谷 好通コラム

2010年04月18日(日曜日)

2477.コーティングとユーザーメリット・その1

話は、コーティングの起源にさかのぼる。

 

20年ほど前から始まった車のコーティングは、
元々、町の磨き屋さんが「マニアックな人」のために施工する商品で、
施工の主体はコーティングというよりも「磨き」であった。

 

17年前にこのビジネスに関わった私自身もそうであった。
朝から晩までひたすら磨いていたように憶えている。

 

車をコンパウンドとポリッシャー+バフで磨いて、
とことんキズを消して、
塗装の凹凸まで平らにして、
つまりテカテカの鏡のような状態にし、
新車よりもツヤを出すことを売りにして、
5万円から10万円以上の高い値段で施工していた。
あくまでも磨きが主体で、その上に塗るコーティングは副次的なものであった。

 

それを、カーディーラーさんが新車販売時に、
「一般の人」にも販売するようになった。
もちろんお客様のためになると思ってのことだ。
新車を買う時は百万円以上、
車によっては数百万円の買い物になるわけであり、
「一般の人」でも5~10万円のプラスアルファの買い物には抵抗が少ない。
コーティングは「一般の人」にも広まって、
町を走っている車の50%近くまでがコーティング既施工車になった。

 

5~10万円もの値段で販売されていたのは、
もともと「磨き」が重労働であったためだ。
昔の磨きは、今のように多機能なポリッシャーとか、
低反発バフも無く、また素晴らしく切れのいいコンパウンドや、
自己粉砕型という一回の作業で済むような便利なコンパウンドも無かった。
粗目、(中目)、細目、極細目と段階を踏んで磨き、1台磨くのに5時間以上、
下手すると10時間以上もかかった重い労働であったのだ。
だから、それくらい貰わなくては採算が合わない。
塗装保護の能力がそれほど無いコーティングでも、
「メンテナンスをきちんとやればツヤが5年年持ちます」という注釈を付けて、
「NO WAXコーティング」として高価格で販売され続けた。

 

「一般の人」には「NO WAX」とあれば
ワックスをかけなくていいのだから
「楽が出来て、塗装が守られる。これはいい。」と思ったのは当然であろう。

 

しかし残念ながら「一般の人」が期待するような
「ラクして5年塗装を守る」という能力はなかった。
NO WAXと言いながらWAXがけ同様のメンテナンスが必要で、
それもメンテナンスキットを使って自分でやらなければならない場合が多い。
コーティング被膜そのものが長期間塗装を守ってくれるわけではなく、
メンテナンスというWAXがけのような作業で塗装のツヤを守っているわけだから、
一般の人が期待した「ラクして5年塗装を守る」は難しかった。

 

 

もちろんそれは一般的な話であって、
すべてのコーティングがそうであったわけではないし、
だれもが「ラクして5年塗装を守る」を期待したわけではないかもしれないので、
決め付けてはいけないが、
昔からのコーティングとはマニアックな人が好む「磨き」が主体であって、
一般の人が期待する「ラクして、塗装を守り、車の価値を守る」ものではなかった。

 

そこに大きな意識の食い違いが発生して、
一般の人の実に70%近くまでの人が、
「コーティング」という商品に「不満と不信」を持ってしまった。
(ユーザーアンケートより)

 

その食い違いを埋めようと
本当に被膜が5年の耐久力を持つ「ボディガラスコーティング」が登場したが、
ガラス特有の宿命、ミネラル分が固着する「水シミ」の問題でクレームが多かった。

 

そんな事情の中で、
5年耐久コーティングは、行き止まり状態に陥り、
保証期間の5年が過ぎてもコーティングを再施工する人は少なく、
新車時での施工も減りつつあった。

 

一昨年の6月に日本国中の46.7%もあったコーティング既施工車が、
昨年の9月の調査では38.9%に急減してしまったのは、
新車の販売台数が減ったのも一つの要因ではあろうが、
やはりこの類の商品そのものにも問題があったと考えるべきだろう。

 

 

この続きはまた明日。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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