谷 好通コラム

2006年04月16日(日曜日)

1380.仕事好きは犯罪か

私は多分、仕事大好き人間という分類に所属している人間である。
仕事をしている時が一番充実しているし、
脳みそも一番フル回転していて、快感すら覚える。

 

酒を飲んでいても仕事の話をするのが一番好きであるし、
どんな話をしていても、仕事の話に帰着してしまう。

 

私は根っから仕事が好きなのである、たぶん。

 

しかし過去には、
「谷さんは仕事が好きなんですね。」と言われると、
「そんなことないですよ。仕事はやるべきと思ってやっているのであって、
私だって遊びたいですよ。」
と答えていたが、ちょっと素直ではなかったようだ。

 

私は遊ぶことも大好きであるが、仕事もそれ以上に大好きである。
素直にそう認める。
私は仕事が好きなのである。
朝から晩までずうっと仕事を考えているし、
ご飯を食べている時やテレビを観ている時でも、
仕事のことから頭が離れていないのか、ふっとアイデアが浮かんだりする。

 

といっても、
常に仕事からのプレッシャーから解放されず、
いわゆるノイローゼ状態になる強迫的な仕事漬け人間ではない。
もちろん仕事はつらいことも多いし、厳しい場面もあるが、
私の場合、基本的に仕事を楽しんでいる。

 

やらせておけば1ヶ月や2ヶ月は連続して仕事をしていて、
途中でしんどいなと思うこともあるが、一晩よく寝れば元に戻る。
約20年前に独立した頃は1年間ぐらい一日も休みなしで仕事をしていた。
(この時はさすがに辛かったが)
考えてみればこのコラムだって、つい最近までほとんど毎日書いていて、
これも仕事と考えれば、完全な休日は何年も無かったという事になる。
努力と頑張りではなく、好きでやっているという要素がなければ、
とても出来ることではない。
あるいは、
達成欲が人一倍強くて、
仕事自体は好きではなくても、
仕事の目的を達成したいという欲求で、仕事をしているのかもしれない。
いずれにしても、私は休暇をとらなくてもほとんど平気で仕事ができる。

 

ところが、現代は休暇をとることが美徳とされるようになっている。

 

昔は、高度成長からバブルの時代、
猛烈社員と呼ばれ、
家族もほったらかしで休暇も取らず仕事に熱中する事が美徳とされていた。

 

しかし、その頃、
日本のアメリカへの凄まじい輸出超過に業を煮やしたアメリカ政府が、
「日本人は働き過ぎである!
アメリカの労働者は人間的な待遇を受けているので、
このままでは競争にならない。
日本人も非人間的な働き過ぎをやめて、休暇をもっと取るべきだ!
労働条件を改めないと、日本製品に重い関税をかけるぞ!」と、
日本政府に強力な圧力をかけてきた。

 

その圧力に日本政府は企業に対して、
まず週休二日の制度を徹底し、有給休暇の充実など、
年間の休暇日数を大幅に増やすよう、法律を整備した。
祝日が急激に増えたのもその頃のころ。
企業戦士の最前線にいた団塊の世代は、急に増えた休暇に戸惑ったものであった。

 

「我らがアメリカ人は休暇をしっかり取る。
それが人間的なのである。
なのに、自分たち以上に仕事をする日本人が大きな競争力を持って、
自分たちのマーケットを侵しているのはけしからん。
日本人ももっと休暇をたくさん取って、製造コストを上げ、輸出競争力を下げろ。
もっと休暇を取って、たくさんお金を使い、つまり内需を拡大して、
輸出で大きく成長した経済を、輸出を減らし内需拡大型の成長にしろ。
そうすれば、お互いうまくやっていけるんだから。」
というアメリカの主張が通ったわけだ。

 

 

しかし、そんなことは別にして、
きちんと休暇を取ることは正しい。
仕事をしていることでストレスをあまり感じない私みたいな人間は別にしても、
休暇を取らずに仕事を続けることは大きなストレスになる。
だから、「休暇」は絶対に必要だ。

 

特に、現代はあまりにも刺激が多い。
テレビが家庭の中に完全に定着し大きな刺激が日常的に流され、
常に商品を買うように促すCMという大きな刺激を消費者に与え続けている。
加えてインターネットの普及で、なおさら物を買わせるための刺激が強くなっている。
消費者それぞれが持っている購買力を越えて、買いたいという刺激を与えられ続け、
そのギャップによるストレスは、いよいよ大きくなっているのだ。
それに輪をかけているのが、「サラ金」「消費者金融」の普遍化だ。
昔は「高利貸し」と呼ばれていた業者が、
テレビCMという日常の中にのさばってきて、当たり前の存在となり
(バブル崩壊でCMが極端に少なくなったテレビ業界が、これらを受け入れた以後)
高利貸しに金を借りてでも消費に走る異常な状態になって、
なおさら、
購買力と買いたい欲求のギャップによるストレスが取り返しのつかない所まで来ている。

 

もちろんそんな追い詰められた状況にいる者はわずかであったにしろ、
情報の氾濫で大きな刺激が溢れ、
精神的な不安定が社会全体に広がりつつあることは事実であろう。
そんな時代、
リラックスし精神的な安定を促す「休暇」というものの必要性がより高くなっている。

 

 

しかしその上で、休暇を取るよりも仕事をしたい人間がいて、
それで充分に精神が安定していつつ、家庭を満たしつつ、
仕事の部分で大きく早く成長したいと、仕事に熱中している人間がいたとしても、
それは犯罪ではないだろう。
私は仕事にしか興味のない仕事バカではない。
仕事は大好きだが、
仕事のほかにも大好きなことはいっぱいある。

 

ただ、休暇をきちんと取ることが美徳とされている現代、
自分の仕事に対するスピード感と、仕事を共にする仲間のスピード感のズレに、
「待つ」というストレスが溜まって来る事も事実だ。

 

休暇をしっかりきちんと取ることは必要であり、正しい。
その上で、自分の「待つ」というストレスを解消するために、
自らも休暇をきちんと取る必要性に気がついてはいる。

 

先日、管理部長の池本さんから言われたことがある。
「社長、また自分が走るレースを始めてくださいよ。絶対その方がいいですよ。」と、
サーキットでのレースが、私の一番のストレス解消であり元気の素である。
池本部長は、私にストレスがたまってきていることを見抜いていたのだろう。

 

今日は、今月一日だけのきちんとした休暇であった。
しかし前々日に東京に行かねばと思う事情か出来たので、
昨日まで急遽東京に行くつもりでいた。
しかし考えた。
用件の先方は夫婦揃っての外国からの旅行中、
私の仕事での訪問は受けざるを得ない状況であるとしても、
それは我慢でしかないだろう。
今後のことも考えて、あえて東京行きは取りやめた。

 

ということで、今日は休暇。
ちょっとした公園に行った。
春も盛りになって色とりどりの花が咲いていて、楽しかったが、
くたびれた。
あ~休暇というものは疲れるなぁ。
どうせ体が疲れるのなら、やっぱりサーキットを一心不乱で走った方が、
健康的でいいなあ。真剣にそう思っている。
誰か付き合ってくれる人いませんか?

 

 

※今日行った公園で、

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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