谷 好通コラム

2007年08月20日(月曜日)

1713.何十匹も兎を追う

テレビで面白いコマーシャルをやっていた。
その中で、「二兎を追う者だけが、二兎を得る。」というコピーがあったのだ。

 

格言では、
「二兎を追うものは、一兎を得ず。」
といって、欲張ってはいけないことを諭した言葉であるが、
それはそれとして、
「二兎を追う者だけが、二兎を得る。」という言葉は、
これはこれで、私としては全く同感なのだ。
むしろ、
「二兎、三兎といれば、二兎、三兎ともを追わずして、一兎を得ることもない。」
とも言いたい。

 

洗車でたとえよう。

 

車を洗う時、あるいは磨く時、
「きちんときれいにしようとすればするだけ、時間と手間もかかる。」と思われがちである。
だから、
「俺はキレイニすることにこだわっているから、早い作業は出来ない。」
「きちんとキレイニすること」と「早い作業」は両立するものではないと言って、
洗車とか磨きにべらぼうに時間をかける人がたまにいる。
しかし、
そんな時間をたくさんかける人の洗車は、
残念ながら、きれいな仕上がりにはなっていない場合の方が多い。
どうでもいいような所にやたらこだわって、肝心な所の手が抜けていたり、
無駄な時間ばかりかけて、コテコテといじくり回すだけで、ちっともキレイにならないのである。
その結果、むしろ汚いし、
余計に車を触ることによって塗装を傷める結果にもなっている。

 

上手い人の洗車とは、
車をキレイにするためのポイントを抑えつつ、
手早く、確実に仕上げていく洗車だ。
だから結果的に、早い作業になるし、仕上がりもいい。
それに、無駄に塗装を触ったり擦ったりしないので、塗装の痛みもない。

 

上手い洗車とは、
洗車に対する的確な知識と技術を持った人が、
手早く、塗装に負担をかけずに行う洗車であって、
上手いから早いのである、逆の言い方をすれば、早いから上手いとも言える。

 

私は、洗車の訓練をするときに
「早いは上手い。上手いは早い。」とよく言う。

 

「仕上がり良さ」と「作業の早さ」「塗装への負担の軽さ」は、
両立できないのではなく、
まさに、両立をせざるを得ない事なのである。

 

「早さ」と「仕上がり良さ」と「塗装に負担が軽い」の三つの要素は、
二兎どころか三兎であり、
この三兎は同時に追わなくては、
一つの要素、一兎をも満たすことは出来ない。

 

「三兎は、三兎を追わなくては一兎をも得られない。」
それが洗車であり、磨きとかコーティングの技術であると思う。

 

 

もう一つ、たとえばの話。

 

仕事全般に言えることであるが、
たとえば一つの仕事を進めているスタッフが、相手の出方を待つ時間を持ったとして、
その男は、特に何もせず、“待っている。”
積極的に他の仕事を進めようとはせずに、待っている。
待っているだけなら、他の仕事に手をつけて進めればいいのにと思って、そう言うと、
「二兎を追うものは一兎も得ず。」
のたとえにあるように、
「次の仕事を入れてしまうと
今の仕事にすばやく反応できなくなって、今の仕事を失敗するかもしれない。」
と言って、ただ待つことを主張し、何もしない。
あるいは、
「今これをやっているから、それまでは能力的に出来ません。」

 

こんなスタッフは、仕事が出来ない男である。
今やっている仕事だってろくな仕事に仕上がりはしないので、
その仕事もたぶん駄目になるだろう。

 

仕事はすべからく同時進行なのだ。
いくつもの仕事を掛け持ちで持って、
すべての仕事を連動させながら、同時進行していく。
タイトロープを渡るようなスケジュールを、緊張感を持ってこなし、
たくさんの用件を、同時に進めていくからこそ、それぞれの仕事が連動して、
バランスの取れた仕事に成りうるのだ。
仕事の相手も、
緊張感のある仕事をこなすスタッフに対して、ダラダラとした対応はしない。
こちらがだらけた仕事をしていれば、相手も緊張感を持った対応はしてこない。
こちらの緊張感あふれる仕事ぶりにこそ、相手も真剣に対応してくるものなのだ。

 

仕事こそ、
一匹の兎どころか、二兎いようと、三兎いようと、四兎いようと、
そのすべてを追いかけるだけ追いかけなくてはならない。
そうすることによって、
その仕事量をこなすだけの体力と能力が身に付き、
凄まじいまでの緊張感に耐えうるだけのエネルギーを自分のものにしうるのだ。

 

特に、経営者たるものには責任分化としての分業はありえない。
会社のあらゆることに関わり、
自らが担当している事も、そうでない事にもアンテナを張り巡らし、
自らの担当している仕事を会社全体の総合的な判断の中で決定し、実行する。

 

経営者は、何十匹もの兎を同時に追うような存在なのである。

 

「二兎を追うものは、一兎を得ず。」
これはこれとして、引退してからでも思い出そう。
今は現役のバリバリだ。
何十匹もの兎を一匹も逃すまいと、嬉々として追いまくろうではないか。

 

 

さきほど仙台から中部空港に帰ってきた。
今回もまた、雷だらけの飛行であった。
特に、今回は夜間飛行の場面で空雷をいっぱい目撃したので、
この世のものとは思えぬ美しさと同時にスリル満点。
着陸してしばらくしたから土砂降りになったのは、
雷雲である積乱雲のすぐ際を通ってきたことになる。
さすがにゾッとした。

 

※今日は昨日にも増して、スチュワーデスさんのまん前の1Aに座ったので、
とても写真を撮れなかった。

 

代わりにと言っては何だが、
なぜだか予約よりも料金の高い最上階の部屋(20F)をもらったので、
とっても涼しかった仙台の朝の1枚を。
(と言ってもクーラーの無い仙台営業所は、結構暑かったが)

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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