谷 好通コラム

2009年05月18日(月曜日)

2209.野獣を野に放つようなものか

新型インフルエンザが大阪・神戸で拡がりはじめた。
一昨日は数人だったのが、次日にはあっという間に百人に近くなり、
今日はまだニュースを見ていないがすでに百人は超しているのだろう。
すさまじいばかりの感染力である。

 

発生国のメキシコでは感染確認患者が二千数百人で止まっているが、
ひょっとしたら確認をやめているだけではないか、
数日前のニュースでは3万数千人の感染者数と数字が出たのに、
確認された数としてまた二千数百に戻っているのは、
何か意図があるのではと勘ぐってしまう。

 

日本での感染者は高校生に集中していて、
最初の感染者が高校生たちであったのに関係しているのだろうけども、
感染の拡がりが急なのは、彼らの活発な行動から寄るものであることも想像できる。
大阪、兵庫では中学校と高校が一週間の休校に入ったらしいが、
大多数の高校生、中学生が嫌いな学校が休みになって、
彼らがじっと家にいるだろうか。
遊び盛りの彼ら、彼女らが家にじっといていることなんて想像できない。
彼らにとって休校はあくまでもラッキーであり、
みんなで外に遊び回りに出ることの方が私には容易に想像できる。

 

今日の朝会で、高校生を子供に持っている社員に聞いてみた。
「君たちの子供は、学校が休みになったら家にじっとしているかい?」
酒部部長が言う。
「カラオケにでも行くんじゃないですか」
カラオケ?
最近の子達が、
カラオケでマイクに唇をくっつけて歌うことを思い出した。
ありゃ、インフルエンザのウィルスを舐め着けているようなものだ。
いっぺんに感染が拡がる。

 

彼らの学校を休校にするなんて、
野獣を野に放つ行為に等しい。
なんて言ったら、世の中の高校生から嫌われてしまうだろうか。

 

いずれにしても全国的な感染に拡がるのを防ぐ事は困難になってきたのではないか。
防御策を自らが取る事が肝心なのかもしれない。

 

新型(豚)インフルエンザは弱毒性であって0.2%程度の到死率と言うが、
それでも十分に怖い。
しかしもっと問題なのは、今回の新型インフルエンザは、
「人インフルエンザ」と「豚インフルエンザ」「鳥インフルエンザ」の
すべての因子が混ざっているウィルスで、
数十パーセントの到死率である非常に強い毒性を持った鳥インフルエンザとは、
DNAの中の数億(数十億?)もの塩基配列のうち、
毒性についてはわずか四箇所の塩基配列が違うだけの、
鳥インフルエンザに極めて近いウィルスである事だ。

 

犬で言えば、黒い犬と白い犬の違いほどもない。
そのウィルスが一日に何百回(何千回?)も世代更新し、増殖していくのである。
いつ強毒性に変異するか解らない。時間の問題とも言われる。

 

しかも、強毒性である鳥インフルエンザがすでに日本に上陸している。
鳥インフルエンザは、
まだ鳥→鳥、鳥→豚、鳥→人に感染するだけで、
人→人に感染する変異には進んでいないが、
「人→人の感染力が強い、弱毒性の“豚”インフルエンザ」と、
「人→人の感染力はないが、強毒性の“鳥”インフルエンザ」が、
誰かの体の中で、
あるいはどこかの豚の中で、
あるいは何かの鳥の体の中で一緒になった時、因子が混ざって、
「人→人の感染力が非常に強い、強毒性の新たなインフルエンザ」に
いつ変異するかもしれないだろう。

 

すでに鳥インフルエンザが蔓延している東南アジアで、
まだ豚インフルエンザの感染者が出ていないのは幸いだが、
中国が豚インフルエンザに対して神経質なほど警戒しているのは、
そんな理由もあるようだ。

 

これで、強毒性を持った豚インフルエンザ。
あるいは人→人の感染力を持った鳥インフルエンザが、中国で発生して拡がれば
SARSで大きな経済的な損失を被った経験のある中国は、
今の世界的な恐慌の中で、
人口の多さからの内需でかろうじて支えられている自国の経済が、
壊滅的に崩壊するのではないかという恐怖が、
中国の水ぎわ検疫のきびしさの中に見える。

 

今騒いでいる新型の豚インフルエンザは弱毒性であって、
たしかにそれ自体は怖くない。
発見と治療が早ければ死ぬ人はまずいないだろう。
しかし、本当の怖さは、
今の豚インフルエンザが強毒性に変異する事、
鳥インフルエンザが人から人への感染力を持つ事、
つまり、今現在、日本国内に、
豚インフルエンザと鳥インフルエンザが同居している状況になったことではないか。

 

一つの島国の中に同居していて、
どこかに誰か、人か豚か鳥の体で一緒になる可能性があって、
強毒性の人から人へ感染する新たなインフルエンザに変異して、
人類史上かつてないグローバル世界でこれが蔓延すると、
未曾有の死者が出る恐怖のパンデミックに到る可能性か決して少なくない事である。

 

豚インフルエンザが弱毒性であることで、
経済の停滞を恐れるあまりに、
季節性のインフルエンザと同じ扱いをすべきと主張するのは、非常に危険であると思う。

 

 

東京への新幹線で富士山を見るラッキーを楽しみながら、
修学旅行の高校生の元気にはしゃぐ姿を見て、
そんな事を、真剣に考えたのでした。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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