谷 好通コラム

2006年09月02日(土曜日)

1465.戦闘機大好き少年

アメリカでの3日目、
サンディエゴからロスに帰る道すがら、
サンディエゴにある海兵隊の基地の脇に屋外博物館があって、
退役になったの軍用飛行機の実物がたくさん展示してあるのが見えた。
写真でしか見たことがない戦闘機などがゴロゴロとしていて、
戦闘機大好き少年であった私の胸はときめいた。
「見たいっ!」

 

そう思ってしまった私は、トニーに無理を言って寄ってもらう事にした。

 

昭和27年3月18日生まれ(横山やすしと同じ)の私は、
戦後の匂いがまだ少し漂っている時代に育った。
その頃の漫画には、まだ戦争物がいっぱい載っていて、
ゼロ戦とか隼、紫電改、雷電、飛燕、などの旧日本軍の戦闘機と、
グラマンF4Fとか、コルセア、ムスタング、サンダーボルトなどのアメリカの戦闘機が、
太平洋上で戦う有様を描いた漫画に胸を高まらせていたものであった。
漫画で読んだ戦争は、
人と人との殺し合いというような残酷なものではなく、
かっこいい戦闘機同士が、かっこいいパイロットの操縦で、
大空を舞台に、正々堂々と戦うかっこいい物語でしかなかったのだ。

 

その頃の少年は、
一人残らず戦艦大和が大好きであったし、
戦闘機が大好きであった。
戦争ごっこは子供達の定番の遊びであった時代だったのだ。

 

戦争の悲惨さを資料などで如何に知ったとしても、
また、本気で戦争を憎む気持ちを持ったとしても、
少年の頃に根付いた戦闘機をカッコイイと感じる感性は、
少年時代の化石のように、私の中に染み付いたように残っている。

 

死んだ親父が戦争中の悲惨さを深刻に語ったとしても
サンダース軍曹の「コンバット」は、毎週欠かさず楽しみに見ていて、
日本が戦ったはずのアメリカ軍が、
映画の中で、ヨーロッパ戦線でドイツ軍と戦い、
アメリカ軍が勝つと手を叩いて喜んでいたのと似ている。

 

私は飛行機が大好きで、
それが人殺しのために作られたものであったとしても、
とりわけ戦闘機が大好きなのは、戦争の悲惨さを超越しているもののようだ。

 

ボートF4“コルセア”
この戦闘機は、大戦初期に圧倒的に強かった軽量のゼロ戦に対抗して、
重量の増加をものともしない分厚い装甲と武装を、
圧倒的な馬力でひっぱる設計になっていて
大戦中期以降、ゼロ戦が全く歯の立たない強力な相手になっていた。

 

 

敵の前面に展開して攻撃の橋頭堡を作り上げる事が任務の海兵隊は、
爆撃機も比較的小型で機動性を持った機体を持っていた。
B-25“ミッチェル”

 

 

朝鮮戦争の時代、私はそのシルエットから“セイバー”かと思ったら、
海兵隊は一回り小さな戦闘機を持っていた。
F3JB“フューリー”

 

 

対する共産軍は、ソビエトが作ったMig15“ファゴット”で対抗したが、
この軽量で航続距離の短い“ファゴット”は、
アメリカの“フューリー”“セイバー”に歯が立たなかった。

 

 

この辺になると生々しくなってくるが、
ベトナム戦争の頃。
圧倒的な兵力を持って戦うアメリカ軍の主力戦闘機、マクドナルF4“ファントム”
ベトナムはアメリカに史上唯一勝った国である。
その時から、戦争は圧倒的な兵力だけで勝てるものではなくなった。
展示されていたのはその偵察型RF4B“ファントム”

 

 

空母から飛び立つ戦闘攻撃機F8G“クルセイダー”

 

 

戦闘機ではないが、
「これに狙われたら怖いだろうな~」とみんなでゾッとした対空四連装機関銃。
こんな露骨な兵器を目の前にすると、
兵器が兵器であることを思い出される。

 

 

最新鋭ではなくなったが、現在の現役主力戦闘攻撃機F/A18“ホーネット”
写真のホーネットは尾翼に敵の印である赤い星を描いてある。
この事からこの機体が、
トップガンなどの戦闘訓練の時に“適役”になった珍しい機体であることを示している。

 

 

そのホーネットの女性パイロットの写真が飾ってあった。
こんな平和を愛する優しそうな女性が地上最強の戦闘機を操縦しているなんて、
なんとも複雑な気持ちになった。

 

 

これらは間違いなく人殺しの道具である。
圧倒的に豊かな国であるアメリカは、
その地位を守るため、その国威を守るため、
あるいは世界の警察官として
圧倒的な軍備も持っていなければならないのであろう。
その一つ一つは、空力学的に完成され、機能する道具としての美しさを持っている。
この美しくも危険な道具を自由自在に操れる権力を持ったら、
私は、これらの危険な道具を封印できるだろうか。
それとも使うだろうか。

 

戦闘機大好き少年であった私は、
複雑な思いを持ってこの博物館を出た。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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