谷 好通コラム

2012年08月16日(木曜日)

既成事実を造られる前の抑止力

前の話でNHK朝ドラマ「梅ちゃん先生」が、
悪意のない人ばかりが出てくる、仮想のドラマではあるが、さわやかであり、
そのさわやかさで一日気分が良く、毎日見てしまっていることを書いた。

 

では逆に、
「悪意がある」とは、どういうことなのだろうか。

 

「悪意がある」とは「奪う気持ち」ではないだろうか。
「人の物を奪う。」=窃盗
「人の命を奪う。奪おうとする」=殺人、あるいは未遂。
「人をだまして金品を奪う。」=詐欺。
「自分の義務を果たさず、人に害を与え平和な生活を奪う。」=例えば飲酒運転
「人の権利を踏みにじって、傷つけ、平穏な心を奪う。」=虐待、いじめ。
などなど、これらは単純な犯罪として罰せられる。
悪意のある行為とは、
人から何らかのものを奪う行為。
悪意のある人とは、
自らの利益のために人から何らかを奪い、害を加える人。
そんな風に規定できるのではないだろうか。

 

その上で、
「自分の利益、権利を一方的に主張して、人の利益、権利を奪おうとする。」
この行為は、一見すると犯罪行為に非常に似ている。
しかし双方が、自分の利益、権利が正当であり、
相手が主張する利益、権利が不当であるとするから、
こういう行為がなされるのであり、
お互いがお互いに同様の主張をするので、
どちらに是非があるのか、正しいのかが単純ではない。
これはよくある事で、問題は微妙だ。

 

これが国対国の問題になるともっと微妙になる。
「尖閣諸島」の一つの島に、
香港の運動家が漁船で乗りつけ上陸したとニュースで言っていた。
中国の国旗を島のどこかに立てて
「この島は中国の領土」だと主張したらしい。

 

「竹島」には韓国大統領自らが降り立ち、ここは韓国の領土と再宣言をした。
本当かどうか知らないが誰かの話で、
これが決着したら次は「対馬」の番だ、と言われていて、
物騒なことになっているなと思った。

 

尖閣諸島も竹島も”点”でしかないし、何かに使えるような大きな島でもない。
しかしこれがどちらの領土であるかで、
国境という”線”が大きく変わるし、
島を基点とした領海という”面”になると、
経済的な影響は計り知れない。
特に、日本近海に新エネルギー源として注目されているシェールガスが
大量に埋蔵されていると分かってから、
中国の尖閣諸島に対する主張が大きくなった。

 

これらは、まさに
「自分の利益、権利を一方的に主張して、人の利益、権利を奪おうとする。」
そのものであり、
お互いが、自国の領土あることに正当性を主張しているので、
お互いに相手を「自らのものを奪おうとしている犯罪的行為」と非難する。

 

日本は歴史的かつ国際法的に正当性があると主張しているので、
日本国民としてはその主張の正当性を信じたいが、
詳しく知っているわけではないので私には分からない。

 

しかし、人は昔から、
「他国の不法行為で自国の何かが侵されようとしている。」
という主張は、
自国の世論をまとめ、
国民を一致団結させる方法としてよく使われてきた。
ナチスドイツの「我々はユダヤ人に搾取されている。」と主張し、
ポーランド侵略、ユダヤ人大虐殺、第二次世界大戦に走った事は有名だが、
近代の戦争は、
「他国から自国の領土とか利益が不当に奪われている。」が、
共通した理由である。
多くは、その時代の政治家が
自分と自派への支持を得るための扇動に使われてきた手法だ。
今回の竹島への韓国大統領上陸は、
来年の韓国大統領選を見込んだパフォーマンスだとテレビでは言っていた。

 

しかし、戦争で犠牲になるのはすべて民衆であって、
いくら政治家が「わが国の敵」を強調したとしても、
我々はその扇動に乗って、
お互いに自らを戦場にひっぱり出すような愚を冒してはならない。

 

されど、
このままお互いが自国の正当性を主張し続けても
平和的な解決にはつながらず、
何らかの”力ずく”が幅を利かすのが現実的な状況、
強引に何か施設を作って既成事実作りが行われる。

 

それを防ぐには、
どこかで強力な抑止力を働かせることが必要なのかもしれない。

 

皮肉なことに、
第二次大戦以降、世界的な規模での大戦争が起きなかったのは、
絶望的な破壊力を持つ原子爆弾の存在が抑止力になっていたからある。
原爆で戦争を仕掛ければ
相手国を殲滅させることも容易になったが、
同時に核戦争の勃発は自国の滅亡にも直結する事実が、
世界レベルでの戦争が起きることを抑止してきた。
皮肉ではあるがこれば事実であり、
原爆が恐怖による戦争抑止力となっている。

 

竹島には韓国軍がヘリポートまで造って強引に既成事実を作ってしまったが、
中国が尖閣諸島に何かを造ってしまわない様にするための、
その抑止力になり得るのがオスプレイだという。
中国が尖閣諸島に何かを造るための気配があったら、
さっさと先回りして、島から本格的な上陸を抑止する。
今、墜落事故の危険性が大きいと問題になっている輸送機オスプレイだ。

 

これはヘリコプターとプロペラ飛行機の両方の能力を持つ。
どんな航空機のカテゴリーにも類さない世界中で唯一無二の機体で、
その能力は従来のヘリコプターの数倍以上もありつつ飛行場を必要としない。
特にこの場合、航続距離が重要で、
ヘリコプターならば航続距離が短いので
ヘリ空母で目的地近くまで海上輸送せねばならず、
尖閣諸島などが目的地の場合、
ヘリの積み下ろしの時間も含めて、
有効な戦力が到着するまでに”数日”かかるところだが、
オスプレイならば、
直接飛んで行って帰れるだけの航続距離を持っているので、
準備からたった”数時間”で、目的地に、有効な戦力を持ち込める。

 

 

もし、この尖閣諸島を力ずくで奪われれば、
その島の周囲に広大な中国の領海が出来て、
現在建造中の巨大な中国軍空母が艦載機を積んで、
常時、沖縄近海までやって来られるようになり、
日本にとっては、沖縄全体を人質に取られたような状況になってしまう。
喉元に刃を突きつけられたようなものだ。
そう考えると、その前段階の既成事実作りに対する抑止力は必要なのだろう。
そう何かの本に書いてあった。

 

しかし、沖縄では第二次大戦の終戦間近、
ひめゆり部隊の悲劇に代表されるような凄惨な体験があり、
ものすごい数の人々が戦争で殺された。
さらに、終戦後も、島の大半を米軍の基地に奪われてきた。
そんな沖縄の皆さんの心情は、
オスプレイ常駐によって
新たな危険が増すことに反発されるのは、当然であり、
これを無理強いできるものではないことは誰もが承知している事実だ。

 

オスプレイは、ヘリコプターと翼を持った飛行機の両方を兼ね備えた機体で、
パイロットはその両方の操縦技術を持つ必要があるだけでなく、
その両方への転換時の技術は前例がなく、
安全な操縦技術が確立されているとは言いがたい。
一言で言えばオスプレイの操縦技術は、
飛行機よりも、ヘリコプターよりも、高度であり難しい。
住宅地に隣接された基地での運用は、
それだけ危険性も相対的に大きいと言わざるを得ないだろう。

 

尖閣諸島は、中国も欲しい。日本も当然ながら欲しい。
双方とも戦争はしたくない。
でも尖閣列島を中国に取られたら
経済的損失だけでなく、沖縄が危ない。

 

そんな最悪のシナリオの前段階として変な既成事実を造られないために
抑止力としてのオスプレイは有効なのだろう。
でも、最新の兵器だけあって操縦が難しく、
基地周辺の人々の危険は増す。
悲惨な経験を持っている沖縄の人々に無理強いは出来ない。

 

あちらを取れば、これらが立たず。
出口の見えないこの問題で、
解決方法があるとするならば、
「自分の利益、権利を一方的に主張して、人の利益、権利を奪おうとする。」を、
双方が自らの愚として認めて、双方が放棄するか、
譲り合って妥協するか、だが、
それは両方とも有りようがないことを、
双方ともが分かっているところに、この問題の難しさがある。

 

あくまでも、あくまでも、
個人の狭い視界の中で考えた、一面的な考えです。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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