谷 好通コラム

2014年01月18日(土曜日)

1.18.ゼロ金利時代でも忘れてはならない現実的なリスク

来週の火曜日、
我が社でも「リスク管理委員会」というものが発足します。
委員長は私です。
この会社が持っているリスク、
つまり会社の存亡にかかわるような危険に、どのようなものがあるか、
みんなで話し合って、色々な場面を想定しながら考え
その予防策を考える委員会です。

 

たとえば、
日本に突然、急激なインフラが起きて、
たとえば借り入れ金利が10%を越すようなことがあれば、
多額の有利子負債を抱えているような企業は、たちまち存亡の危機に陥る。

 

たとえば、年商10億円の売り上げがあって、
売上総利益率30%つまり粗利益(付加価値)が、3億円であり、
設備等の先行投資で、有利子負債が年商と同じ10億円ある会社があったとする。
これは小売業、サービス業でよくあるパターンです。
(年間売上総利益の200%までが借り入れの適切額と私は経験的に思っています)
そこに販売費・一般管理費が粗利益の80%、2億4千万円がかかると、
営業利益が6千万円。
そこに利息が1.5%ならば1千5百万円の利息が営業外費用でかかって、
経常利益は6千万円-1千5百万円=4千5百万円
これが5年続けば、
内部留保も、法人税納税後で5年×4千5百万円×55%=1.2375億円貯まる。
毎年、利息も減って経常利益ももっと上がっているはずだ。
これはよくある優良な企業のパターンで、
信用調査でもたいてい53点以上がついています。

 

しかし、ここに、
突然の急激なインフラで、借り入れ金利が10%になったとすると、
利息が毎年1億円かかって来ることになって、
営業利益で6千万円稼いでいても、
経常利益はマイナス4千円になってしまう。
これが5年続けば、
単純に考えて、借入金は10億円+(5年×4千万円)=12億円となって、
累積赤字は2億円。
その時点では利息も増えていて収益性はますます悪くなっている。
それよりも、
5期連続赤字で、
赤字額が毎年増加しているような会社の信用度は下がっていて、
借り入れの利率は上がり、担保もきつくなって、
多くの場合、新たな借り入れが起こしにくくなっていて、
支払いが苦しくなり、
どこかで資金ショートする事が考えられる。つまり、倒産です。

 

10億円の年商で、30%の粗利益率を確保し、
販売管理費を粗利益の80%で賄っているような優良企業でも、
年商と同じ額の変動金利の借入金があると、急劇なインフラが来れば倒産する。

 

だからといって、
有利子の借入金が増えることを恐れて、
設備投資などの先行投資を怠れば、
企業としての競争力が低下して、
年商も、粗利益率も保持する事も出来ず、
借入金が少なくても、あるいは金利が上がらずとも、
企業として収縮し、いずれは消滅するかのように倒産する。

 

あるいは無借金経営を目指すという選択もあるのでしょうが、
裸一貫で始めた会社ならば、それは難しいことであり、
それを目指すことに、私にはあまり意味が見えません。

 

これは、ほぼどの企業も共通して持っているリスクであり、
でも、ゼロ金利時代の現代の状況では、
つい忘れがちになるリスクでもあります。
しかし、国の累積財政赤字が国民の貯蓄総額を越した今、
外国に買ってもらわざるを得なくなった国債が、何かの拍子に安くなって、
つまり金利が突然高くなるというようなリスクは、
確率が低かったとしても、
忘れてはならない現実的なリスクなのではないでしょうか。

 

このようなリスクを有効に回避するには、
絶対的な収益性の確保、つまり無駄使いをやめ、有効な先行投資と、
多少金利が高くなっても頑固に固定金利での借り入れに徹すること。
ではないかな、と思っています。
しかし、固定金利でしかも収益性を害しないレベルの低い金利での借り入れは、
企業に収益性があることが前提です。
収益性が高いということは、
その会社が、社会にいかに役に立っているかどうかということです。
会社とは、いかに社会に役に立っているかどうかで
リスクのかかり方も変わってくるということでしょう。
結局、そこにくるのかもしれません。
そんなことを考えました。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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