谷 好通コラム

2008年11月11日(火曜日)

2061.東京での「断られた」言葉

昨日の夜、東京に来てホテルに泊まった。
新しいホテルでインターネット上に安く出ていたのであろう。
立派なホテルの割には、しかも東京であるのに8,100円/泊と安い。
経費節源に工夫を凝らしていてくれるサメちゃんのお手柄である。

 

私たちはホテルの予約をするのに朝食付きにしない。
朝食は個人の食事であって経費で支払う種類のものではないからだ。
今回もいつものとおり宿泊費だけでの予約だ。

 

それでも朝食はホテルで取る場合が多いのは外へ出るのが面倒だから。
あるいは、前日の夜にコンビニエンスストアなどで翌朝の朝食を買っておいて、
翌朝それを食べるという手もあるのだが、
私の場合、夜買っておいた翌朝のための朝食を、
どうしても我慢できなくて、
その夜の内に食べてしまうというデブには最悪の悪癖を持っているので、
朝食は主にそのホテルのレストランで食べることが多い。

 

今朝もそのつもりで、朝、ホテルのレストランに行った。
レストランのガラスドアの前に感じのいい男性の係員が立っていて私に聞く。
『食券はお持ちですか?』
「いいえ、持っていませんが、なくてもいいんでしょ?」
係の男性はチョッとけげんな表情をして
『はい、いいんですが、宿泊のお客様はチェックインの時に食券を買われると安くなるものですから。』
「・・・・・・・じゃ、やめときます。」
そう言って、外の定食屋に行って朝食セットを食べた。

 

私はいやな客かもしれない。
せっかく係の男性が親切に
チェックイン時に食券を買えば安くなることを教えてくれたのに。
何が気に食わないのか「・・・じゃ、やめときます。」と他に行ってしまった。

 

しかし私は「断られた」と感じたのだ。

 

私はレストランに来店した上で、
食券を持っていないことを告げたのだから、
私はその場では食券なしで現金を払って食べるしかないのだ。
ならば、
「食券を持っていません。」と言われたら
係の男性は、
『はい、ありがとうございます。では、後ほど精算させていただきます。』
と言うべきなのであって、
食券を持っていない人は損ですよ。みたいなことはまったく言う必要はないのだ。

 

食券はチェックインの時に買えば安くなるかもしれないが、
それはその人の都合でたまたま買わなかっただけであって
安くなることを「知らなかった」人ばかりではない。
特にそれがビジネスホテルならば、
出張で利用している人が多いわけで、ほとんどの人が知っているだろう。
「食券なしで朝食を食べに来た人」に対して、
親切に「損」であることを教えてあげることよりも前に、
『はい、ありがとうございます。』の感謝の言葉を告げるべきであろう。

 

そんなことは知っていて食券なしで朝食を食べに来た人にとって、
歓迎の言葉もなしで、
『食券はチェックインの時に買えば安くなりますが、』と言われる言葉は、
食券なしで食べに来た人を歓迎していない言葉に聞こえてしまう。
単に「ことわられた。」という感じを受ける。

 

その係の人は、きっといい人だ。
レストランに来店されるお客様すべてを心では歓迎しているのだろう。
でも、言葉の使い方を間違えたことによって
結果的に「断ってしまった。」

 

洗車とかコーティングをやっている店舗でも同じようなことがある。
特に私たちのように「予約」を取り入れている店舗ではこのような例が多くある。

 

「洗車出来ますか?」とお客様が予約なしでご来店された時、
スタッフが、
『え~~っ、ただいま作業開始まで40分待ちなんですが・・』と答えると
「じゃ、また来ます。」と言って、多くのお客様は去って行ってしまう。
そのあともう一度、そのお客様がご来店することは少ない。

 

スタッフは、お客様が無駄に待ち時間を使うことが申し訳ないと思って、
『え~~、ただいま作業開始まで40分待ちなんですが・・』と言ったのだろうが。
実は、結果的に、スタッフはお客様を断ってしまったことになる。

 

お客様の立場に成って考えてみていただきたい。

 

お客様は『洗車出来ますか?』と来店された。
ある程度待つつもりかもしれないし、
すぐに洗車してもらいたいのかもしれない。
あるいは今日は洗車をしてカーコーティングのことを聞きたかったのかもしれない。
しかしスタッフには、お客様がどう思って来店されたのかまったく解らない。
なのに、いきなり
『え~~、ただいま作業開始まで40分待ちなんですが・・』と言われれば、
たとえばコーティングの問い合わせで来たのに、
「忙しくて40分は相手できません。」という意味になる。
あるいは、洗車で来られたお客様でも
取りようによっては
「私共の店舗は予約なしのご来店は迷惑です。」とも聞こえる。
あるいは、「私たちは40分待ってもらうほど今忙しいんです。それでも洗います?」か。

 

食券なしで朝食を食べに行ったら
『宿泊のお客様はチェックインの時に食券を買われると安くなります。』
と言われるのと同じだ。
いきなり『え~~、ただいま作業開始まで40分待ちですが・・』は、
「40分後からしか洗車が始められない。」という
否定的な言い方であり、
多くの場合「断り」になる。
肯定的に言うならば、
「はい、ありがとうございます。40分後にスタートできます。」
であろう。
言い方によって、
「40分の待ち時間」も、
否定的な言い方と肯定的な言い方では、お客様の取り方は正反対になる。

 

いや、ただ単に言い方だけの問題ではないかもしれない。
否定的な言い方をするのは、
忙しい時にお客様が来ていただけることを、
本当に迷惑だと思っているのかもしれないから否定的な言い方になって、
本当に帰ってもらいたいと思って言うのかもしれない。

 

逆に、お客様か来ていただいたことを肯定的に嬉しいと思えるのならば、
自然と「はい、ありがとうございます。40分後にスタートできます。」と、
肯定的になるのであって、
これは言い方だけの問題ではないのかもしれない。

 

そう思うと、問題は根深い。
仕事を肯定的に考えているのか、
否定的に考えているのかの根底的な問題になってしまう。
そうなると、その人の個人個人の価値観の問題であるので、
とやかくは言えなくなってしまう。

 

あるいは、仕事を肯定的に考えられる価値観を
その職場が持ち合わせているか否かも問題かもしれない。
いずれにしても、その店舗が
お客様の来店を肯定的に歓迎できる姿勢なのか、
あるいは否定的に嫌がる姿勢なのか、
それでお客様の反応は「もう来ない」「また来よう」と180゜変わるので、
店の繁栄の行方も大きく変わる。

 

お客様への親切のためと言いながら、あるいは本人もそう思い込みながら、
実は、結果的にお客様を断ってしまっていることもある。

 

『え~~、ただいま作業開始まで40分待ちですが・・』と、
「はい、ありがとうございます。40分後にスタートできます。」は、
それを聞いたお客様から見ると、
お客様を断っているか、歓迎しているかの大きな違いであって、
ただ単に言い方だけの違いではない。

 

店舗は、お客様を歓迎しなければ繁栄するわけがなく、
お断りしながら繁栄する店舗などありはしない。

 

店舗が繁栄し、会社が繁栄し、個人が繁栄したいならば、
お客様は歓迎すべきである。
「はい、ありがとうございます。40分後にスタートできます。」であり、
「はい、ありがとうございます。では、後ほど精算させていただきます。」
で、あるべきである。

 

今日は、鈴置君の車の中にカメラを忘れたので、
また、写真なしです。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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