谷 好通コラム

2006年02月17日(金曜日)

1347.多分5千円の朝食

朝7時13分発の新幹線で、東京から名古屋に向かっている。
日帰りのつもりの東京出張で、つい、東京に泊まってしまい、
朝早く起きて、名古屋に帰っているのだ。
こんなことは極めて珍しい。

 

昨日は東京での夕方までの仕事を終えて、夕食の約束をしていた。
相手は、中学校、高校の同級生で、
今は“大”企業の副社長と、その子会社の社長を兼務している人。
いわば成功者である。
最近ひょんなきっかけで仕事の関係が出来、
久しぶりに食事でもしようかということになって、待ち合わせをした。

 

場所は“銀座!”、
そのど真ん中にある“寿司の久兵衛”という有名な寿司屋である。
有名と言っても私はそのすし屋を知らなかったのだが、
タクシーに乗って、メールで伝えられたように
運転手さんに「銀座コンパル通りの“寿司の久兵衛”にお願いします。」と言ったら、
「ああ、あの高くて有名な寿司屋さんですね。」と答えた。
銀座のすし屋と聞いただけで、
一体どれくらい高いのであろうかと思ってしまうのに、
その中でも、「高くて有名」とは、
誘ってくれたのだから、友達は、多分奢ってくれるつもりなのだろうが、
一体いくらなんだろうとビビってしまう。

 

うまかった。
文句なしにうまかった。
酒を飲みながらなので、寿司ではなく肴。
これ以上はないであろう絶品のネタを、
絶妙の技で造って、控えめに出す。
今まで食べた肴で、一番うまい肴であった。
そう断言できる。

 

“寿司の久兵衛”は、入り口は探さなくては分からないほど控え目なのだが、
中は5階建てで、とても大きなすし屋さん。
滅多に御大の久兵衛さんにお会いすることは無いのだそうだが、
たまたま、目の前にカウンターに久兵衛さんがやってきて、
料理してくれた。
友達の言うには、これは珍しいことであり、ラッキーだという。
久兵衛さんは小柄で、温和な方であった。

 

久兵衛さんのカウンターでの表情を撮ろうと、
何十回もシャッターを押すのだが、
動きっぱなしで、久兵衛さんは全くじっとしていない。

 

 

さてさて、美味しい肴と寿司を腹いっぱいに食べて、
お勘定の時、
一体いくらなのか興味しんしんで、友達に聞いた。
「いくらだったの?」
[いゃっ、今日は安かったよ。]と、チラッとお勘定書きを覗いたら
5万8千円!
・・・・・・
前回来た時は、7万5千円であったと言い、
だから今回は安かったと言う。
・・・・・・・
・・・・
絶句である。

 

二人で5万8千円の食事なんて、生まれて初めて食べた。
そりゃあ、うまいはずである。

 

さすが、日本最高の土地「銀座」である。
値段の桁が一つ違う。

 

最後に久兵衛さんと一緒に記念写真。
私の口元がヘンなのは、
「ハイ、チーズ」の代わりに
「はーい、“すしはウニ”って言ってください。」と言われて、
素直に「ウニ~」と言っている口なのである。

 

 

次に連れて行ってくれたのが“クラブ”
“銀座のクラブ”である。

 

10年ほど前に、大きな会社の偉い人に2度ほど
銀座のクラブに連れて行ってもらったことはあるが、
大昔のことであり、かなり酒を飲んだ後であったのでほとんど覚えていない。

 

“銀座のクラブ”は、初めてのようなもの。
さすが、さすがで、ベッピンさんばかりのクラブ(名前は忘れてしまった。)
大きなフロアーに日本国中のベッピンさんを集めているような
上品かつ上等なクラブであった。
お客さんも多い。
こんな風景を見ていると日本の景気は間違いなく回復しているのだと感じる。

 

しかし、私には場違いであった。
あの久兵衛さんの所で6万円近い値段であったのだから、
入れ替わり立ち代りベッピンさんがやってくるこの銀座のクラブ、
一体いくらなんだろうと、つい思ってしまうと、
体の芯が緊張しているようでリラックスできないのだ。
ドキドキである。

 

 

銀座のクラブの女性たちは、美しいだけでなく、
それぞれがマナーをよく身に付け、話題が豊富であり、
ものすごく勉強しているのであろうことが想像できた。

 

ここの勘定は聞きそびれてしまった。
が、多分、一人3万円、いや4万円、ひょっとしたら5万円以上だったかもしれない。

 

日帰りの予定で洗面道具も何も持っていなかったのだが、
銀座で2軒目に寄った頃、新幹線の最終電車が出て、
東京に泊まる事にした。
明日早く出れば何とかなる。

 

クラブの人にホテルの手配をお願いするが、
なかなかホテルが空いていない。
その内に、係りの人が私に耳打ちする。
「ちょっとお値段が高い所でもいいですか?」 答えはもちろん「いいですよ。」
何はともあれ泊まるところがなくては何ともならない。

 

そして、探してくれたのが“汐留のコンラッドホテル”
一泊48,000円(!)だという。
一瞬、息が止まりそうになりながらも、
「ハイ、分かりました。ありがとうございました。」という。

 

全くとんでもない夜である。
一人29,000円のすし屋で、最上の肴を食いながら酒を飲んで、
一人、多分、30,000円以上であろう銀座のクラブで飲んで、
一泊48,000円のホテルに泊まる。
ひとコース、お一人様107,000円のフルコースである。
言ってみれば
私の人生の中で最もゴージャスな一晩である。
最上のすし屋さんと、銀座のクラブはこの友達が奢ってくれたが、
全部自分のお金であったら、多分、私は罪の意識にさいなまれて、
次の日、仕事が出来なかったかもしれない。

 

一泊48,000円のホテルの部屋。

 

 

廊下!

 

 

朝の新幹線の中で、「太巻き」を朝ごはんとして食べる。
昨夜の久兵衛さんで持たされたお土産の「太巻き」である。

 

 

ずっしりと重い。
ご飯の量でいえばどんぶり飯一杯以上であろう。
中身もギッシリ、

 

あと3切れを残して腹いっぱいになる。
満腹だ。
「もう、食えない。」

 

 

しかし、久兵衛さんでのあのお勘定書きを思い出せば、
この太巻きは、多分、5千円以上はしているはずだ。
残った3切れは少なくとも1千円以上はする。
そう思うと、残すのがいかにも勿体ない。

 

で、結局全部食べてしまった。

 

 

私の生まれて初めての銀座フルコース。
そこにいる私は、とても場違いで、とてもいたたまれなかったのでした。

 

Tさん、とってもいい経験をさせてもらいました。
また、大変に御馳走になってしまい、ありがとうございました。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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