谷 好通コラム

2012年10月19日(金曜日)

10.19.「こだわり」、一つの事に囚われて適応できない事

「拘り(こだわり)」とは、
「一つのことに囚われて(とらわれて)執着し、適応できないこと」を言う。
国語辞典にそんなふうに書いてありました。

 

よく「食のこだわり」とか「品質にこだわる。」とか、
こだわりという言葉を、
何かを徹底するというような良い意味で使われることが多いが、
これは日本語的に本来的な使い方ではないそうです。

 

元々「こだわり」とは、
「大切な人の過去の過ちにこだわる。」とか、
「自分の間違いに気がついても、自己主張にこだわる。」とか、
物事の本質以外の部分に無用にこだわるようなことに使われる
あまり良くない意味の言葉であると学んできました。

 

私たちの洗車・コーティングの場合に当てはめると、
「自分は仕上がり品質にこだわるので、時間が人よりかかるのは仕方がない。」
とおっしゃることを聞くことがありますが、
私は、これは間違っているのではないかなと思っています。

 

ここで言われている「こだわり」が、
「商品品質をあくまでも大切にし、維持する。」という意味だけならば、
それは素晴らしいことで、
洗車・コーティングという商品がサービス商品であり、
私たちが現場で一つ一つ造り上げる商品なのですから、
あくまでも「品質第一」は大切な要素です。
しかし、これに「だから時間がかかっても良い。」が加わるとなると
それは間違っていると思うのです。
いわば悪い意味での「こだわり」になってしまいます。

 

洗車・コーティング作業の場合、
一つ一つの作業にはマニュアルがあり、
その一つ一つを確実にこなしていけば、
仕上がり品質、商品品質は高い水準で実現し、維持できます。
そのためにKeePerマニュアルは、
決して机の上で作られたものでなく
何千台、何万台という実践の中で、多くの人の経験と議論と上で、
細部にまで気を配ってもっとも良いと考えられた方法で構成されており、
商品品質の維持と同時にスピーディーな作業で仕上がるようにできています。

 

「商品品質にこだわるから時間がかかる。」とは、
まったく違う考えです。
「商品品質を大切にするから、作業時間も早い。」が、
結果としての正解だと思っています。

 

商品品質を大切にするということは、
「やるべきことをきっちりやる。」と同時に
「無駄なことをしない。」も必要で、
つまり、
たとえば、
一度でキチンと拭くべきところを、
無駄に二度も三度も拭いたりするから、
時間もかかるし、かえってキチンと拭き上がっていない。
無駄なことをしていると、作業時間が遅くなるだけでなく、
一つ一つの作業に正確さがなくなるので、商品品質も落ちることになります。

 

商品品質が高い作業を行っている人、
つまり上手い人とは、
一つ一つの作業をキチンと的確に行っているので、仕上がりも良く、
結果的に無駄もないので、早い仕事ができています。

 

私は「上手いは早い、早いは上手い」という言葉をよく使います。
「上手いは早い」は、
上記のような説明でまだ解りやすいのですが、
「早いは上手い」を、
「作業を”雑に”やってでも早く仕事をする」と受け取られると、非常に困ります。
これはもってのほかです。
サービス商品を造る者として最低の行為です。

 

サービス商品を造る者、つまりサービス業としては、
「急ぐ」ことすら非常に危険な行為です。
つまり、
たとえば、
同じようなサービス業として「床屋さん」がありますが、
その床屋さんで、
店舗にお客様が少なく空いている時は、
普通の整髪をしてもらうのに1時間かかりました。
しかし年末などお客様が集中して混雑している時に行ったら、
ご亭主がいつもより早く手を動かし、洗髪もさっさと終わって、
整髪してもらうのに、30分で済んでしまった。とします。
もちろん同じ料金です。
皆さんがそのお客様としたら、どう感じられますか。
「仕方ないのかなあ」と思う反面、
キチンとやってもらった感覚はないと思います。
だから満足していず「損した」とも思うでしょう。
そして、もっと暇な時に来て、キチンとやってもらおうとも思うか。
あるいは、もう今度から他の店に行こうと思うかもしれません。

 

この床屋さんは、年末の掻き入れ時に、
出来るだけたくさんのお客様を”さばこう”として、
普段よりうんと”急いで”、雑な仕事になったのではないでしょうか。
年末の掻き入れ時、普段よりも急いで、
普段の2倍のお客様をさばいたとしても、それは短期間のことであり、
わずかな増収にしかなりません。
それよりも年間を通じて通っていただいているリピートのお客様を、
何人か失ってしまえば、元も子もなくなるどころか、
年間を通して計算すればマイナスになっているのは大いにあり得る事です。

 

しかし、仮に私たちが物を販売する「物販業」ならば、
商品の付加価値は、
物である商品そのものの中にほぼ全部含まれているので、
店が混んでくれば、急いで商品をお渡しても、
お客様が得る付加価値はなんら変わらないので、
むしろ急いでお渡しすることが、お客様への貢献になります。

 

しかし、私たちの扱う洗車・コーティングなどサービス商品は、
商品の付加価値をその場で、
私たちの手で造るものなので、
店舗が混んでいようと空いていようとも、
いつもの商品品質をキチンとした作業で造り上げる必要があります。
混んでいるからといって、
目先の得を求めて”急いで”雑な仕事をしては、
せっかく作りあげた年間を通じての大切なリピートのお客様を失いかねません。
サービス業は、忙しくても、決して急いではいけないのです。

 

混んでいるから、いつもより手を早く動かしたり、
作業の手順を省いたりしては、いつもの品質を確保する事は無理です。

 

いつものように、準備をきちんとして、テキパキと、
キチンとやるべきことを無駄なく淡々と続けることが一番能率的で、
キチンとした品質と最速のスピードを実現する方法です。
サービス商品を作りあげるサービス業の部分と物販業の決定的な違いです。

 

こんな時、
「自分は仕上がり品質にこだわるので、時間が人よりかかるのは仕方がない。」
と、やっている人は、
一つ一つの作業が不正確で、
何度も同じ事をやっている場合が多いので、
忙しくなると、手数を減らしたり、不正確な仕事になりがちです。

 

結果的に「急いで」、「いい加減な品質」で洗車・コーティングを作業し、
忙しい時だから仕方がないと、
品質の低い雑な仕事=付加価値の低い商品を、
お客様に提供し、お客様に不満を与えて、
「せっかくの年末年始だからこそ、きれいな車で過ごしたかったのに」と、
大切なお客様をなくしてしまうのです。

 

「自分は仕上がり品質にこだわるので、時間が人よりかかるのは仕方がない。」
と人は、
普段の仕事が遅いだけでなく、
必ずしも商品品質が高くもない場合が多く、
店舗が忙しくなると、むしろ著しく低い品質の低い商品を提供して、
リピートのお客様すら逃がしてしまう場合をよく見る。

 

「自分は仕上がり品質にこだわるので、時間が人よりかかるのは仕方がない。」
とおっしゃるのは、むしろ自己満足の要素が多い。

 

品質を正しく高く維持するのならば、
必要なことを正しく、無駄なくキチンと作業する事です。
それが一番なのです。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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