谷 好通コラム

2006年01月14日(土曜日)

1325.北京で遭難の二人

遭難と言っても私のことではない。
池本部長と酒部部長のことである。
二人は別々に北京の空港で遭難したようなのだ。

 

私は昨日、上海でチケット紛失で失敗したが、
何とか日本に帰ってきている。
しかし彼らは、昨日、私と別れて北京に飛んだのだった。

 

二人は、北京で一仕事してから、
今日の最終の飛行機で日本に帰ってくるはずだったのが、
先程、酒部君から国際電話が入った。
「まだ、北京にいます。」とのこと。

 

彼の話から想像すると、

 

上海に帰る頼さんは国内線、彼ら二人は国際線と北京空港内で別れたあと、
酒部君が出国のためのチェックインカウンターに入るところで気が付いた。
「パスポートがない!」
服のポケットを探しても、荷物の中を探しても、
命の次に大切なパスポートがない。
万事休す。

 

私のようにチケットを失くしても、再購入すれば何とかなるが、
パスポートは、海外旅行においてまさに命綱である。
カウンターでのチェックインすら出来ない。
もちろん、絶対に出国も出来ない。
ホテルに泊まることすら出来ない。

 

飛行機の時刻が迫ってきたので、
「とりあえず池本さんだけでも日本に帰ってください。私は何とかします。」
と、池本さんを出国のカウンターに送った。

 

さぁ、これからどうするか。
じっくりと思い出してみると、
前日のホテルでのチェックインの際、頼さんにパスポートを渡したまま、
返してもらうのを忘れた事に気が付いた。
酒部君のパスポートは頼さんが持っている!

 

急いで頼さんに電話を掛けてみる。
酒部君は海外でも使える自動ローミングのボーダフォンを持っているのだ。
しかし、頼さんの電話が出ない。
そうだ、そういえば頼さんの携帯電話の電源がもうすぐ切れそうだと言っていた。
いよいよ万事休す。

 

そのころ、一方の池本さんの方も途方にくれていた。
出国のカウンターに行ってパスポートチケットを出すと、
カウンターのスタッフが何やら中国語で言って、チケットを受け取らないのだ。
中国語が全く解らない池本さんは、
カウンターが違ったのかと思って、他のカウンターに行って見るが、
ここではない、向こうのカウンターだ。というような身ぶりでチケットを突き返される。
あちらこちらのカウンターに行っても同じ事でラチが明かない。
結局、解ったのは、
「この飛行機は、今日は欠航になっているからチェックインできない。」ということ。

 

そういえば、北京は朝から濃い霧が出ていて、
空港も深い霧に沈んでいた。
どうも、北京空港全体が閉鎖状態であったらしい。

 

池本さんは途方にくれた。
中国語も英語もさっぱり解らないで、ひとり空港の中に取り残されてしまったのだ。
しかも、中国で使える携帯電話も持っていない。
しょうがないので、
カウンターの外に出た。
コンコースは飛行機に乗れない人たちでごった返している。

 

とりあえず頼りになるのは、
ポケットに入っている前夜のホテルの領収書だ。
その領収書にホテルの住所が書いてあるので、
言葉が解らないでも、タクシーに乗ってその住所を運転手に見せれば、
ホテルまでは行ける。

 

ホテルまで何とか帰れば、
先に北京に来ていて研修をしているリリアンとユイさんが夕方帰ってくるのを待って、
日本語と中国を喋れるリリアンに何とかしてもらえると考えた。

 

全く同じことを考えた酒部君。
とりあえずホテルに帰って、領事館に行けばパスポートを再発行してもらえる。
そう考えた彼は、タクシー乗り場に向かった。

 

そして、
彼の言葉で言えば、
全く偶然に、たまたま、たまたま、池本さんとばったり会った。

 

「一人」というのは不安なものだ。
特に言葉の通じない外国で一人になった時ほど不安なものはない。
そんな時に、ばったりと会った二人の喜びはどれほどのものであっただろう。

 

一方、上海への国内便カウンターに行った頼さんは、
やはり、自分の乗る予定だった飛行機が欠航となり、
しかも、自分のポケットに酒部君のパスポートがある事に気が付いた頼さんは、
大勢の人でごった返すコンコースの中を、
必死に酒部くんたちを探していた。

 

そして、たまたま、全く偶然かつ奇跡的に、酒部君と池本さんにばったりと会った。

 

一時的にではあるが、
北京に空港の中に、一人一人になって遭難した酒部君と池本さんは、
頼さんに救助されたのだった。

 

結局、彼ら全員、今日は北京にもう一泊する事になったのだが、
明日の北京⇒名古屋の便が当日の旅客でいっぱいで、
乗れるかどうか分からないということで、
明日の上海便に乗り、夕方、上海から中部空港に帰ってくる事になったそうだ。

 

私も大連の空港で霧が出て、
空港に長い時間缶詰になった挙句、翌日の便で帰って来たことがあった。
その時は一体どうなるのやら不安であったが、
今回の二人については、お互いに一人になって、
しかも、酒部くんは自分を証明するパスポートがない状態であったのだ。
その不安と心細さは容易に想像できる。
まさにこれは遭難である。

 

大変です。ご苦労様でした。

 

・・・・
そういえば、私が大連空港で霧にまかれた時も、頼さんがいた。
・・
頼さんは、「霧男」か?

 

予定外の北京一泊を彼らはどのように過ごしているのだろうか。
何も悪い事を“していなければ”いいのだが。
いや、間違えた。
何も悪い事が“なければ”いいのだが。である。

 

三日前、名古屋から元気に出発した時の池本部長と酒部部長。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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