谷 好通コラム

2004年09月19日(日曜日)

1022.5年持つ訳ない?

このサイトの「快洗隊日記」の?10186に、
「やっぱり持たなかった。」と題して、
刈谷店のマネージャーがYahoo!のニュースで見つけた記事を掲載していた。

 

その記事は9月15日の読売新聞に載った記事で、
以下のとおり

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「5年間ノーワックス」は虚偽、広告禁止と賠償命令

 

自動車用コーティング剤の「5年間完全ノーワックス」などの広告は虚偽で、不正競争防止法違反にあたるとして、ワックス製造販売会社「ウイルソン」(東京都中野区)が、自動車用品販売会社「T社」(大阪市北区)に、広告の掲載禁止と売り上げの減少分など1億1000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が15日、東京地裁であった。

 

飯村敏明裁判長は「被告の商品には、塗装の光沢を5年間維持する効果はない」と述べ、1000万円の賠償と、消費者が誤認する広告の掲載禁止を命じた。

 

判決によると、問題となった商品は「CPCペイントシーラント」。
被告は1988年から輸入、販売しており、カタログなどで「5年間の輝き保証」と広告していた。

 

T社の話「納得しがたい判決で、ユーザーが求める新商品開発が阻害されかねない」
(読売新聞) – 9月15日21時45分更新
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

実にダイレクトな記事で、
ここでも取り上げることを、どうしようかと考えあぐねたのだが、
やはり、書くことにした。

 

この商品については私たちとしても、消費者を欺く恐れがある大きな問題があると、
以前から強く思っていたからだ。
しかし、まさかウィルソンが、
「誇大宣伝のせいで、自社のWAXの売り上げが減った。」と、
裁判に訴えていたとは知らなかった。
やったぜウイルソン!である。

 

多くのカーディーラーで販売されていたこの商品、
新車の見積もりの中に、
車庫証明手数料とか、JAF入会とかと同じように「コーティング」として、
初めから入れてあり、
うっかりすると、
車を買えば、これをやるのが当たり前の付属品のような感じであった。

 

そのなかば強引なやり方に、
世界に誇る日本の車産業の最先端部分であり
車のことについては消費者からの絶対の信頼を持つカーディーラーがやることかと、疑問に思っていた。

 

ノーワックス(ノーメンテナンス?)で、
5年間も、美観の保持を実現するようなコーティング剤など、
あり得ないと断言できる。

 

最近の流行の、
ガラスなどの被膜を形成する無機質コーティグは、
無機質ゆえに、酸性雨とか紫外線に対して強い耐久性があり、
(アクアKeePreも含めて)、
膜そのものには、理論的に5年以上の寿命があったにしても、
実際に使用される車においては、
油分を含んだ汚れは、やはり、こびりつくし、
(ガラスに油汚れがつくように)
走行による異物の衝突、摩擦など、美観を損ねる要素は存在しており、
高品位な美観を保つためには、
半年程度でのメンテナンスが必要であると考えている。

 

ましてや、
アクリルとか、フッ素樹脂だとか、
いずれにしても有機物であるポリマーを使ったコーティングは、
紫外線などによる組織の劣化が必須であり、
数ヶ月の寿命はあったにしても、
年単位に及ぶ美観の効果の持続など絶対にない、と言わざるを得ない。

 

ちょっと視点を変えて、
たとえば、高分子重合体という意味では、“塗装”も、“ポリマー”である。
あと塗りのコーティングなどに比べれば、
分子的な結合がはるかに強く
大気中の汚染物質とか、
日光の紫外線とか、
塗装は、艶と美観を損ねる要素に対抗する性能に大変優れている。

 

しかし、ポリマーは有機物であり、つまり塗装も有機物であるので、
いずれは紫外線に破壊され、
あるいは大気中の汚染物質によって美観を損ねてくる。
塗装ですら美観において5年もの寿命は、
駐車環境、走行状況、などの条件が揃わないと保持できないものだ。

 

ましてや、
塗装との分子的結合をしていない被膜を
塗装の上に“上塗りポリマーでコーティング”し、
そのポリマーの被膜(コーティング)で、5年以上の艶と輝きを得るということは、
どう考えても無理な話なのだ。

 

あとから圧力で上塗りしたコーティングでは、
塗装より強い被膜を作ることなど出来ず、あるいは、作ってはならず
もし、エポキシ樹脂などで塗装より強く硬い被膜を作ったとしたら、
それは、“はがれ”を招くことは必至。
塗装の上に塗装より強い被膜を作ることは禁物なのだ。
だから、5年間の艶と輝きを保持するコーティングなどあり得ないと、言い切れる。

 

一言で言えば、
5年間保障の謳い文句は“嘘”である、と、考えてきた。

しかし、もっと根源的な嘘は、
たとえば、
この5年ノーワックスのコーティングを施工してもらうと、
“メンテナンス剤”を渡される。
「車が汚れたら、このメンテナンス剤を使って、自分でメンテナンスをしてください。」
という意味らしい。

 

そして、このメンテナンス剤とは、
私たちの見解では、ただのクリーナーワックスである。
つまり、ただ単なるコンパウンドの入ったワックスであって、
このメンテナンス剤なるものを使って、
車についた汚れを取ると、コンパウンドによって汚れも取れるが、
最初に塗ったコーティング剤も全部取れてしまう。
(これは実際にテストでメンテナンスをすると、
最初のコーティング被膜はすっかり無くなっていた。)

 

コーティング自体は汚れと共に無くなって、
クリーナーワックスのワックス分が塗装上に残っているだけ。
つまり、
普通にワックス掛けした後の状態になってしまっている。

 

すなわち、ここでいうメンテナンスとは、
ワックス掛けそのものであって
その後のメンテナンスも、ワックス掛けを繰り返すという行為に他ならない。

 

つまり!
何万円もかけて、5年間ノーワックス加工を施工して、
その後は、“メンテナンス”という“ワックス掛け”を自分でさせられる。

 

何というか、頭が良いというか、
これはある意味“罠”だ。

 

しかし、このようなコーティングを、
信頼するディーラーにやってもらって、その効果を信じている人に対して、
「あなたのやったコーティング、あれは実は罠なんですよ」とは、
絶対に言えない。
言われた人は、侮辱されたと思うかもしれないから。

 

騙された人に対して、「あなた騙されていますよ」と言っても、
まったく通用しないどころか、かえって迷惑がられるのと似ている。

 

 

 

今は、北海道・苫小牧のホテルの中、
もうそろそろ寝なくてはいけない。
続きはまた明日。

 

今日の夕方、
刈谷店に寄って来た。
そこにあった、ひたむきに車を綺麗にしようとする姿勢。
何とまともであることか。

 

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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