谷 好通コラム

2006年08月19日(土曜日)

1456.客を知っている事

困った時には“いつものように”すると安心できる。

 

昨日、熊本から名古屋への最終便が欠航になり困ってしまったわけだが、
不意のハプニングであった時には、
出来るだけ早く、いつもの様な体勢にもって行くことが一番安心できる方法だ。

 

昨日のうちに帰るということ自体を、早々にあきらめて、
いつもの国内線ドットコムで、
明日の朝出来るだけ早く名古屋に帰れる飛行機の便を探す。
そして、明日の熊本からの便がすでに満席であることを知るが、
悲観することなく、さっさと福岡からの便を探す。
福岡からの便も最後のUターンラッシュでほとんどの便が満席になっているが、
午前9時20分発のJAL便が1席だけ空いているのを見つけた。
急いで、いつものように電話で予約を入れる。
(私は“身障者割引”を使うので、パソコンからの予約が出来ない。)
OKだ。飛行機の席は確保できた。

 

熊本から福岡へはいつものように中西君に車で送ってもらおう。
すでに遠くまで行ってしまっているだろうが、彼なら頼めばやってくれる。

 

次に福岡でのホテルの手配。
いつも泊まる博多駅前の「デュークスホテル博多」に電話を入れる。
満室です。との返事だが、
いつもそのホテルを使っている谷好通であることを言うと、
データを調べて、私が常連客であることを確認し、
キャンセルが入ったら真っ先に連絡をいただけることを約束してくれた。
このデュークスホテルは、
お客様のデータをちゃんと取り分析していて、
常連客であることを判別してくれるので、
私はいつもこのホテルに泊まる事にしている。
チェックインの時も住所などは書かなくてもサインだけでいいのが嬉しいし、
自分を知ってくれていることが安心で嬉しいのだ。
30分もしないうちに、
キャンセルが入ったので部屋が確保できたことを電話で知らせてきてくれた。
いつものホテルに泊まれる事になって、ホッとする。

 

そして、博多駅前に着いたら、
いつものホテル隣のコンビニに寄って晩御飯を買い、
いつものように、サインだけでチェックインをする。
部屋は、いつものように喫煙可能のシングルルームがもらえた。
部屋に入ったら、いつものようにLANケーブルでパソコンを接続して、
いつものように缶ビールを飲みながらメールチェック。
そして、いつものようにベッドに入ったと同時に熟睡する。

 

朝、いつものように目覚めて、
いつものように、一階のレストランで軽いライト朝食(550円)を取って、
いつものように、ゆっくりとトイレに座って、
いつものように、歯をじっくりと磨き、
いつものように、チェックアウトする。

 

外は雨が降っていた。
いつもは、ホテルからちょっとだけ歩いて地下鉄で空港に向かうのだが、
傘を持っていなかったので、タクシーに乗る事にした。
ホテルから空港までタクシーで1000円ちょっとで行ける。
インスタントの傘を買うことを思ったら、それほど損にはならない。

 

そして、いつものように空港に着いたらチケットを買う。
私の身障者割引は、
一般の人の特割りチケットのように前もってチケットを買っておく義務がないので、
空港のカウンターでチケットを買えばいいのだ。

 

ここで時間に余裕が出来た。
チケットを買い、同時にチェックインをしてしまえばもう安心。
いつものレストランに行って、いつものようにコーヒーを飲みながら、
この話を書き始めた。

 

時間が近づいたら、
ボーディングチケットを、いつものように“胸ポケット”に差して、
手荷物検査場をいつものようにして通り、
いつものように、搭乗を待つ。

 

搭乗口の前で座っていたら、
聞き慣れないアナウンスが入った。
「本日の飛行は、台風の影響で飛び立ったあと揺れる事が予想され、
シートベルト着用サインが点灯し続けることも予想されますので、
お客様には、搭乗前にお手洗いを済まして置かれますようお願い申し上げます。」

 

そうか、揺れるのか、
それにしてもこんなインフォメーションを流すなんてよっぽど揺れるのだろうな。
いつものような飛行ではないんだ。
そう覚悟を決めて、飛行機に乗ることにした。

 

 

・・・・
ここから飛行機の中で書く。

 

乗った機体はMD81、
マクダネルダグラス81と読む。。
日本の国内線として跳んでいる飛行の中では一番古い機種に類した機体である。

 

 

昨日の朝、羽田から福岡に飛んだのは、
最新鋭のB777-200であったが、
帰りの福岡→名古屋は逆に一番古い機体MD81とは、面白い巡り合わせである。
しかし私は、このMD81が好きである。

 

“MD”とは、マクダネルダグラス社のことである。
この会社はマクダネル社とダグラス社が合併して出来た会社で、
マクダネル社とは、
ベトナム戦争での主役であった「ファントム戦闘攻撃機」の
製造会社であり、ファントムは頑丈で高い性能を併せ持って、
その頃のソ連のMIG21戦闘機を圧倒し、
陸軍、海軍、海兵隊、空軍から大量の発注を受け、巨大な企業に発展した。

 

ダグラス社は、
もっと昔、初めてジェットエンジンを積んだ大型ジェット機が世に出た頃、
ダグラスDC8という傑作機で、ボーイング707と張り合った名門である。

 

ベトナム戦争が終わり、やがてファントムも旧式化して
次期戦闘機開発が各メーカーで激しく争われたが、
マクドナル社は必ずしも勝つことは出来ず、
衰退した。
一方ダグラス社のDC8はその優美な姿で世界中のエアラインで活躍したが、
旅客数が激増する中、
より大型の旅客機の開発が求められた時、
高推力高バイパス比ターボファンジェットエンジンの出現と共に、
DC10という3発の旅客機を開発したが、
同じエンジン3発のロッキードL1011と共に、
同時期に開発された、エンジン4発の超大型旅客機B-747(通称ジャンボ)に、
その中途半端さが災いして、セールス的に負けた。

 

その頃同時に開発されたのが、
今乗っているMD-81の原型とも言えるリアジェット2発の、
130人クラスの小型旅客機DC-9である。

 

大型ジェットの開発とセールスに負けたダグラス社は衰退し、
同じように経営が行き詰っていたマクダネル社と合併、
「マクダネルダグラス社」となった。
困った同士の会社の合併である。

 

その後、DC-9は、MD81~87などのシリーズとなり、
やがて最新の高バイパス比ターボファンジェットを搭載したMD-90シリーズとなった。
一方、DC-10はボディを伸ばして、キャパシティを増やした上でMD-11となり、
起死回生をはかったが、
ボーイング社と、
ヨーロッパの飛行機メーカーの大連合であるエアバス社との競争に歯が立たず、
あっけなく、ボーイング社の軍門に下った。
4,5年前のことであろうか。

 

※お詫び。m(__)m
飛行機の話になると文が止まらなくなって、
飛行機に興味のない方には全くつまらない文書を、
つい長々と書いてしまいました。
申し訳ありませんでした。

 

 

 

早い話が、
いつものように飛行機に乗って、名古屋に向かうということである。

 

飛行機はのんびりと送れて搭乗して来たたった一人のオバサンのために、
出発が十分近く遅れた。
こういうのに限って何の悪びれた様子もない。

 

飛行機に乗ればこっちのもの、
揺れる、揺れるとアナウンスでさんざん言った割りには、
大したことはない。
いつも通りの福岡から名古屋へのフライトである。

 

 

昨日のハプニングから、
いつものペースに戻って、別にどおってことない出張になったわけだ。

 

何か予想外のことがあった時、
一番いけないのは、慌ててパニック状態になること。

 

欠航になった時点で、
あれが中国であったら間違いなく怒号が飛び交い、
血相を変えてカウンターに詰め寄り、
「一体、どうしてくれるんだ。
俺は大切なビジネスがあって○×▲へ行く事になっていたのに、
ビシネスがパーになったら■◎・・元の損害になる。
欠航の責任はそちらにあるのだから、弁償してもらうぞ!」
というような怒鳴り声が、
その辺に溢れるはずなのだ。

 

日本ではこんな場合どうなることかと、興味津々であったが、
「あ~~あっ、欠航だって」とため息があちこちで聞こえて、それでおしまい。
拍子抜けするほどであった。
やっぱり、日本と中国では何か違うものがあるのらしい。

 

私は私で、躊躇なく色々なところに予約を入れて、
少しでも早く「いつものように」のペースになるように手配した。
何かハプニングに出会ったときには、これが一番なのです。

 

今朝、福岡空港での発券カウンターの様子。

 

 

どこへ行く便も「満席」の札が並んでいる。
このところ人気のないJALまでがこの有様なのは大変珍しい。
昨日ホテルで聞いた説明では
「今日、SMAPのコンサートがあって、博多中のホテルが満室みたいなんです。」
と言っていた。
飛行機が満席なのは、その影響もあるのだろう。
お盆のこの時期にはた迷惑なコンサートである。

 

(しかし、どこへ行く便も朝一番の便は満席ではない。たぶん彼女達は早起きがとても苦手なのだろう)

 

 

それにしても、そんな状況の中で、
あのホテルが私の宿泊に協力してくれたのは、
私がそのホテルを定宿にしていたからなのかもしれない。
客を知っていることは、商売においてもっとも大切なことの一つなのであろう。
勉強になりました。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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