤーズ等々
すごい勢いで格安航空会社(LCC)が新規参入しています。

 

かつては、
格安運賃の市場は元祖スカイマークエアラインが独壇場で
絶好調の業績だったのですが。
競争相手が劇的に増えて、今期はとうとう「赤字転落」になってしまいました。
そうしたら銀行からの資金調達が出来なくなって、
巨人機A380を買えなくなったそうなのです。

 

買えなくなったら、キャンセルするしかないのですが、
その違約金に700億円も請求されていて、それが新聞沙汰になっていたのです。

 

世界の格安航空会社は、所有機のほとんどが小型機です。
エアバスA320、A321、A319
ボーイング737-700、-800
エンブラエルE70などです。

 

格安航空機会社は、
チケットを格安で売るために、
とにかく効率的な運行が求められます。
常に満席に近い運行を迫られ、
席がガラガラの状態で、飛行機を飛ばすことが、一番ダメなわけで、
LCCは、ひたすら満席を狙います。
だからLCCは小型機を運行します。
大型機は少しでも需要が落ちるとガラガラになります。
小型機ならば多少需要が落ちても、それほどはガラガラにはならずに済むし、
反対に乗り切れないほどのラッシュになっても、
乗せなければいいだけで、
あまりにも多ければ、飛ぶ便を増やせばいいだけです。

 

だから世界中のLCCは、ほとんどが小型機で運行しています。

 

ならばスカイマークエアラインは、
なぜ世界最大の巨大機A380を買おうとしたのか。
国内線ですばらしい業績を上げたので、
“国際線”に打って出るために、いっぺんに多くの旅客を運べる超大型機を買い、
大量の安い旅客を集めれば、勝算があると見たのでしょう。
成田⇔ニューヨークの路線にA380を投入する予定だったようです。
しかしその前に、
国内線に、競合のLLC社が続々と現れ、
国内線での業績が悪くなってしまったので、何もかもが狂ってしまいます。

 

注文をしていたのがA320などの小型機だったら、
メーカーとしても、キャンセルになった飛行機を
他にいくらでも買い手を探して売れたでしょうから、
法外な違約金など言い出さなかったかもしれません。
しかし、世界最大の巨人機では、
そうおいそれと他の買い手が見つかるわけでもなく、
本気で、損害金を言ってきたのかもしれません。

 

巨大機は、B747ジャンボ機がそうであったように、
運行コストが高く、特に燃料の高騰で、
圧倒的な需要がなければ、
採算の取れる運行が難しくなって、
ANAもJALも、すべての日本の航空会社がジャンボ機を手放してしまいました。

 

しかし、最新の飛行機は、
高燃費エンジンと、低抵抗翼、複合材での軽量化などで
超大型巨人機でも採算の取れるようなコストにまで下げたのがA380ですが、
ジャンボ全盛の頃のようには、売れません。

 

小型機だったら、転売が効いたのに、
超大型機では転売が難しくて、キャンセルしたら700億円とは。
スカイマークエアラインそのものの存続に大きく影響するでしょう。
なぜもっとは約にキャンセルが出来なかったのか。
それは私達には想像もできないような事情があったのでしょう。

 

怖い話です。
なにはともあれ、
大きな飛行機より小型の飛行機の方が安心です。

 

中部空港と福岡空港を日帰りで往復しました。
行きはANAの小型機A320に乗り、
帰りはLLCスカイフライヤーズのA320に乗って、
やっぱり小型機がいいなあと思いながら、行きと帰りの往復で書きました。

 

宇宙の青

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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