谷 好通コラム

2007年04月14日(土曜日)

1619.所有欲という欲望

(前年対比200%を続けるKeePreプロショップ店の話は、必ず明日書きます。)

 

この話は、何日か前に書いた話。

 

住宅に住む場合、
たいていの人は一戸建てが理想であると考えるだろう。
しかし、土地プラス建物を両方買うとなればそれなりの資金が要り、
なかなか実現が難しく、建てたとしても
狭い土地に、狭い住宅を建てる事になりやすい。

 

そこで今、「定期借地権付き住宅」なるものがあって、
土地を地主から一定の期限付きで借りて(定期借地権)、
そこに建物を立てる方法が広がっている。

 

地主からすれば、
土地は売りたくはないが、
タダで遊ばせておくのは勿体ない。
かといって、下手に土地を貸して住宅でも建てられると、
居住権という非常に強い権利が付いてしまい、
その建物がある限り、出て行ってもらうことは事実上困難である。
だから、住居用としての土地を貸す地主が少なく、
供給が少なくなって
宅地不足につながり、それが不動産バブルの一つの要因でもあった。

 

そこで出てきたのが「定期借地権」という新しい法律で、
20年ぐらいの一定の期間を定めて、
そこに家を建てていても、人が住んでいても、
必ず出てもらえる地主の権利を認めた借地契約の方法「定期借地権」が出来た。
借地権の着いた土地は評価格が下がるので相続税対策にもなる。

 

借りる方も、
たとえば20年で出て行かなければならない事が分かっていても、
その分、かなり地代が安いので、
手持ちの資金で、広い土地に、広い家を建てられる。
土地は自分のものとして子孫に残す事はないが、
そういう概念はかなり薄くなっているので、
同じ資金ならば倍以上の広さの家が建てられるこの方式が、静かに流行っている。

 

土地持ちは、土地の所有権に固執するが、
住む人間からすれば、
家は住むための物であって、
それが自分の所有の土地の上に建っているか、借り物の土地の上に建っているかは、
住んでしまえば全く関係のない事であって、
土地を買う費用が要らなければ、
その分、大きな家を建てることも出来るし、
他の買い物、あるいは遊興費に回す事も出来る。

 

土地の所有権をあきらめる代わりに、一戸建てのまあまあ大きな家に住んで、
いい車に乗って、いい生活をするために有効にお金を使う。
人生は「蓄財」のためにあるのではなく、
楽しむためにあるのだ。という
一つの価値観からすれば、こんなに合理的な方法はない。

 

しかし、この制度は思ったより使われていないのが現状だ。
せっかく家を建てたのに、
それが他人の土地の上に建っているのでは、
「一国一城の主」になった気がしないではないか。

 

所有欲というものは、なかなか理屈で理解できるものではないらしい。

 

自分のものには愛着が湧くが、
借りたものに愛着が湧く事は少ない。
簡単に言えばそういうことなのだろうか。

 

所有欲という欲望は、
人間が言葉も話せないような小さな子供の時から強く、
大人になってもいっこうに衰えないようで、あらゆる物を自分のものにしたがる。

 

自分の車。 自分の家。 自分の会社。 自分の土地。 自分の夫。 自分の妻。
自分のチーム。 自分の店。 自分の服。 自分のテレビ。 自分の携帯。
自分の恋人。 自分の部屋。
独裁者に至っては、自分の権力。 自分の国。 自分の地球。

 

ところで、
会社は誰のものか。
社長のものか、株主のものか、アルバイト・パートさんを含めた社員のものか、
お客様のものか、役員のものか、
創業者のものか、功労者のものか、社会のものか、民族のものか。

 

法的な所有権という意味で言えば、会社は株主のものである。
しかし、創業者とか功労者がいなければ会社は存在していないし、
あるいは、社長、アルバイト・パートさんを含めた社員、役員、がいなければ
会社は成り立たないし、
もちろん、お客様がいなければ会社は存続できない。
銀行、仕入れ会社、代理店さん等、会社を支えている社会がなければ
会社は成立しない。

 

多くの中小企業の社長は、株主でもあり、
会社を“自分のもの”、つまり所有物だと思っている。
ところが会社が発展してくると、いつの日か、
会社がたくさんの要素で成り立っている事を思い知らされる事になり、
自分のものであったはずの会社が、
実は、みんなに支えられているものであり、
実は、会社が“自分のもの”ではないことにふと気が付く。
そんな時、多くの社長は唖然とするが、
それを受け入れた上で、自分ならではの“役割”を作り出せないと、
そして、会社が自分のものでなくても、
自分が社長である事に価値を見出せないと、
そして、社長としての仕事に価値を見出せないと、
そこから先には進めないことを知る。

 

限られた人生、
死ぬまでに何を所有したって、墓場の中にまで持って行ける物はない。
何を持つかではなくて、
何をしたか、
人々にとっての何を残すか、
人々にどんな幸せを、どれだけ残せたかに価値があるのだろう。

 

ずいぶんきれい事を言うが、
よく考えると、本当にそうなのではないだろうか。

 

何かを得る事はうれしいし、何より楽しい。
何かを失う事は悲しいし、何よりも悔しい。

 

しかし、何かを持っている事に、何か価値があるのかというと、
どうしても思いつかないのだ。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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