谷 好通コラム

2013年09月11日(水曜日)

9.11.少年谷好通にとって「生沢 徹」は、ほぼ神様であった。

私が中学校に行っていた頃、
なぜか私はレース大好き中学生であった。
その頃、F1とは関係ない「日本グランプリ」の絶頂期で、
日産とトヨタ、ポルシェの三つ巴の戦いが何年か続いていた。

 

 

最初、1963年第一回日本グランプリを見たのはたまたまの偶然であった。
私は11歳なので
何がなんだかよく分からなかったとは思うが、
テレビのカメラが、
レースの先頭を走る車を追って、延々と同じ車を写していた。
この時、優勝したのは「ロータス23」という小型のレースカーで、
エンジンをミッドシップに積んでいる以外は、
まるでゴーカートに風よけのカバーを付けただけの様に見える。

 

 

他の車は、画面にほとんど写らなかったので、分からなかった。

 

 

第二回日本グランプリは、
「式場壮吉」が日本に持ち込んだポルシェ904と、

 

 

日本の自動車メーカーではレースに長けていた「プリンス」が
スカイライン2000GTで対抗する。

 

レースは、ポルシェ904の圧勝であったが、
若きエース「生沢徹」が駆るスカイライン2000GTが、
ほんの一瞬、首位を走る場面があって、日本国中が沸いた。

 

 

人気が出てきたカーレース。
第三回日本グランプリは、
いよいよ日本の自動車メーカーが本気で乗り出してきた。
プリンスが、「R380」という本格的なプロトタイプを造り、本気で勝ちに来た。

 

 

トヨタ自動車は「トヨタ2000GT」を送り込んだが、
これはスポーツカーで、レースのために作られたレースカーには歯が立たない。

 

実業家「滝進太郎」が持ち込んだ「ポルシェカレラ6」は、
最新のポルシェのレースカーであり、
デイトナなど有名なレースで優勝するなど実績があった。

 

 

結果は日産プリンスR380が、
ピットワークなどレース運びに圧倒的であり、
ポルシェカレラ6は、速さはあったが、
レース途中で衝突しリタイアし、R380が優勝した。
レースの途中、生沢徹が乗るR380が、
先を行くポルシェカレラ6を妨害したとしてブーイングを浴びた。

 

 

いよいよ第四回日本グランプリ
日産プリンスはR380を改良して大幅に性能を上げた「R380Ⅱ」を造る。

 

 

そしてポルシェカレラ6は3台に増えた。

 

その3台の中には「生沢徹」がいた。
日産プリンスのワークスドライバーの年功序列で、
生沢徹はR380Ⅱに乗れなかった。
それで滝進太郎のチームに参加したのだった。

 

前を行くのが生沢徹。それを追う酒井正。

 

 

レースは、R380Ⅱを駆る高橋国光と、
ポルシェカレラ6の生沢徹の一騎打ちとなり、
デッドヒートの挙句に、スピンした高橋国光を抑えて生沢徹が優勝した。

 

 

一躍有名になり、大スターになった生沢徹は、
翌年の第5回日本グランプリでは、
5リットルクラスのエンジンを積む日産「R381」
3リットルのエンジンを積む「トヨタ7」、
5リットルの「ローラT70」などを向こうに回して、
2リットルの「ポルシェカレラ10」で、見事総合2位に入り、
生沢徹の人気はますます高くなった。

 

生沢徹は甘い風貌に加えて、
男性ファッションブランドの草分けである「VAN」のイメージであったり、
ヨーロッパナイズされたセンスが人気に火を注ぎ、
少年には、もうほとんど「神」的な人気であつた。

 

その後、生沢徹はヨーロッパのF3戦に参戦したり、
日本のレースが、世界に出て行く草分けともなった。

 

その頃のレーサーといえば、
高橋国光、長谷見、横山、蟹江、細谷、砂子、福田、川合、黒沢、などなど、その中でも生沢徹は、飛び抜けて光っていて、
まさに大スターであったが、レースの表舞台からは静かに消えていったのか、
ほとんど見の姿を見なくなった。

 

 

ポルシェカレラ6は私にとってあまりにも強烈な印象であり、
今でも、この車は特別な一番好きな車である。

 

 

その生沢徹に、三日前にお会いしました。
TOM‘Sのピットにふらっと現れて、一緒に写真を撮ってくれた。
チラッと誰かから聞いたところでは、
生沢徹は事業に大成功して、世界中に家を持っているらしい。
所有する車のコレクションはとんでもないものらしい。

 

谷 好通はすっかり少年になっている。

 

生沢徹は、やっぱり神だったのか。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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