谷 好通コラム

2010年08月30日(月曜日)

2598.出来すぎの4→5→4→3→2

昨日は、ゴルフGTIカップレースの第3戦、富士スピードウェー戦。
決勝レースのコースインは午後1時だったので、
朝はゆっくりホテルを出て、ピットでの準備も余裕たっぷり。
今回のカップレース3戦は、富士スピードウェーの
「ワンメイクレース(同じ種類の車でのレース)フェア」の中の一つとして開催された。

 

たくさんの種類のワンメイクレースが組み込まれていて、
百台近い参加がある「Vitz(ビッツ)」、
懐かしい「レビンAE111」、フォーミュラの「FJ、スーパーFJ」、
大迫力の「ポルシェカップ」、
ちょっと地味だけどレベルは結構高い「ゴルフGTIカップ」、
かっこいい「ロータスエリーゼ」、リッチな「フェラーリ」
なんと7種類ものワンメイクレースは、
富士スピードウェーならではのお祭りである。

 

これだけたくさんのレースがあると、
スケジュールもびっしりで、「フリー走行練習」と「予選」「決勝」と三日がかりになる。
しかし参加するほうは待ち時間が多くて、緊張感がでない。
三日目は決勝レースだけで一番大事な日のだが、
やることが少なくて、朝からいまいちテンションが上がって来ない。

 

前日の予選はタイムアタックを失敗したので、
決勝レースはゴルフ5クラス6台中4番目のスタートである。
この富士では真剣にトップを狙っていく決心を胸に秘めていたので、
正直言って、予選失敗で意気消沈していた。
しかし決勝の時間が迫るにつれて、自然テンションが上がってくる。
「絶対、抜くぞっ」と口の中でモゾモゾつぶやき、
戦闘モードに徐々に入ってく。

 

予選失敗は失敗として事実なのだから、決勝に気持ちを引きずってはいけない。

 

6台中4位とは、前にライバルが3台いて
3台も抜かなければ優勝できない位置でありとても無理だ、上位も難しい。
しかも後ろには2台のライバルがいるということで、
たった2台に抜かれればドベになってしまう。

 

しかし逆に、考え方によっては、
前に3台いるのは、抜ける車が前に3台もいることなので、
これは面白いということにもなる。
しかし、考え方をポジティブに持つことはいいことだが、
どちらにしても、速くなければ話にならない。

 

何はともあれ、決勝レース。
スタートはいつも通りのローリングスタート。
隊列を組んで一周、スタートラインに近づいて先導車がコースから外れ、
ゲート上のランプが赤から青に変わるとスタートだ。

 

スタート時のタイヤは、予選で使ったタイヤを前後4本とも履いているが、
予選でなかなかタイムが出ないので、つい余分に走ってしまい、かなり減っている。
しかし、
とにかくスタートでは、フライングぎりぎりでダッシュして
1台でも多く抜くつもりで、気持ちは野獣のごとく高まっている。

 

スタートダッシュした直後100km以上のスピードでアクセル全開でフル加速。
しかもそれぞれの車の車間は1mもないところもある。
加速後150km以上になって
第1コーナーになだれ込むのはけっこう怖いはずだが、
必死になって前に出ようとしているので、まったく怖くない瞬間だ。
(私の車は後ろから三番目にいる)

 

 

しかし、私はこの直後、後ろにいた1台に抜かれてしまった。
正確には第1コーナーを並んで入って、3コーナーでインを取られて抜かれた。
この時、私はカーッと頭に血が昇った。
「最悪のパターンだ、くっそー、」
このまま5位に下がって、あと10周もぐるぐる回るのか。
絶対にイヤだ。
3コーナーに続く100Rでは、
コーナーの終盤に少しアクセルを戻さなければいけないのだが、
くっそーっと、アクセルを力いっぱい踏み続けた。
後輪が外に滑り出すが前の車を抜けないなら、このままスピンしてもいいと思った。
オーバースピードのまま車が横滑りしながらも100Rを回りきり、
次のヘアピンでも、かなり深い所でブレーキを踏んで、
強引にハンドルを切ったら、後輪がズルッと滑って車の頭がヘアピンの出口を向いた。
と同時にアクセルをがばっと踏むと、気持ちいいように加速する。
あっという間に前の車に密着した。

 

それからバックストレートを抜けシケインと細かいカーブを抜ける。
苦手にしていた最終コーナーは、
今までよりもかなり奥まで突っ込んで、
ブレーキを強く踏みつけハンドルをガバっと切ると、
後輪が外に滑って、頭がコーナー出口を向く。
それはヘアピンと同じような感覚であった。
コーナー出口に向かってアクセルを前回に踏み込むと、
ドンとストレートに向かって加速する。

 

すると、
ストレートで加速すると普通は離れていくはずの前のゴルフ5の背中が、
逆にググッと迫って、ストレート1/5手前までに
あっという間にスリップストリームには入れてしまった。
スリップストリームに入ると吸い込まれるように加速し、
かなりのスピード差で、前の車を抜くことが出来た。
ストレートでのスピードがまるで違うのだ。

 

たぶん、最終コーナーでの旋回が上手く行き出口からの加速がスムーズだったので
ストレートのスピードが今までになく乗ったのだろう。

 

東京の賀来部長が「富士は最終コーナーで2秒は変わります。」と言っていた。
これがまさにそうだった。
初めてストレートでのスピード差で車を抜いた。
これで予選の順位4位に復活だ。

 

それから、最終コーナー手前で突っ込んで、
ドンとブレーキを踏んで、ガバっとハンドルを切り、
車の向きをよいしょっと変えてしまって、出口に向かってズバッと加速する。
これでストレートの伸びがまったく違う。

 

この手で、次の周には前を行くもう1台を抜き、3位に浮上。
5周あとには、前を行く車をもう1台抜いて、なんと2位に出る。
前を行くのはトップの車だけ。
9ラップ目には調子の上がらないゴルフ6を一台抜いた。
(ゴルフ5クラスでの順位は変わらない)

 

トップを行く車から最初は10mくらい離れていたが、
最周回にはとうとう追いついて、ヘアピンで一度は前に出た。
しかし、バックストレートに入るまでに幅を寄せられ、いったん後退。

 

最後の最終コーナーで勝負を掛けたが、
スリップストリームには入れきれず、抜けなかった。

 

しかし、2位である。
私にとって単独戦で、晴れの日に2位は初めての経験だ。
だから、これは私にとっては「勝った」ことになる。それでいいのだ。

 

スタート直後は1台に抜かれて5位に落ち、そこで血が上って、
スムーズなグリップ走法から、
ブレーキをきっかけに非常に車の姿勢を不安定にして、
車の向きをズルッと出口に向けて一挙に加速する走り方に変わったら、
苦手であった最終コーナーが異常に上手く抜けられるようになって、
ストレートでのスピードが10kmは上がったような気がする。
4位⇒5位⇒4位⇒3位⇒2位
1回抜かれて、3台を抜き、ついでに順位に関係ない車をもう1台抜いた。
1レースで4回も追い抜いたのは初めてである。

 

私にとっては上出来の2位になれたのは、
車の後輪をすべらせて車の向きを変え、
出口からの脱出スピードとストレートが速くなったからである。

 

 

(写真の私の後ろの三台は全部私が抜いた車)

 

 

というわけで、私にとって、
とっても幸せなレースであったのです。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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