谷 好通コラム

2005年09月30日(金曜日)

1256.「差不多」の得と損

中国語で「差不多」という言葉があって、
「サ(ツャ)ープートゥ」と聞こえる。
日本語に直訳すると「差は、多くない(不)」と書く。

 

「似たようなものだ。」とか「同じようなものだ。」とか「大体いっしょだ。」
というような意味で、

 

「レストランAとレストランBは、どっちがおいしいだろう?」
「差不多・・(似たようなものさ)」

 

「なぜここに合繊を使うんだ。ここはシルクだと言ったでしょ。」
「差不多・・(見てもそんなに変わらないよ。)」

 

「ほらっ、サンプルと君の作った物では、大きさが2mm違うだろ。」
「差不多・・(同じようなものさ)」

 

こんな感じで「差不多」という言葉は使われる。

 

中国で物を造らせると、常にこの「差不多」に悩まされる。
たとえば、
10cmの長さの物を造るように要求すると、
たいていの物が9.8~9.9cmしかない。
たしかに誤差の許容範囲を±2%と設定してあれば、この両方ともが合格なのだが、
10cmの物はほとんどないし、10.1~10.2cmのものはまったく無い。
この場合、
材料を節約するため、故意に短くしているのは明白だ。
それでも一応規定内なので、合格とするしかないが、
「差不多」の一言で片付けられると
何か割り切れない。
そこで、こちらも考えて
「これからは10.2cmの製品を作ってくれ」と言う。
こうすれば間違いなく10cmの長さが確保できるようになるはずだ。
すると、当然、工場の方は
「長くなったのだから、その分値段を上げて欲しい」と言う。
そこで、私は、わが意を得たりと「差不多っ!」と言い返すのだ。
肩が凝ってくるような話である。

 

ホンのちょっとした誤魔化しとかズルをすることが、
利口なことと思っているとしたら、
それはとんでもないことで、
しかも、「差不多」と済まして、反省のかけらも持たないとしたら、
大きく信用を失ってしまい、
その人との付き合いが、
いつも誤魔化されるのではないかという常に警戒心を持ったものになってしまう。

 

そんなことで、
ホンのちょっとした誤魔化しで得たホンのちょっとの“得”が、
その人に対して一切のチャンスを塞いでしまう事になる。

 

ずるい人間は、ホンのちょっとの得と、
実は、大きな損を引き換えにしている事に気が付かない。
そこが限界となっていることにも気が着かない。
小さなゴマカシとズルで、小さな得を喜んでいる者とは、いわゆる小物なのだ。
大きな将来など有りはしない。

 

「差不多」が中国の言葉なので、つい中国のことで書いてしまったが、
こんなことは日本でもどこでもよくあることで、
ずるい人はちょっとした隙に付け込んで来るものだ。

 

目先の小さな利益のために、
長い間かかかってやっと出来上がった信用が、
一瞬のうちに吹き飛ぶことがある

 

目線を大きく長く持たなくてはならない。
信頼と信用は、作り上げるには長い時間と大きな努力が必要だが、
たった一つの些細な嘘とゴマカシで、一瞬のうちに失うことになる。

 

自戒せねばならない。

 

前回アメリカに行った時、
ある工場を訪問した。
その工場の責任者が「カンバン」と「カイゼン」という言葉を何度も使った。
米国の工場でも、効率を追求すると共に完全な品質を求めてトヨタ式管理手法が
見事に取り入れられていたのだ。
「差不多」とは無縁の世界である。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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