谷 好通コラム

2012年07月07日(土曜日)

七夕の日・中三少年の恋、瞬間的 さよなら

中学校三年生の時、一人の女の子を好きになった。
同じクラスの子。
すごく色白で、瞳が透き通っていて、
髪もまっ黒ではなく、ちょっと茶色がかっていてきれいだった。
ほっぺたのうぶ毛が、陽を透かして金色に光って見え、
中学三年の谷好通少年には、
その子がまるで妖精のように見えたのだった。
好きだったが、好きだと言うわけでもなく、ラブレターを出すわけでもなく、
なにげなくたまにチラっと見ればそれだけで十分だった。

 

話をすることはまったくなかったが、
ある日、昼食後、午後からの授業までの放課の時間、
その子と一緒にいた友達が私に何かを話しかけてきて、
たまたまその子とも話す機会があった。

 

何気ない会話であったが、
軽口で「君は髪が茶色いから、昆布をたくさん食べると黒くなるよ。」と、
何の意味もなく、冗談半分で、
バカな少年谷好通が言ったら、
その子の表情が暗くなって、何も言わず走っていってしまった。
バカな少年はポカンとしてしまったが
「悪いこと言ってしまった」ことには気がついた。

 

その後、その子と二度と話をする事はなく、
ほのかな中三少年の恋は、たったそれだけで終わってしまった。

 

 

たぶん、その子は自分の髪が茶色いことを気にしていたのだろう。
それを「昆布を食べたら黒くなる」と、
否定的に言われたので、
傷ついたのだろうと今は思う。
私はその茶色の髪が大好きだったのに、何であんなことを言ったのか。

 

ひょっとして
同窓会か何かでもう一度あの子と会うことがあったら、
「ごめんなさい」と一言だけ謝りたいと思うが、
たぶん、あの子は憶えていないだろう。

 

人の気持ちを思いやって話をする事は難しい。
何十年かけて、何百人、何千人の人と話をしてきたが、
自分の気がつかないまま、
いったいどれだけの相手を、どれほど傷つけてきたかと思うと
ぞっとするほど怖くなる。

 

人間は生きているだけで罪な存在だという言葉がある。
本当にそうなのかもしれない。そういう面もある。
だけど、それを恐れていたら、
この世に生を与えられた人間として何も出来ない。
早々に隠遁の生活を送るしかなくなってしまう。
人生を賭して成すべきことを成していこうとするならば、
自分の都合や勝手にとらわれず、
相手のことを思いやって、話すべきを、話していくしかないのだろう。

 

七夕の日、思い出してため息が出る。

ページのトップへ ページのトップへ

  • 最近の記事

  • プロフィール

    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

  • カレンダー

    2024年4月
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    282930  
  • リンク集

  • 過去の記事

  • RSS1.0

    [Login]

    (C) KeePer Giken. All rights reserved.