谷 好通コラム

2011年03月30日(水曜日)

2752.ジタバタすることはない

前から知っていたことと、新たに知ったことを加えて、
ど素人の知恵で考えたことです。

 

 

今回の原発事故がここまで深刻になっているのは、
「冷却材損失事故」だからなのだそうだ。
これは世界で初めて起きた事象であり、
原子炉事故の最も避けるべき悪い状態の一つだそうだ。

 

今は、やがては必ず冷えていく崩壊熱との戦いの状態だ。
技術者たちの決死の努力が実って、
時間がかかったとしても、
冷却に成功すれば、あとはそれを封じ込めるだけ。
これで事故そのものは一件落着で、
あとは、
どれくらいの範囲がどの程度汚染され、
実際にその汚染で何が、風評被害を含めて、どう被害をこうむるか、
補償をどうするか、立ち入り禁止区域になるのはどれくらいの範囲になるかが問題。
環境汚染は深刻な問題になるだろうが、
国全体の破滅的な事態にはならない。
破滅的な事態に陥る危険は、事故の初期の段階に終わっている。

 

運悪く、今後続けられる冷却との戦いに負けると、
限度以上の温度になって炉心がまた溶けて、
そのまた運悪く、
それが大規模、あるいは全面的な炉心溶融に進めば、溶けた核燃料が圧力炉内に落ち、
またまた運が悪く、
底にある水と触れた時に水蒸気爆発が起きれば、
放射性物質のカタマリである燃料がかなり拡散することもあるかもしれない。
それがなければ、溶けた核燃料が圧力炉を溶かし格納容器の底に落ち、
運が悪ければ、
格納容器の底にある水で水蒸気爆発が起きるかもしれないが、
それも無ければ、格納路を溶かして地上のコンクリートに落ちてくる。
溶けた核燃料がコンクリートと化学反応を起こして、
大量の放射性物質が拡散する可能性がある。
あるいは、
最も運が悪ければ、
溶融した核燃料が圧力炉の底で、たまたま悪い形に溜まると、
最悪、再臨界がはじまって、爆発する可能性も0%ではないらしい。
専門家の人たちが言うには、そうだった。
しかし、最悪×最悪×最悪×最悪×最悪の非常に低い確率でも、
到死量の放射線物質が”不意に”かつ急激に何キロもの範囲で広がることはない。
ましてや何十キロ、何百キロもの範囲で、不意に、広がることは絶対にない。

 

それでも、
事故そのものはこれで一応終息で、
あとはどれくらいの範囲が汚染され、
実際にその汚染で何が、風評被害を含めて、どう被害をこうむるか、
補償をどうするか、どれだけの範囲が立ち入り禁止区域になるかが問題になってくる。
環境問題は深刻ではあるが、
極端に乱暴に言えば、
最良のケースでも、最悪のケースでも、
放射能汚染のスピードの差と、範囲の違いの差の問題らしい。

 

 

史上最悪と言われているチェルノブイリ原発事故が、
多くの人の命を奪ったのは、
最悪のケースになってしまうまでの時間が極端に短く、
かつ、事故そのものを当時のソ連政府が隠そうとして、
最悪のことに、事故の当初、周辺住民にも知らせず、
爆発後もその危険性を知らせもせずに放っておいた極悪のケースだったからだ。
愚か者による人災とも言えるそんな最悪がいくつも重なって、
非常に狭い範囲の中で、
短い期間で3000人が亡くなったと言う報告もある。
もっと最悪なことに、
事故後の原子炉を石棺で固める工事につかせた何十万人もの労働者に
放射能の危険を知らせることもせず、
無防備で本人が知らぬ間に、最悪の桁外れの被曝をさせてしまった。
それで二十年(?)後の調査では、
その工事に携わった労働者約85万人のうち約5万人が何らかの病気になっていた。
(放射線の被曝が原因とは限らず)
そして、この事故が終息してから
永住禁止区域に設定されたのは半径30kmの範囲の人々であった。

 

今の福島原発の事故は
チェルノブイリの事故のケースとは全く違う。

 

福島原発では、事故当初あった短時間での最悪の事態はとりあえず回避した。
チェルノブイリ的な事故は回避された。
ここからまた最悪の事態にまで進む可能性は極めて低いと言う。
そして、この事故のことを
日本国中のすべての人が知っている所が、チェルノブイリのそれとは全く違う。
きわめて低い確率の最悪の事態になったとしても
その前にすでに危険地域の人は避難している。
だから、チェルノブイリのように
事故で直接3,000人の人が亡くなることは絶対無い。
すでに十分な範囲からの避難は済んでいるのだから。

 

放射能汚染は、いずれにしても今よりは拡大するし、
このままの濃度と範囲でとどまらないかもしれない。
それは環境汚染の観点からは史上最悪のケースになるかもしれないが、
人間の生命の部分においては、とりあえずジタバタすることはない。

 

このままの状態で現場が終息すれば、
ほぼこのままだし、
最悪×最悪×最悪×最悪×最悪の非常に低い確率でも、
到死量の放射線物質が不意にかつ急激に何キロもの範囲で広がることはないし、
数十キロの範囲で、将来、癌になる確率が数%増えるか。
ましてや220km以上も離れている東京では、
かなりの時間の後、
運悪く風向きが悪い場合には、
低い確率で将来の健康に影響が出るかもしれない程度の汚染があるかもしれないが、
先を急いで逃げ出さなければならないような危険は何もない。

 

みんなが知っているということは強い。
みんなが知っていると、チェルノブイリのように
隠そうとする愚者による人災としての被曝、被害者の激増はありえないから。

 

何が言いたいのかというと、万が一でも、
少なくとも今後は、
関東、東京を大急ぎで逃げ出さなければならない事態はないということ。
これからも、ずっとない。
最も恐ろしい人災は、
自らの恐怖心、あるいは悪意によるデマだろう。

 

それよりも、
今は、苛酷な環境の中で、
極限状態でがんばってくれている原発事故の現場の技術者、
作業者のみなさんをしっかりと応援すべきであり、
それに、もっと過酷な災害にあっている東北の被災者を
全力で応援しなくてはいけない。

 

せっかく事故現場で、過酷な環境の中、
事故の終息のために冷却との戦いを必死に働いている技術者、作業者のみなさんの
努力の甲斐があって、
長い時間の末、なんとか終息にこぎつけられたとしても、
我々市民が無駄な恐怖心からのパニックを起こしたり、
無理解な風評被害を拡大したのでは、彼らの努力が無駄になってしまう。
我々市民のために決死の努力をしていらっしゃる人たちの
せっかくの成果を無駄にしてしまうかもしれない。
また、不便な避難先で、
安全ではあるが、原発の近くの地で
必死に恐怖と戦っている人たちのご苦労を無駄にしてしまう。

 

原発はプロの人達の決死の努力に任せて、信じ、
私たちはやれることをやり、いつもの仕事を、一生懸命にやり続けることだろう。

 

 

今、新幹線に乗って東京に向かっている。
東京から福島県の川俣町に車で行く。
原発から40km~50kmくらい離れた山の上の町だ。

 

幸運なことに新幹線の中から
私の幸運の女神、富士山のてっぺんがうっすらとではあるが、見えた。
はっきりとこの目で見た。

 

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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