谷 好通コラム

2005年04月03日(日曜日)

1148.中国的ビジネス1

私は共産主義国家のことをよく知っているわけではない。
これから書くことは、あくまでも私の中国での経験からの想像である事を断っておく。

 

私が日本において考えるビジネス的成功とは、
より多くのカスタマーから、
自分たちが提供する商品と、店舗と、サービスが、支持され、
より高い付加価値を持つことによって
より多くの購買を得、
より多くの収益・報酬を得ること。
又、その収益をもってして
もっと高い付加価値をもつ商品の開発、
より多くのカスタマーからの支持を受けるための社員教育、
サービスの質の向上などを作り上げるために、
先行投資を投ずる。
このことによって、ビジネスとしてより高い競争力を蓄え、
カスタマーからの支持、購買をより強固なものとし、
競合者との差別化を果たす。
その連続によって、企業としての収益力と競争力の向上と安定を得る。
結果として、
社員スタッフ、経営者、投資者、金融関係者、納入業者などなど
そのビジネスに関わるすべての会社と人の収益と幸せを実現する。

 

つまり、ビジネスとは、カスタマー・顧客からの支持が、すべての基盤となっている。
資本主義の自由経済国家の元においては、
「買う側」の支持を得ることが、ビジネスの成功の基本になっているのだ。

 

そして、買う側の支持を得るための“競争”が、
ある一定の者を勝たせるという意思を持った権力的規制が無いという意味での
ほぼ公平な環境の中で、
つまり、“誰でも勝てる可能性”がある環境の中で、
すべての者が“自由競争”を繰り広げ、
あらゆる商品・サービスの質の向上が成し遂げられて、
また、激烈なコスト削減競争の末に、
安価かつ高品質な商品・サービスが作り上げられ、強い競争力が得られた。

 

 

それに対して、
中央集権・計画経済の国家においては、
中央に集結されたありとあらゆる権力を持ったごく一部の指導者によって、
指導、規制され、
そして、人民にとっては指導され、規定されたように行動し、生きることが、
許され、求められ、強制されることである。
そこには競争の原理はなく、
よって活性化された経済は育ちにくい。
だいいち、
もともと人の能力の差などたかが知れたものであり、
最高の能力を持ったものと、凡人との差など微々たるものなのだ。
ましてや、権力機構の中の指導者とは権力闘争に勝ったという事であって、
指導者と呼ばれる人が、
多くの人の運命を決定づけるような、そんな絶対的な能力があるとは限らない。
ましてや、そんな権利があるわけではない。

 

一部の指導者によって決められ、指導された経済が、
自由競争によって活性化された経済に勝てる要素は、本来的に無く、
グローバル化している世界経済の中で孤立し、当然のように停滞する。

北朝鮮のように独裁が徹底している国家においては、徹底した情報遮断によって、
その事実を人民が知ることを防ぎ、
その国家としての不幸をごまかし続けているが、

 

中国は、四人組の打倒というある意味民主的な勝利を持って集団指導性が敷かれ、
幸いにも専制的な独裁からは開放されていた。

 

その頃、インターネットの発達によって情報の国境線が消え失せていた。
新聞、ラジオ、テレビによる情報は、
権力者にとって、その情報内容を選別し、
自分に有利に情報操作を行なうことによって、
むしろプロパガンダとして悪用することが出来るが
インターネットは、電話線が国外と通じている限り、
無限の情報が流入することを防ぐことが出来ず、ましてや選別する事など出来ない。
無制限の情報が、無規制に、人民の中に広がることを意味する。
韓国の民主化がインターネットの普及によって一挙に進んだことは有名である。
それが嫌なら、北朝鮮のように一般の国際電話を一切遮断することだ。
それは国家としての絶対的な孤立を意味する。
国家として絶対的に孤立することは、経済の孤立を意味し、
経済の絶望的な後退を意味する。

 

十億人を大きく超す人民を生かして行かなければならない中国にとって、
経済の発達はどうしても必要なことであり、
今においては、絶対的な孤立は選択出来ない。
よって、インターネットによる情報を遮断することはなかった。
つまり賢明にも、すべての情報を受け入れることにしたのだ。

 

指導者・権力者たちの運命は、
計画経済の下に人民を規制し続け、
無制限の情報に目覚めた人民によって打倒されるか、
自らが積極的に自由経済への開放を実行し、
自由経済の枠組みの上で、それをコントロールをする体制に移行し、
権力機構そのものの存続を選択するか、
そのいずれかであると考えたと想像する。

 

そして、中国は後者を選択し、
?小平の指導の下、自由経済への開放が段階的かつ急激に行なわれた。
そして、
国民のレベルでは自由経済の生活となり、
共産党という権力機構は、ほぼそのまま生き残った。

 

現在の中国とは
自由経済と共産党支配が共存している世界で唯一の国家であり、
歴史的にも初めての国家であるという事が出来る。

 

実際に、中国でビシネス活動をしていると、
資本主義の元での自由経済の国と何も違いないような錯覚に陥る。
台湾とか、韓国でビジネスの話をしているのと
感覚的には何ら変わりないのだ。

 

中国の人は誰も金儲けに熱心であり、
金持ちになることに大きな執着心を持っている。
世界の華僑のように、ビジネスの話には非常に熱心なのだ。

 

しかし、現実には、
中国における経済活動は厳しく規制されていて、
すべてのビジネスにおいて、政府の許可が必要であり、
許可を得るためにコネが付きまとう。
コネは何にでも付きまとうようだ。

 

私たちの経済活動はもっと規制されている。
日本の会社としての、
中国からの商品輸入の商談はOK。
中国への商品輸出のための商品紹介は一部OK、一部NG。
中国国内での商品販売、サービス販売は絶対にNG。

 

中国の会社(個人はNG)との合弁会社としての現地法人を作れば、
相手の持っている営業許可内容の範囲内で経済活動は出来る。
外国資本が独自で現地法人を作ることは、去年12月に一応出来るようになったが、
とても難しいし、コネも必要であるらしいし、
莫大なお金がいるし、恐ろしく時間がかかる。

 

現地法人を作るには、大きな資本を中国に持ち込むことが必要である。
反面、現地法人が大変な努力の末、蓄積した利益は、
中国から持ち出すことは法的には出来るが、手続きが難しく、規制も多く、
事実上、定時的にその多くを持ち出すことは難しいと言っていい。

 

中国の経済は、一見、自由経済であるように見えるし、実際にそう感じるが、
実際にはその隅々にまで政府の許可という規制が張り巡らされている。
かすみ網のように。

 

その細部に渡る許可制という規制は、
本来、政府による整然とした経済活動の発達を目的とし、
正常な経済活動のコントロールの意味を持っているのだが、
他方、それがコネという個人的な理由によって与えられた場合、
利権というお金の素となる。

 

政府は、それが利権として個人的な利益を生むものとして流通することを、
「腐敗」と呼んで、それを潰すことに躍起になっているが、
撲滅することはきわめて困難と言わざるを得ない。
それほど経済の細部に至るまでコネが幅を効かしているように感じる。

 

かつての中国のように、
元々自由競争が無かった世界においては、
利益を生む最も早道は利権を得ることであって、
カスタマーの支持を得ることを努力することではなかった。
それが経済活動の活性化を妨げていたのだが、
カスタマーの支持を得る努力をするよりも、利権を得る方が即効効果があった。

 

その社会が、
自由経済体制への開放があった後でも、
自由競争による商品・サービスの品質の向上、コストダウンの努力などという、
正常な経済の進化、競争力のアップという
自由社会の発想に至った人はごくわずかであり、一般的ではなかった。

 

 

しかし、そのごくわずかな人たちには、
自由経済の中での本来の力を発揮して、
カスタマーたちの支持を正常に得て、圧倒的な成功を収めている人もいる。
あるいは、自由社会の人たちの忍耐強い指導に、
品質の向上、サービスの向上、コストダウンの努力などが、
自由競争の社会にとって本物の大きな力を持っていることを学んだ人もいる。

 

あるいは、中国の指導者の中の、優秀な利権などに全く興味ない人たちによって、
本当の競争力を作り出し始めた企業もある。

 

しかしそれでも、
多くの人の発想は、「利益は利権の中にある」というものであり、
カスタマーの支持にその努力を向けず、利権を漁ることに夢中な人もいる。

 

KeePreとか快洗隊を紹介しても、
その商品・ビジネスが良いものであるかどうかなど全く興味が無く、
何はともあれ「総代理店になりたい。」とすぐに口に出す人が多い。
私はそんな人を信用しない。
ただ単に総代理店という“権利”が欲しいだけの人に、
中国におけるKeePreと快洗隊を委ねることは絶対にしたくは無いのだ。

 

上海の車聖さんも、頼さんも、広州の成大さんも、昆明の謝さんも、
KeePreを実際に使い、その良さを十分に知った上で、
「取り扱いたい。」と言い、
車聖さんも、頼さんも、自分の資本だけで「快洗隊」を作ってしまった上で、
快洗隊を中国に広げたいと言う。

 

信頼できる人たちであると思っている。

 

その観点から、
では、どうすれば中国において、私達の新しい洗車事業が成功するのか、
考えてみたい。

 

 

※一昨日のうちに全部書いてしまうつもりでしたが、文章の内容が重くて、
なかなかはかどらず、3日かかって、やっと前提の部分が書けました。
ひょっとしたら、この後も明日中に書けるかどうか、ちょっと心配です。

 

※昆明での謝さんとみんな。

 

 

結婚したばかりの謝さん夫妻はまだベタベタです。

 

ページのトップへ ページのトップへ

  • 最近の記事

  • プロフィール

    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

  • カレンダー

    2024年3月
     12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
    31  
  • リンク集

  • 過去の記事

  • RSS1.0

    [Login]

    (C) KeePer Giken. All rights reserved.