谷 好通コラム

2010年10月29日(金曜日)

2643.視界が広がると幸せな気持ちになる

 

帯広での午前中、飛行機が飛ぶまでに少し余分な時間があった。
それで、帯広空港は市内の南にあるところを1時間分だけ北に車を走らせ、
北海道の自然を少しだけ感じることにした。
インターネットで適当な所を探してNAVIに入れ、
ひたすら北へ、北へ、
といってもたった1時間、
復路の1時間、プラス空港までの1時間、計3時間だけではあるが。

 

帯広市街を抜けけると遠くに雪を被った山を見ながら、
左右は見渡す限り広大かつ、うねった畑が続く。
国道を外れたのが良かった。
NAVIを「推奨ルート」で選択すると国道を示し、信号も多く、ダンプがたくさん走り、
両側に家や店が点在するので、ちっとも視界が広がらないが、
「その他のルート」を選択したら、
自分の前後にまったく車がいない、
ひたすらまっすぐ伸びる立派な農道を誘導してくれた。
だから、見渡す限り広大な畑の真ん中を走ることが出来た。

 

人間は、視界が広がると幸せな気分になれるようだ。
自分の視界を遮るものがなく、ずっと向こうのほうまで見えて、
自分を圧迫するもの、自分を抑制するものから解放されたような気分になるのか。
気持ちが透き通っていくような爽やかさがある。
こんなところに住んだら幸せだなぁ、と思う。

 

人は都会に集中している。
とりわけ関東、東京に集中が止まらない。
田舎にはなかなか仕事がないから仕方がないと言えばその通りだが、
人が集まってくるから、仕事があるのであって、
仕事があるから人が集まるだけでなく、
人が集まっているから、人が集まってくる面もあるのではないだろうか。

 

小さい時、子供だった私は押入れの中にもぐりこんだり、
隠れ家のような狭い所を好んで遊んだ。
もちろん広々とした所を入り回ったりもしたが、
狭い所にもぐりこむのは好きだった。
子宮の中で狭く守られていた頃の胎内体験が脳内にしまわれているのかもしれない。

 

街は周りに人間がいっぱいいて、
何を買いに行っても自分をお客様として扱ってくれて、
仕事ではその逆で、他の人のことをいつも考えるように仕向けられている。
そういう濃密な人間社会で、人間は自らの存在を見つけやすい。

 

数えきれないほどの多くの人間から成っている都会では、
人は受動的であっても社会生活に参加できる。
膨大な情報があらゆる媒体を通して自分に向けて発せられ、
否が応でも社会の動きの中にひきずり込まれ、購買し、働く。
ある意味では、大きな社会の中で守られて受動的に生かされていると言える。

 

囲まれ守られている安心感が、都会にはあるのではないか。
原体験として子宮に中にいた時のように。

 

 

田舎は逆だ。
社会としてのご近所とのお付き合いや、助け合いは
お互いにその地で生活していくには必須のことであり、
自らが積極的に動いて、社会に参加していかなくてはならない。
受動的にだけ生きていくことは出来ないのだ。
人間と人間の関係、コミュニケーションが濃密で、人間らしい生活である。

 

対して都会では、
ご近所のお付き合いも助け合いもまったく要らない。
主体的に社会に参加していく必要もない。
ありとあらゆるものが自分に購買を働きかけてくるので、
受動的でいるだけでも、十分に生活することが出来て、
だから自分が働く場所にも絶対に困らない。
これを文化的な生活であり、便利な生活であるとも言う。

 

しかしその受動性が時には抑圧感と成り、圧迫感と成る。
だから、たまに視界をさえぎるものもない広大に風景に出会うと、
言いようのないような開放感から幸せな気分になるのかもしれない。

 

大自然は素晴らしく感動的である。
しかし大自然は自分を守ってはくれず、むしろ攻撃してくる。
その中で、人間同士が助け合って生きていくのが人間らしい生活だとすれば、
文化的かつ便利な生活とは対極になってしまうのかもしれない。
しかし、自らの主体性が必要とされるし、
だいいち大自然が周りにいつもあるので、開放感はあるだろう。

 

十勝の大自然の中で、
視界をさえぎられない広大な風景の中に立ち、
人間同士が助け合っていく生活か、
文化的かつ便利な生活か、
どちらが人間として幸せなのだろうか。

 

ほんの二三時間の遠回りで、色々なことを考えさせられた。

 

 

しかしそれにしても、昨日、カメラを坂本所長の車に忘れたので、
せっかくの広大に風景を写真に撮れない。
なさけない。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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