谷 好通コラム

2007年10月04日(木曜日)

1744.苦渋の決断のあとに

やっと札幌に快洗隊が誕生することになった。
場所は、札幌営業所(札幌トレーニングセンター)そのもので、
トレセン内に待合室を作り、外装を整えて快洗隊にする。
元々ここで作るつもりでではなく、急遽の話だ。

 

本当は、そこから15分ぐらい離れた場所に約400坪の土地があって、
そこを借りた上で約100坪の建物を建て、
初めての全天候型の快洗隊を作ることになっていた。
ある大手の建築会社の不動産部の方に土地を紹介してもらい、
建物のレイアウトからデザインをこちらから提出し、
概算見積もりまでいただいたのだが、
最終段階、一昨日の役員会でその実行を否決し断念したものだ。

 

建物の概算見積もりが出た時点で収支計画がある程度はっきりしてきたわけだが、
その収支シミュレーションの結果の振幅が大きすぎて、
計画を前に進めることにゴーが出せなかった。
結果として、計画の実行が役員会で否決されたわけだ。

 

ここまで来るのに数ヶ月間に渡っての話であり、
この段階でお断りするのは、
地主さんに対しても、お世話になった建築会社の方にも、
まったく申し訳ないことだが、
役員会という場でしっかりと議論した上で出た結論であり、私としても苦渋の決断であった。

 

収支計画は、
札幌で店舗を運営する経験を持ってない私なので、
札幌の特殊事情を地元の人に聞き、それを元に数字を設定していくのだが、
数値の可能性の上限と下限の幅が大きすぎて収支予測がまったく立たなかった。
立地は70点でぎりぎりOKだが、
初期投資は総額6000万円程度が予想され(建築費、設備器機、看板、外回り、宣伝広告)
今まで作った快洗隊の中でも飛び抜けて高い。
雪国であることと札幌市東区の地盤の弱さという特殊要因が、
建築費を押し上げているのらしい。
それにしても高い。
当初の予測の1.5倍にもなる。

 

一年のうち1/4は雪に閉ざされる土地なので、
稼動率は75%と考えなければならない。
そのような前提の下で400坪という広大な土地の地代も大きいが、
初期投資がいつもの1.5倍というのは、やっぱり重い。

 

しかし、これを作るに当たっては、
札幌のエムズ・カーケアパフォーマンスさんと合併して運営をするので、
エムズさんが現在持っている多くの顧客が、最初から来店していただけるだろうし、
エムズさんの技術は日本でもトップクラスなので、
かなり高いレベルでスタートできるとの胸算用があった。
だから、多少大目の投資は十分に吸収できると踏んで、
現快洗隊最大の400坪に最大の初期投資をかけてでもやれると話を進めてみたのだが、
設定数値の幅が大きく
実際に見積もりが出て、それもシミュレーションにはめてみると、
大きく採算割れの可能性が出てきた。
もちろん収支がバランスする可能性もあるが。

 

小企業であるアイ・タック技研として、
そのようなリスクを持ちながら、
今まで最大の投資を進めるのは“否”と役員会が結論したのは、
致し方ないこととも言える。
代表取締役である私としては、その結論を承認するしかなかった。

 

私の直感としての判断に対して、
冷静に議論を積み重ねた判断が役員会として出せるようになったのは、
会社が成長した証拠であり、正しいことでもある。

 

とはいえ私の判断で話を進めた上で、最終段階でのどんでん返しは、
話を進めていただいた方々に対してご迷惑をおかけしたことに違いなく、
申し訳ない限りであり、深くお詫びしたい。

 

今日の朝、
札幌のその建設会社に出向き、事情を説明させていただいた30分間、
緊張と申し訳なさに、何年かぶりに胃がずっと痛かったのは、昨夜の酒のせいではない。

 

 

札幌トレセンを快洗隊に改造しようと思い立ったのは昨日のことだ。

 

400坪の土地に立てる予定であった全天候型快洗隊の計画は、
当初177坪の建物を建てるプランであり、
画期的な洗車スペースが出来ることにみんな夢を膨らませていた。
しかし、その177坪の建物だと建築費が8,300万円かかるとの見積もりをいただき、
そうすると機器設備、看板なども考えると1億円を越さんばかりの金額になってしまう。
そんな投資はとても絶対に無理なので、
急遽、100坪の建物のプランに修正したのだった。
それでも総額6,000万円ぐらいの投資になるというので、
シミュレーションの幅とリスクを検討した末に断念した。

 

しかしそのあと、
ふと気が付いたのは、
今使っている札幌トレセン(兼営業所)の建て坪が90坪ちょっとであって、
教室を除いても洗車をする場が70坪ほどはある。
外にも駐車場として50坪ほど。
ならば、
トレセンの入り口近くある小部屋を拡大し待合室に改造して、
建物内部を整備し、看板類をキチンと立てれば、快洗隊としてやっていけるのではないか。
そう気が付いた。
投資はせいぜい4~500万円以内で済む。

 

177坪の建物ならば話は違うが、100坪ならば70坪でも大して変わらない。
33坪しかない快洗隊・大須店でもちゃんと運営できているし、
70坪と言えどもすべて建物の中であって全天候型ではある。
トレセン・営業所と快洗隊の併用は、
すでに快洗隊・北神戸店の二階に大阪営業所を据え、
快洗隊の営業をしながらトレセンとしての研修をしていた実績がある。
快洗隊は土日が忙しく平日は暇で、研修は平日にしか入らない。
都合よく両立できるのだ。
快洗隊の平日に研修が入っていると、
暇な店にも活気がなくならないというメリットもある。

 

しかも、札幌トレセンは現在のエムズさんの磨きと鈑金の工場から、
車で3分くらいしか離れていないので、うまくリンクさせれば、面白いことになる。

 

投資額1/10以下で、
新たな地代も発生せず、
滅却損を発生する設備の廃棄もなしで、
札幌に初の新しい快洗隊が生まれ、
エムズさんの工場とのリンクで、
最高級な技術を活かした協業体制のモデル作りも出来る。
研修も現役の快洗隊店舗の中でやるわけだから、研修生にはいい経験になるだろう。
メリットは多い。
これはこれで名案だと思った。

 

 

建設費が高い札幌では、どうせ177坪プランは実現不可能。
そこで100坪プランに縮小したと考えて、それでも実現が難しいと結論に至り、
ふと、ふっ切れて、初めて気が付いた。
90坪の札幌営業所を快洗隊にしてしまえばいいと。
それがひょっとしたらベストなのかもしれない。

 

狭い建物の中で、店舗が暇な平日とはいえ、
一般のお客様と研修生が不自由なく共存できるのか。
問題もデメリットも上げれば切りがないが、メリットも大きい。
やるしかないのだ。

 

 

中はこれでも70坪あって、少し無理すれば6~7台入るし、
すでに快洗Wingが装備されているのだ。
まだ分からないが、たぶん内部をつや消しの真っ黒に塗るつもりだ。
いいムードになるかもしれない。

 

 

何かをあきらめ、苦渋の断念をしたあと、
ふと、ふっ切れて、新しい可能性とアイデアが浮かぶこともある。
創業以来22年。
以前にも何度もこんなことがあったような気がする。
何かを吹っ切った時、それをきっかけにして会社が大きくなってきたような気がする。

 

何かを吹っ切った時にしか、
見えてこない可能性とかチャンスとか成長いうものがあるような、そんな気もする。
多くの人にご迷惑をかけてしまったが、
これで良かったときっと思える日がいつか来るといいなと思う。

 

札幌営業所を出て千歳空港に向かう時、
南国であるかような土砂降りの雷雨に見舞われた。
しかし、そんな土砂降りもじきにやんで、
高速を走って札幌の市街を抜けかけたころには、ふっ切れたような青空が広がっていた。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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