谷 好通コラム

2005年06月29日(水曜日)

1202.2乗正比例の法則

昨日、札幌の居酒屋さんでいっぱい飲みながら、
M,sの西岡社長と話をした。

 

西岡さんの年齢は聞いたことがないが、(聞いたけど忘れた?)
私よりまだ、かなり若いことはたしかだ。

 

サラリーマン時代、8回も職を変わったと言っていた。
職歴の中で、一番短かったのが3日(?)
その会社は、何もしなくてもよく、どこに居てもよく、超楽ちんな仕事であったと言う。
だから、すぐに嫌になったと言っていた。

 

私にも似たような経験がある。
高校生の時のアルバイトで、
大きな製鉄所の資材置き場での仕事だった。
馬鹿でかいクレーンが上の方を動いていて、
私は、その下で自分のところにクレーンが来たら鋼材にクレーンを引っ掛ける係。
下の資材置き場で、
じっと、クレーンがやってくるのを待つ。
じっと、待つ
一日目は、
クレーンが3回やってきた。
二日目は、クレーンは2回やってきた。
一度クレーンがやってくると、鋼材にクレーンの爪を引っ掛けるのに一分間。
一日、二分間とか三分間の仕事である。
後はじっと待つだけ。

 

私はこのアルバイトを二日でやめた。
何もしなくてもいいことの辛さ。
何もすることがないことの辛さ。
(これが監獄の辛さなのかもしれない。)
だから、西岡さんの三日で楽な会社を辞めた話は、すごくよく理解できた。

 

西岡さんのM,sファクトリーは、
札幌で八年間、カーディテーリングの商売をしている。
10万円以上もするボディーコーティングとか、
鏡面研磨による微細な傷消しを完璧に仕上げてからのコーティングは、
まさに芸術品並みだ
それに、ルームクリーニング。
鈑金、デントリペア、フロントガラスの交換、ウィンドフィルム等など、
カーディテーリングのビジネス全般を手がけている。

 

八年前、最初は、デントリペアという特殊な技術を持って始められたそうだ。

 

デントリペアとは、車のボディのちょっとした凹み、
それもペイントが剥げたり割れたりしていない程度の凹みを、
鈑金をせずに、棒のような特殊な工具を使い
“てこ”の原理を利用して、直してしまう技術だ。

 

このデントリペアで直せる凹みもあれば、直せない場合もある。
直せる場合は、鈑金もしなければ塗装もし直さなくても修理できるので、
修理した痕跡が残らず、大変便利なものであるが、
直す前に、その凹みがデントで直せるかどうかを見極めなければならない。
デントの技術自体も難しいが、
その辺のところが特に難しくて、
昔は北海道内に50人以上もいたデント技術者も、
今では五人いるかどうかまでに減ってしまったそうだ。

 

西岡さんが始めた当時、
このデントリペアも一般の世の中には知られていなくて、苦労をしたそうだ。
そこで彼は、あちこちのディーラーのサービスの責任者に話をしに行って、
その責任者の自家用車についている凹みを、
タダで、どんどん直して見せて回った。
最初の数ヶ月はタダの仕事ばかりであったと言う。

 

その内に、デントリペアのメリットを
たくさんの人にわかってもらえるようになってきて、
注文が入ってくるようになって、商売になり出してきて、今の店の基礎になった。

 

先に言ったように、
デントで直る凹みもあれば、直らない凹みもある。
西岡さんも最初はなかなかその差がわからず、
せっかく直しに行っても、結局直らず、無駄骨になったこともあったらしい。
でも、そんな時でも、
完全に直らなかったら、絶対にお金はもらわなかったと言う。

 

せっかく出かけていって、
これなら直ると思って、デントで修理を始め、
半分以上まで凹みが出ても、その後がどうしても出ない。
どんどん時間が経って、くたくたに疲れた挙句、どうしても完全には直らない。
そんな時でも、一銭もお金をもらわなかったそうだ。
かえって「直せなくて申し訳ありませんでした」と詫びた。
そんな時の西岡さんの情けない気持ちは、よく分るような気がする。

 

しかし、多くの同業者が、そんな時、少しでもお金が欲しいと、
わずかのお金でも請求してしまった。
あるいは、
修理の車を見に行って、
「あっ、これはデントでは治せません。でも、言われて見に来たんですから、
少しですが、請求させてもらいます。」
と、お金を請求した人もいたという。
その気持ちも分る。

 

しかし、そんなデントの業者に仕事を依頼した工場の人は、頭にきた。
その人の目的は、「車の凹みが治ること」であり、
その業者が、如何に苦労したかどうかは知らぬが、結局、デントで直らなかったら、
他の鈑金の業者に頼み直さなくてはならないのだ。

 

デントで半分まで直ったにしても、
ましてや、デントの業者が来たかどうかは関係なく、
鈑金と塗装の作業料は同じだけかかる。
デントの業者を呼んだ時間だけ、かえって損をしたぐらいだ。

 

そんなデント業者から“お金を請求”されたのでは、
「デントはダメだ。直すことが出来もしないのに、
かえって、こちらに迷惑をかけたぐらいなのに、ずうずうしく金を請求する。
あんなのには、もう絶対仕事を出さない。」と、
デントそのものに“ダメ”が打たれたこともあったという。

 

当然、そのデント業者には仕事は回ってこない。
仕事にあぶれたその業者は、
「デントなんてダメだ。あれは商売になんかならないよ。騙された。」と言って、
廃業して行ったのだろう。

 

そんな話を聞くとデントリペアって、やっぱりダメなのかと思ってしまうが、
西岡さんは、
「直らなかったら、絶対にお金をもらわない。」を徹底して、
デントリペアの仕事をやり続けたし、
たくさん仕事をしていると、目が肥えて、
デントで直る凹みなのかどうか、一発で解る様になって、
空振りもうんと減ったのだそうだ。

 

そして、今では、
デントリペアで造った信用を足がかりに、
鏡面研磨の技術を身に付け、
コーティングの技術も高め。
本格的な鈑金塗装も手がけ、ガラスに関わる商品、
室内に関わる商品にも手を広げ、
かなり大きな商売に進化させ、立派に経営をしている。

 

目先の小さな利益を欲しがるより、
先を見て、大きな信用という大きな利益の素を作った方が、
必ず、大きなビジネスに成長する。

 

M,sさんの鏡面磨きとボディーコーティングは、
恐ろしいぐらいまでに妥協をしない。
絶対的な自信とプライドを持って、
一台10万円以上ものコーティングを、毎日びっしりと予定に入れて、
それでも、順番待ちのお客様が随分いるという。
鈑金だって、
工場の中からはみ出さんばかりに直してもらう順番を待っている。

 

コマーシャルはほとんどしない。
ここの仕事に対して満足しきった人が、
口コミで、この店の新しいお客様を作り出している。
まったく大したものである。

 

最初は、それほどまでとは気が着かなかったが、
何度も会ってたくさん話を聞くほど、
この西岡さんが言いたいこととは別に、本当の凄さが見えてくるのだ。

 

昨日いっぱい話をした。そして面白い話がいくつもあった。

 

「値段は絶対に下げないし、おまけもしない。」
「値段を下げるぐらいなら、その仕事はやらない方がいい。遊んでいた方がいい。」

 

「お客様とは、とにかくじっくりと話す。
特に高いコーティングのお客様は、
とにかく一通り話しを聞いて上げないといけない。
お客様の自分の車に対する愛情を、
この工場が理解し、共有してくれる所であると思わなくては磨かせてはくれない。
高いコーティングは、車に対する愛情を一緒に理解してあげることですよ。」

 

「いい仕事をして上げると、ピカピカになった自分の車の自慢をみんなにする。
それで、どこで磨いたらこんなになったのかも必ず自慢する。こっちがお願いしなくてもね。」

 

「ガラスの交換は、割れた時だけという受身の仕事じゃないですか、
だから、提案の販売なんて出来ないのです。
この間、替えガラスのメーカーの社長に、
『替えたくなるような楽しい替えガラスを作ると、ものすごく売れますよ。
たとえば、・・・・・○×■・・・・とかね。』」

 

「鈑金は、ある意味、常連客に支えられているのです。
よく、そんなにしょっちゅうぶつけるなぁ~、と思うぐらい同じ人が
何度も持って来るんです。鈑金に。
この間は、うちの代車までぶつけられちゃいました。
もちろん、お金もらって直しましたけどね。(笑い)」

 

 

 

今月の売上げが欲しくて、
今週の売上げが欲しくて、
今日の売上げが欲しくて、
店の宝物である商品の値段を安くしてみたり、
お客様に愛されている商品に“余り物”をオマケに付けてみたり、
店に大きな将来を生むはずの大切な商品を、広告のテクニックで売って、
ビジネスの成長の足を引っ張るようなことは、
やっちゃいけない。

 

商品の値段、特に、我々のようなサービス商品の値段を、
数を売りたいと思って、無用に値段を下げると、
必ず商品が荒れる。
商品が荒れれば、その商品はやがて風化し、
その店が崩壊するのは、日が暮れるがごとく必然となる。

 

同じように、
売ろう、売ろうと思って、
買って欲しい、買って欲しいと思って
チラシとか、ノボリとか、看板とかで、「叫んだり」「怒鳴ったり」して、
客の呼び込みをやると、
大切なお客様は、離れていく。

 

欲しい、欲しい、と思っていると、
肝心なことが見えなくなってしまう。
“与えた”ものの量と質に、“得る”ものの量と質は準ずるものであって、
その関係は、二乗の正比例の関係にある。
実に簡単な方程式である。これをつい忘れてしまうのだな。

 

 

昨日の札幌は、最高でも20度を越さない寒い日であった。
今朝、東京に飛んで一つ仕事をしたのだが、30度以上の猛暑であった。
体の体温調整の機能がバラバラになりそうで、
とうとう、風邪が治ってしまった。(^・^)

 

※東京からの帰りの新幹線から、多分「大井川」の辺であると思うが。

 

 

このところ忘れ物の嵐である。
今日、東京から帰ってくる時点で、
セカンドバックと、(また)手帳と、携帯電話がない。
持っているのは、着替えとパソコンだけのような状態で、
私は、どうにかなってしまったのか。

 

誰か助けてくださ~~~~い。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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