谷 好通コラム

2004年08月29日(日曜日)

1007.ショップの在り方

広州に行った時、面白い店を見つけた。
見つけたといっても、この店のオーナーが上海のショーに来てくれていて、
広州にはこの店を訪問するために行ったという訳だが。

 

一見すると中国にしては大型のドライブショップという感じ。
しかし、一階部分はすべてサービス関係のエリアになっていて、
物販の店舗は二階にある。

 

その二階は
正面にフロント
非常に清潔に、且つ、センス良くまとめられている。
フロントの女性が“笑顔”を持って迎えてくれた。
中国の店舗において、笑顔の接客は珍しい。
ほんとに信じられないぐらい無愛想な接客がほとんどなのだ。
まず、うれしい。

 

 

中国での用品類は、まず香水で、
色とりどりの芳香剤が大きな棚いっぱいに並べられている。
そして、クッションとかハンドルカバーとか、細かいアクセサリーなど、
あまり種類は多くないが、埃が被ったりはしていず、商品が動いている証拠だ。
別のコーナーにはオーディオがかなり充実してディスプレーされている。
今まで中国で見たドライブショップの中では、まずまずの方である。

 

 

この店の主力商品は、物販ではなく、サービス商品であるという。
一階のフロアが全部と、二階フロアの一部が作業エリアになっており、
物販のための販売エリアの3倍以上が、
サービス商品のための作業エリアに当てられている。

 

日本のドライブショップとは逆の割合である。
日本では、まずタイヤ、ホイール、オーディオ、NAVI、オイル、アクセサリー、など
物の販売が中心であり、
作業は、売れた商品の取り付け作業が中心になっている。

 

中国のこの店は逆の構成になっている。

 

まず、最初に洗車、そして汽車美容と呼ばれるコーティングなど、
洗車は、洗車機は置いていない。
すべて人海戦術での手洗いである。

 

下に排水の設備が施されているトンネルがあって、
(天井が高いのでトンネルというイメージではないが)
その中に車を入れていく。

 

一台目は一番奥まで入れ、
2台目はその後ろにと、3台目はそのまた後ろにと、どんどん後ろに詰めていって、
適当な所でズズッと前に持っていくようだ。
ドライブスルーというよりも、洗車トンネルって感じ。

 

 

洗車方法は、
1.高圧水スプレーガンでざっと泥を落とす。
2.その場で泡をかけて、タッチアップ。
3.高圧水で泡を洗い流したあと、
4.バスタオルのようなでっかいタオルで、ざっと大まかに水を拭き取って、
5.エアーガンで、細かい所に入った水を追い出す。
ここで、車を移動して
6.仕上げのエリアに車を持っていき、仕上げ拭き。
あるいはワックスがけに入る。

 

まるでわが快洗隊の洗車を見ているようでびっくりしてしまった。
やはり細かい部分の手順とか、気配りに類した所には荒っぽさがあって、
よく見ると快洗隊の洗車とはかなり違うが、
大まかには、よく似ている。

 

 

このやり方は、日本でも「極上洗車」として「快洗Jr.」などの機器を使って、
全国で2000箇所あまりで実践されている。
この店のオーナーは、日本の何度も視察に出かけ、
ドライブショップとか洗車の勉強をされている。
どこかで、極上洗車をご覧になったのかもしれない。

 

洗車とワックス掛け、室内清掃、コーティングなど
一ヶ月3000台を洗車して、15万元ほどを売り上げるという。
これは、日本円で2百万円弱の売り上げに当たり、
物価の低い中国では驚異的な数字である。

 

次にウィンドフィルム。
専用のフィルムのカットルームがあって、立派なカッティングマシンも置いてあった。
貼り付けも、車が7~8大は入るであろう広い専用のエリアが二階に用意され、
その二階には、専用の車のエレベーターが用意されている。
すごい力の入れようである。
中国の車は、ほぼ100%ウィンドフィルムが張られており、
重要が大きいのであろう。

 

次に、リフトエリア
リフトは全部で10台ぐらい設置され
オイル交換とか、いろいろな作業に使われているようだ。
リフトを下ろしている時は、洗車のタッチアップエリアにもなっている。
タイヤの交換も多いようで、
イタリア製の新鋭のチェンジゃーとバランサー、パンク修理のための大きな機械、
そして、窒素の生産型の充填機まで有った。
充実の設備である。

 

 

鈑金・塗装も多いという。
3台分の鈑金スペースが用意され、
塗装ブースも立派なものが設置されている。

 

 

作業商品をメインにしているからには、
重要となってくるのが社員の技術能力アップである。
この店では、社員教育専用の教室まで用意されていた。
ここで、徹底的に社員の教育をするのだという。

 

 

面白かったのが商談室。
この商談室で、オイルとか、フィルムだとか商品を見せながら、
膝詰めで、お客様と商談するのだそうだ。

 

 

オーナーいわく、
「中国では、物の販売についてはまだまだ購買力が足りない。
まず、洗車とか、フィルムとか、技術で差別化できるサービス商品を充実させて、
それで客を呼び、それから物が売れる。
日本とは順番が逆なんですよ。」

 

バブルが崩壊して、購買力が一時より下がっている日本。
あるいは、オーディオとかNAVIなど車に関する“物”が、
新車時からグンと充実してきている今。
そして、インターネットなどの普及によって“物”の購買チャンネルが増え、
価格の下落が止められず、利益の確保が難しくなってきていて、
ドライブショップにとっても、
あるいはSSにとっても、苦しい時代になっている。
そういう意味で、この店は、
ひとつの方向を示すものとして、大変、参考になる店舗のあり方であった。

 

そして、これから洗車業としての切り口から、サービス商品の多角化と
物販も含んだ店舗への進化も
大いに“あり”であることを強く感じさせられたのでした。

 

最後にオーナーがおっしゃられた。
「洗車専門店をやって見えるそうですが、
それでは雨が降ったらお客さんがぜんぜん来ないでしょう。
鈑金やったらいかがですか?
雨が降っても仕事がいっぱいありますよ。」と。

 

このオーナー、すごい目を持っていると感心した。
11月にはわが快洗隊にも、鈑金塗装フル装備の快洗隊が千葉に誕生する。

 

もうひとつだけ、驚いたこと。
この店のスタッフの人数の多いこと。
なんと70名!も在籍しているそうだ。
しかもそれは作業スタッフの話であり、
管理者、事務系スタッフなども入れると何人になるのか。
これは、人件費がものすごく低い中国のこと、これでも通用するのだろうが、

 

日本では、このままの方法ではとても採算が取れそうにない。
この店の中に、70名の社員のための厨房と食堂まであるのだ。
あ~~びっくりした。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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