谷 好通コラム

2008年10月31日(金曜日)

2050.「私は悪くない」「お前が悪い」

何かトラブルがあった場合、
その原因を究明し、
その後の対策をするのは当然であるが、
その段階でありがちなのが当事者お互いによる「私は悪くない。」の応酬だ。

 

「私は悪くない。」は、裏返せば「お前が悪い。」である。
お前が悪いと攻撃されれば、誰だって反撃する。

 

言葉の攻撃と反撃が繰り返されればそれは言い争いであって、
トラブルの原因を究明するための議論ではない。
言い争いの中からトラブルの原因が究明されることはないだろう。
だから当然、トラブルを防止するための対策も生まれ出てはこない。
不毛の争いだけである。

 

技術者というものは客観的、論理的な思考に慣れているので、
この手の議論で「私は悪くない」「お前が悪い」の言い争いになることは稀である。
むしろ、議論を政略的な意味で行う立場の者の方が、
「議論」であるべきを「言い争い」にしがちである。

 

技術者は客観的な論点から事実を積み重ねて、論理的に真実を解明し、
合理的な対策を練りだすことが仕事だ。
それはそれで一応の役割は果たしている。

 

しかし、経営的な立場にある者、
あるいはユーザーと直接的、間接的に接する立場にある者は、
何らかのトラブルが生じた場合、
真っ先に考えるべきはユーザーのことであり、
それ以外に考えるべきことはない。
まずユーザーである。
トラブルによって生じたユーザーの困難、被害、迷惑をいかに補填するか、
その一点に思考と行動を集めるべきであり、
そして、その一環として、
トラブルの再発防止のために
トラブルが生じた原因を関係者全員で一刻も早く究明し
適切な対策を練るべきなのであって、
そのトラブルが誰のせいで生じたなどということは最後の最後に、
当事者の中で行われればいい。

 

原因の究明は、
トラブルの再発でユーザーに対して迷惑がかかることを防止することが目的であり
一刻も早く、全員で協力して実行されるべきである。
このことについては、技術者も、経営者も、販売者も、サービス提供者も、
一律に同様の責任を持っている。
むしろ、技術者は初動において躊躇すべきではない。
技術者としてのプライドを持って、すばやい初動が求められる。

 

「このトラブルはこちらのせいではなく、
あちらのせいである可能性が高いので、こちらは動く必要はない。」
などと考える者がいるならば、
「私は悪くない。」「お前が悪い。」的なまったく本末転倒な発想であって、
物を造るべきではなく、
販売するべきではなく、
サービスを提供するべきではない。
ビジネスとして失格である。

 

なぜならば、
そういう輩が作った物、
販売した物をユーザーは買わないだろうから、
必然としてビジネスの世界から退場することになるので、
「私は悪くない。」「お前が悪い。」的な発想はビジネスとして失格となるのだ。

 

 

中国からの食料品に害のある物が混入していた事件が立て続けにあった。
あの時、日本の消費者が中国からの輸入食料品にそっぽを向いたのは、
事件があったからだけではない。
この事件を受けて、
中国側の当事者から政府関係者まで
「私(達)は悪くない。」と言い、
原因の究明も、
自分たちの正当化のためのようにやっているだけに思えた。
だから、トラブル再発が防止される対策は実行されないだろうと感じたし、
また、中国での街頭インタビューに多くの一般中国人が
「日本人はいつもそういうことを言う(因縁をつける)。」と答える言葉に、
“この人達の造った物は怖い”と感じたのは、
率直なところだ。

 

それは日本人だけではなく中国の人自身も同じ思いのようで、
中国の金持ちは競って日本製の食物を好むし、
ミルクにいたっては、
わざわざ高い日本製のミルクを取り寄せて子供に飲ませている。
自国の人にまで信用を失っている中国食品は、
安いだけが取り得の「安かろう悪かろう商品」に成り下がっているのが現状ではないか。
一部の目先の小銭稼ぎを破廉恥に行う業者によって、
大多数の真面目な民衆が泣きを見るのは理不尽であり情けない。

 

中国経済の弱さは、
経済的な視点からだけではなく
実はこんなところに根深く存在しているのではないか。
バブル崩壊が一部で始まり、
一斉崩壊も間近と懸念されている中国経済は、
こんな部分が解消されないと、
立ち直りもとんでもない長い時間がかかるのはないかと心配になる。

 

しかしこれは中国の話だけではない。
日本の過去のバブルの中で育ち、
バブルの中で誰でも金を儲けたビジネスを憶えてきた人には、
「私は悪くない。」「お前が悪い。」の不毛の論理が、
なぜ不毛であるかを理解できない人もいる。

 

誰もが成功したバブルの中では、
造れば作るだけ売れ、売れば売るだけ儲かった。
だから、何らかのトラブルがあっても、
「私は悪くない。」「お前が悪い。」をやっていても
世間全体の成長の中で生き延びることが出来たからだ。

 

しかし世の中が変わって、
きちんとしたCSが実現できる企業だけが生き残る時代になった今では
そんな不毛な価値観がまかり通るようなことはない。
「私は悪くない。」「お前が悪い。」は
ユーザーをそっちのけにした不毛の言い争いであって、
自分の首を絞めていることに気付くべきなのだろう。

 

「人の振り見て我が振り直せ。」
人の事は見えても自分の事は見えないもの
わが身を自省しなければならない。

 

 

 

今日の朝、羽田空港内ホテルの自分の部屋から外を見ると、
そこはもう空港のカウンターだった。
7時に起きて、8時の飛行機に乗る。
空港内のホテルに泊まる醍醐味である。

 

 

飛び立ってしばらく、デジタルカメラが使える頃になっても、
まだ市街地が続く。関東平野はでっかい。

 

 

飛んで20分ほど経つとほとんど真下に「蔵王」の噴火口池「お釜」が見えた。
山頂付近が白くなっていたのは、今年の秋初めて見た“雪”、
とうとう冬が来るのだ。

 

 

空かに見るとなんとなく赤いだけだが、
このあたりは世界遺産の「白上山地」であるはずだ。
さぞかし紅葉がすばらしいのだろう。

 

 

北海道、苫小牧の上空でこの高さなのは、
風が南から吹いていて、千歳空港の北から着陸になる証である。

 

 

日高山地。

 

 

札幌を出たのは、千歳発中部空港着の最終便にぎりぎりで間に合う時間。
写真の車はレンタカーの「ビッツ」。
今日は社長の私と畠中常務と増田係長の三人が一日この車で走った。
そのことを承知で「ピッツ」を手配してくれたサメちゃんの価値観は、
わが社がその意味で健康であることを示している。
OKである。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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