谷 好通コラム

2008年08月17日(日曜日)

1995.年間10億kwの発電量

黒部川をさかのぼるトロッコ電車に乗って終点の欅平まで行った。

 

黒部は、高い山を黒部川が鋭く切り削ったV時峡が素晴らしく、
険しい渓谷が、山に人の手が入るのを拒み、
大自然がそのまま残っている。
山が主役である日本でも、際立って素晴らしい山岳地帯である。

 

その厳しい自然を持つこの地域に、水力発電に最も適した場所として、
巨大なダムを作り発電所を建設し始めたのは戦後間もなくである。
現代のように建設機材が発達していなかったので、
何から何まで人が主役で作り、日本最大級のダムである黒部第四ダムの建設には、
述べ1000万人もの人が投入されたという。
まさに国を挙げてのビッグプロジェクトだったのだろう。
通称・黒四ダムを作るために、宇奈月の地に基地としての町が作られ、
黒部川に沿ってトロッコの線路が敷かれ、
今では宇奈月温泉、観光トロッコ電車として残っている。

 

大町からは「黒部の太陽」で有名な関電トンネルが掘られ、
立山から美女平、弥陀ヶ原、室堂、大観峰へと山岳ルートが開かれて、
立山アルペンルートとして残り、年間1000万人の観光客が訪れているそうだ。
工事が終わった後、
その工事のためのルートが観光に貢献しているのは
こんな巨大な工事でも基本的に人力と簡単な機械に寄ったので、
自然がここまで残っているからなのか。

 

私はその観光トロッコ電車に乗ったわけだ。
宇奈月温泉駅から約20kmを1時間20分ぐらいかけてゆっくり走っていく。
それでも黒四ダムまで半分くらいの距離で、終点は欅平という猿飛峡の脇にある駅。
1時間以上の時間をずっと渓谷の中を行くが、
その自然の素晴らしさに、まったく長いと思えない。

 

 

黒四ダムからの水力を使い黒四発電所が発電する電気量は年間10億Kwに上る。
戦後の復興にその電力が大いに活用されたことは間違いない。

 

しかしそれ以降、
急速に伸びる電気需要は応じるようにダムと発電所が日本中に作られ
日本全国の水力発電の発電量は約1000億Kwとなった。
国を挙げて作られた黒四ダムは、今では水力発電全体の100分の1の貢献でしかなくなっている。
それどころか、
水力発電は日本の発電の主役をとうの昔に火力発電に譲っていて、
インターネットで調べた数字では、日本全国の年間総発電量は約1兆Kwと書いてあった。
水力発電はその約10%にしか過ぎず、原子力発電が約25%。
主役は、65%の火力発電である。

 

感動的なまでに巨大な黒四ダムから発電されるのは、
もう日本全体の0.1%に過ぎない。

 

水の高さのエネルギーを使ったCO2ゼロに近い水力発電にはもう主役の座は来ない。
ダムに土砂が少しずつ溜まって、実質の貯水量が刻々と少なくなっているからだそうだ。
水力発電は、エコなエネルギーではあるが、
その構造として比較的短命であり、過去のものになりつつあるようだ。

 

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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