谷 好通コラム

2004年10月16日(土曜日)

1041.30年前の飛行機

今日(16日)から中国の大連に行く。
書き始めた今はその飛行機の中。
昼過ぎに大連について、一泊し、明日の朝8時の飛行機に乗って帰る。
強行軍だが大切な仕事があるので、どうしても行かねばならない。

 

朝、名古屋空港に来たとき、空が晴れ上がっていて
雲が大変きれいに見えた。
この国際線の空港ビルは、ほんの5.6年前に新築されたものだが、
来年早々中部国際空港が開港するので、
わずか数年でお払い箱になる。アホくさいような超・超・無駄である。

 

 

名古屋⇒大連の直行便があって、
中国の航空会社「中国南方航空」が就航している。

 

中国によく行く人に話すれば、「えっ南方航空で行くの?ひぇ~~怖い。」となる。
南方航空は、それほど評判は良くない。
中国での国内線では何度か乗ったが、国際線としては初めてである。
南方航空は飛行機が古いのだ。
今回乗ったのも、「MD82」となっているが、実態は「DC-9-40」。
第2世代の飛行機である。

 

今現在作られているジェット旅客機は、
第4世代から第5世代への境目ぐらいの飛行機である。
たとえば、ジャンボ並みの旅客数を乗せながら、2発エンジンのボーイング777。
もうすぐ出てくる総2階建てのエアバスA-380などが第5世代の旅客機である。
第2世代の飛行機といえば30年以上は経っており、
現役で飛んでいる飛行機としては最も古い機体となる。

 

(以降しばらく、飛行機に興味のない人には、とてもつまらない話になる。
ドカンと100行ぐらい飛ばして読んでいただければ結構です。)

 

第一世代ジェット旅客機が
ジェット旅客機の草分けで、
ボーイングB707、ダグラスDC-8など
ジェットエンジンが4発の長距離の旅客機が花形であった。
50年近く昔の話である。
ボーイングとダグラスがジェット旅客機創世記の双璧であった。

 

第2世代ジェット旅客機は
ボーイングは第一世代のB707のボディを短くして、
搭載エンジンを減らし、短距離かつ小型化した飛行機を作った。
エンジン3発の「B727」、T字尾翼がスマートで人気の機種であった。
エンジン2発の「B737」、ずんぐりとした機体で後に超ベストセラー機となる。

 

一方ダグラスは、ボディを新設計とし
エンジン2発を尾部に装着した「ダグラスDC-9」を作った。
新設計だけあって優れた性能と静粛性を誇ったが、
既存の機体を改造したB737に価格的な競争力でいくらか遅れを取り、
セールス面においてはB737に苦戦したが、主流の一機であったことは間違いない。

 

ヨーロッパ勢も何機か開発したが主流にはならなかった。
30年以上前のこと。

 

第3世代はにぎやかである。
ボーイングは、
超大型貨物機を改造して、
400人以上を乗せる超大型旅客機B747(通称ジャンボ)を作る。
この機から「高バイパス比ターボファンジェットエンジン」が採用される。
このジェットエンジンは、高出力、高燃費、静粛性に優れ、今に至っても主流である。
今現在世界最大であり、
世界でもっともビジネスとして成功した傑作機である。

 

ダグラスは、
「高バイパス比ターボファンジェットエンジン」を3発搭載して
ワイドボディー機(通路2列)
300人クラスの「DC-10」を作る。
一時日本航空の主力機となった。

 

新規参入のロッキードが、
同じく3発のエンジンで「Lo-1011トライスター」を作る。
新参のロッキードは、まともなセールスでは対抗できなかったのか
例の、田中角栄を首相の座から引き摺り下ろした汚職事件をおこす。
あのロッキードの機体である。
稀に見る名機であったが、セールスに破れた形で、
ロッキードは、たった1機種開発しただけで旅客機製造から撤退してしまった。

 

一方ヨーロッパ勢は、
機体が大型化し、コンピューター化され、開発費が大きく膨らむ傾向につれ
各国の何社かがそれぞれ機体を開発することをあきらめ、
合同して「アエバスインダストリー社」を作り、
大型旅客機がアメリカのメーカーに独占されるのに対抗する。
そこで作られたのが
「エアバスA-300」
ワイドボディーだが、エンジンが2発であり、
他の第3世代旅客機に比べると少し小ぶりである。
日本では日本エアシステム・JASが採用した。

 

そして、第4世代、今世界中を飛んでいる現役主力機の登場である。
ボーイングは、
B-747とB737・B727の間を埋める機体として、
乗客数200人台後半の機体を開発した。
短・中距離用として、
2発のエンジン、2列通路のセミワイドボディーの「B-767」
(全日空の主力機である。)
長距離用として、
767と同様のエンジン2発、1列通路のナローボディ機「B-757」の2機種である。
この2機種は、ボディの太さが違うだけで共通している部分が多く、
開発コストが大幅に削減されている。

 

この2機種の開発と同時に、
第2世代機のB-737のエンジンを
「高バイパス比ターボファンジェットエンジン」に換装して、
コンピューターを高度化し、近代化に成功した。
過去の機体をほとんどそのまま流用、エンジンの効率化と、制御系の近代化により、
最新鋭機の性能を持ったB-737は、コストの低減に成功し
廉価な最新鋭機として空前の大ヒット機となった。

 

世界一の大型機B-747も、
エンジンを強化、コンピューターを高度化し、
B-747-400シリーズとして成功している。

 

一方、ダグラスは
セールスの不振により事実上倒産、
マグダネル社に吸収され、マグダネルダグラス社として再出発する。
それまで機種を「DC- 」で表記していたのを、
これを機に「MD- 」と表記するようになった。

 

まず、第2世代のDC-9に、
最新鋭の「高バイパス比ターボファンジェットエンジン」を換装、
コンピューターを近代化し「MD-90」としてデビューさせる。
と同時に今までの「DC-9-○」を「MD-81,82,87」と呼称するようになった。

 

どちらが先か後か忘れてしまったが、
同じように、第3世代の「DC-10」を近代化し、「MD-11」としてデビューさせる。
この機体は、今の旅客機の中で、その美しさにおいて最高の出来だと思っている。

 

ヨーロッパ勢のエアバスは、
第3世代のA-300を、「A-300-600」シリーズとして近代化した。
と同時に、ボディーを短くして航続距離を長くした「A-310」をデビューさせる。

 

一方、A-300のボディーをナロー化(細く)し、
最新鋭制御システムを搭載して短・中距離機「A-320」を開発した。
このA-320のボディーの長くし、エンジンを強化したのが「A-321」
逆にボディーを短くして積載量を減らした機体が「A-319」である。

 

実質上3社による第4世代の開発競争は、
ボーイングとエアバス社の一騎打ちの様相と成り、
その狭間に入ったマグダネルダグラス社は倒産、ボーイング社に吸収された。

 

エアバスは続いて、
A-300のボディーを大幅に伸ばして、
搭載旅客数を著しく増加された「A-330」と「A-340」をデビューさせる。
短・中距離型が、大型エンジン2発の「A-330」。
超・長距離として、世界一の航続距離を誇るエンジン4発の「A-340」。

 

それに続く形で
ボーイング社は、世界一の大パワーのエンジンを2発搭載し、
(このエンジンはB-737のボディよりも太い)
ジャンボB-747並みの搭載力を備える「B-777」を開発した。
この機体はデビュー早々大ヒット機と成り
あっという間に世界の主力機のひとつになった。

 

エアバスも黙ってはいない。
それまで、A-300のボディを長くしたり短くしたり、細くしたりで、
基本設計を継承して、開発コストを徹底的に下げてきたが、
ここに至って、まったく新しい機体を開発している。
総二階建ての「A-380」である。
ボーイングB-747ジャンボをはるかに凌駕する世界一の大型機となる。

 

世界の旅客機業界は、
いつまにやら、ボーイングvsエアバスの一騎打ちとなり、
もう他のメーカーが割り込む余地はまったくなくなった。
まさに2強時代である。

 

――――――――――――――――――

 

話はやっと戻る。
今日乗ったのは、「中国南方航空」
機体は「MD-82」、実は「DC-9」そのものである。
まったく近代化されている様子はない。
30年以上前の姿そのままであろう。
ジェットエンジンは低バイパス比のターボファンジェットで力は強くない。
だから、音はでかいのに、ゆっくりとした角度で上昇する。

 

南方航空らしく機内のシート類も長い間更新されていないようで、
離陸時の加速で、シートのテーブルがフックから外れて、
バタンバタンと倒れる始末だ。
慣れているのか、客室乗務員も誰も気にしないようだ。

 

 

今回のこの飛行機には、正直、恐怖を覚えた。
怖かった。

 

特に南方航空の機内乗務員(スチュワーデス)さんも、すごいのだ。
絶っ~~対に笑わない。
そういう規則になっているかのように彼女たちは絶対に笑わないのだ。
客に対しては・・・・。

 

乗務員同士で話をする時には、ケラケラ笑いながら話しているが、
客から何か話しかけられたりすると、サッと怖い顔に戻って、無礼な話し方をする。
中国の航空会社の客室乗務員は、そういう傾向はあるが、
特に南方航空はすごい。
徹底しているのだ。

 

怖いスチュワーデスさんと、怖い飛行機。
じっと我慢するしかない。

 

名古屋から大連へは2時間ちょっと。
(帰りはちょうど2時間ぐらい)
最初北上して、敦賀湾に掛かったぐらいで西に大きく機体を向ける。
山陰の海岸沿いに西進し、九州を左に見ながら海に出る。
この辺の海は日本海なのだろうか、東シナ海なのだろうか、よく判らない。
海上をしばらく飛ぶと、「韓国」の上空に出る。
この辺の韓国の地形は、侵食が進んだなだらかな山が続く。

 

 

しばらく韓国をまたいで、また海に出る。
そうすると、じきに高度を下げ始めて、大連への着陸態勢に入る。
・・・・
無事に大連に着いた。

 

 

!大連空港には、
飛行機好きにはたまらないものがあった。
「ミグ21」が滑走路脇に無造作に駐機しているのだ。
しかも、カバーも何もない。
裸の状態で、「ミグ21」が並んでいる。
丸見えなのだ!
中には、ちょっと大型の「スホーイ19」らしき機体まで見える。
これらは第2次大戦後のソビエト連邦が主力にしていた戦闘機と、戦闘爆撃機だ。

 

解放前ならば、その姿は重要軍事機密であり、
一般の人間の目には決して触れるものではなかった。
それが、丸裸で目の前にある。
ビックリして
飛び出さんばかりに目を開いて、見入った。
(で、写真を撮るのを忘れてしまった。)
あわててカメラを取り出したときには、「ミグ21」ははるかかなたであった。

 

飛行機が止まってから、
またまた飛行機好きにはたまらないことがあった。
ケツから降機したのだ。

 

 

DC-9は、最後部から階段を下ろして、乗客を降ろす機能があるが、
日本で決してこんなことはしない。
大昔に、どこか田舎の飛行場でケツから降りたことが一度だけあったが、
今回こんな幸運に恵まれるとは思わなかった。

 

 

ラッキーである。

 

これを書いている今、もう名古屋に帰ってきている。
16日の飛行機の中から書き始めて、
その日、大連で仕事をして、夜、今度の仕事に付き合ってくれた田中さんたちと
中国風「しゃぶしゃぶ」を食べて、
夜は、バタンキュウで寝て、
朝5時に起きて、午前8時の名古屋行きの飛行機に乗ってかえってきた。
このところの過密スケジュールで、くたびれたのか
帰ってきてから珍しく昼寝をしてしまった。

 

今回のビジネスパートナー
張さんと黄さん

 

 

朝6時くらいの、大連・開発区のホテルから

 

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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