谷 好通コラム

2010年08月13日(金曜日)

2582.キーパーエピソード(6)何でも自分たちで作る

キーパーを全国に広める活動を続けながら、
洗車とコーティングに関わるあらゆる物をオリジナルで作ることもやってきた。

 

作ること自体に執着を持ってきたわけではなく、
仕入れた物で満足できる物があれば、それを使うことに何の抵抗もないが、
実際に自分たちで直接使ううちに、
「もっとこんなものがあればいいのに・・」と思い始めると
色々と工夫をして結局、オリジナルで作ってしまってきたというのが正解だ。

 

タオさんが作る「快洗Taoる」

 

たとえば「タオル」。
主に洗車をしたあとの拭き上げに使うものだが、
ほとんどの市販タオルは、人が手や顔や体を拭いたりするものである。
しかし自動車は人間に比べて桁違いに大きい。
ならば大きなバスタオルを使えば解決しそうだが、
バスタオルでは車の細かいところまでをきちんと拭き上げるのには適していない。

 

手で扱いやすい大きさで、
細かいところまできちんと拭けて、
さっと一発で水を吸い取ってくれるような、
自動車の洗車専用のタオルがあれば、
作業効率が上がって、洗車の品質も高められるのにと思った。
思ったら、どうしても欲しくなる。

 

そこで知り合いから紹介してもらった中国・上海のタオル工場に行き、
社長の陶(タオ)さんに、私たちが欲しいタオルの要望を詳しく説明した。
そこからすぐ試作が始まって、
約1年間、何十種類もの試作品が作られ、
実際の店舗で、使い勝手、耐久性、安全性などが試され、
工場とのやり取りが繰り返されて上海の工場へ何度も足を運んだ。
それで出来上がったのが
今の大きさで、綿をたっぷり使い、
しかもずば抜けた「吸水力」を実現した「快洗Taoる」という商品だ。
独自の製法を編み出して作り上げたもので、
その製法は秘密である。

 

公的な品質検査機関で試験をしてみたら、
「こんなにすごい吸水力は初めて見た」と驚かれた。

 

タオルの簡単な吸水力テスト。
水を入れたタライに、
試験するタオルを一定の大きさになるように折りたたんで、
水の上にそっと浮かべる。
するとタオルは水の上に表面張力で浮くが、
普通のタオルは、吸水力が弱く水をはじくのでいつまでも浮いていて、
タオルに水がしみこんで沈むまでに数分かかる。
ところが「快洗Taoる」は、水をまったくはじかずあっという間に沈んでしまうのだ。
その間、数秒である。

 

この快洗Taoるで洗車の拭き上げ作業をすると、
使いたてから吸水力全開で、拭き上げ作業のスピードが増すだけでなく、
何度も同じところを擦らないので、ボディに傷もつきにくい。
今では全国のガソリンスタンドを中心に
年間270万枚が使われている影のベストセラーである。

 

 

ちなみに「快洗Taoる」とは、
このタオルの開発から製造まで携わってくれた
上海のタオル工場社長の陶(Tao)さんに敬意を表して、
「快洗Taoる」と命名したものだ。
陶さんはこれをすごく喜んでくれると思ったのだが、
もともと無表情なほうであった彼は、
はにかんだようにちょっとニヤッとしただけであった。

 

[しつこい水垢も、撫でるだけで落ちる爆白]

 

ゴシゴシ擦って落とさなければならない「しつこい水垢」を、
塗って少しおいて、すっと撫でるだけで落とすことを可能にしたのが「爆白」。
しかも完璧に塗装を傷めることがない。

 

水垢とは、WAXなどの皮膜全体に油性の汚れがしみこんだものなので、
汚れた皮膜全体を落とさねばいけない面倒な汚れだ。
昔からこれを落とすには二つの方法があった。
1.塗装をゴリゴリ削るようなコンパウンドを使って削り取る方法。
2.アルカリ性の高い強力な洗剤で浮かし取る方法。

 

1の方法は、昔からあるホワイトワックスの類がそれで、
ワックスの中にコンパウンドを大量に入れてある。
これで擦ると水垢が取れることは取れるのだが、
塗装も一緒に擦ることになって、塗装表面が徐々に凸凹になりツヤがなくなっていく。
2.の方法は、洗車機などが良く使っていた方法だが、
アルカリ性の強い洗剤は、水垢を取ることは出来ても塗装そのものから、
油脂分を抜いて行く作用があるので、塗装表面の密度が失われ、
塗装のツヤがなくなっていく弊害があった。

 

そのいずれもが、塗装の劣化を誘引する弊害がある割には、
水垢落としの効果はそれほど高くなく、結局ゴシゴシと腕力で擦ることになり、
その摩擦も塗装を劣化させる要因になっていた。

 

市販の製品はいずれの商品も、
塗装をいためない程度にこの二つの手段を恐る恐る使っているので、
概して簡単には水垢が落ちない。

 

爆白は、このジレンマを発想の転換で完全に解決した。
「アルカリを使うと脱脂作用で塗装が傷む。アルカリ度が高ければ高いほど傷む」
これが常識であって、「なぜ?」と考えることなく、
「アルカリを使うと・・・」の中で考えていたのでは、
アルカリ度を出来るだけ低くして、
洗浄力とのバランスを取っているだけであった
「アルカリの、何が、どうして、何を、どうするから、いつ脱脂作用が起きるのか」
そんなことを研究員と雑談で話しているうちに、ふと気がついたことがあった。
何を気がついたのかは、企業秘密だが、
根本的なところで解決方法を思いついたのは、
たぶん、その時、二人で酒を飲んでいたからではないだろうか思う。

 

不謹慎な話だが、
すっきりした頭で考えると正常なルートでしか思考が進まないが、
酒でも飲みながら、馬鹿話を交えながらいい加減に話をしていると、
正常なルートから外れて、今までとは違う方向に思考が進んで、
突拍子もない発想に行き着き、行き詰っていたことが不意に解決できることがある。

 

この方法は、特許に登録されている。

 

 

酒を飲みながら思いついた「爆白」。
しかし、いい加減な商品ではない。
本当にすごい商品なのだ。

 

しかし「爆白」という名前は、ちょっとおふざけすぎたか、
海外に持っていく時、手荷物チェックで必ずひっかかる。
いくらすごい性能でも「爆白」はまずかったかな。

[快洗Wingも酒が作った製品?]

 

全国でキーパーの活動を展開しながら思ったことがあった。
その頃、活動の中心はガソリンスタンドであったが、
ガソリンスタンドでの洗車は門型洗車機での機械洗車がほとんどであった。
キーパーコーティングのユーザーは、
もちろん洗車機洗車のユーザーの中にもいたが、
車を大切にするユーザーは手洗い洗車を好む人が多く、
上質なキレイさを提供するキーパーコーティングは、
手洗い洗車を好むユーザーにより喜ばれると思ったのだ。
しかし、スタンドでの手洗い洗車といえば、
ホースとスポンジで洗う一般の人が洗う洗車と同じような洗車しかなかった。

 

プロのコーティングを、素人と同じ洗車をしてからではおかしいと思い、
早速手洗い洗車を、プロが行うための機械を作り出した。
試行錯誤して箱型のコンパクトな多機能機で
最初の機械を「快洗Jr.」と呼んだ。
これは全国のガソリンスタンドで数千台使っていただくヒット商品になった。
それからのち「快洗Jr.Ⅱ」「快洗Jr.200」など発展形を出し、
いつの間にか、私たちの会社は機械メーカーにもなってしまっていたのだ。

 

そのうち、箱型の小型機種だけではなく、
大型で、手洗い洗車をもっともっと早く、高い品質で作業できる機種を考え付いた。
またもや誰かと酒を飲みながら話をしていた時に思いついたのが、
片側三本柱で、片持ちアーチの「快洗Wing」
狭いスペースで使えるように、柱を片側に寄せて作ってしまうのは、
常識的に考えれば、無理なことであったが、
それに付き合ってくれて開発をしてくれた田村さんたちのおかげである。
(意匠登録済み)

 

 

今でも田村さんとはお酒を一緒に飲む仲であるが、
田村さんたちがあれだけ苦労した機械の形が、
酒を飲んで思いついた物であるとはまだ言っていない。
田村さんの絶句する顔が思い浮かぶから。

 

私たちは、実際に洗車とコーティングを主にした店舗「快洗隊」を運営している。
私たちが開発したケミカルや機械、道具など
私たちが全国のガソリンスタンドに提供している商品を、
実際に使って、私たちのスタッフが作業している店舗を22店舗、
FC店さんも入れて34店舗運営している。
実際に使う側でありつつ、ケミカル・機械・道具を開発し、作っているので、
現場で何が、どのように必要なのかよく分かる。
分かるから、汎用で売られているものではどうしても何かが足りない。

 

自分たちでやっているから、分かるから、
どうしても自分たちで何でも作ってしまいたくなる。
そんなことを続けていたら、何種類もの特許と実用新案、意匠登録などがたまり、
独自性の固まりのような商品がいっぱい出来てしまった。

 

それとあえて言えば、思い付きの宝庫「酒のせい」でもある。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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