谷 好通コラム

2004年06月09日(水曜日)

972話 四通りの理不尽

昨日、一昨日と飲んだくれて、このコラムをサボったので、
今日はがんばって書く。
なんとビールも飲まなかったのだ。

 

来週の金曜日からと、その翌週の月末にかけての2班に分かれて
社員旅行として社員全員で上海に行く。
陶さんのタオル工場とか、頼さんの快洗隊なども行って、
ただの観光旅行とは一味違った旅行を組んだ。
もちろん魅惑の夜景BANDOとか、
人民広場とか、豫園とかの観光ルートもしっかり入れてある。

 

私達上海にいつも行っている者にとっても、豫園、人民広場などの
観光地には行ったことが無いので、これはこれで楽しみだ。

 

しかし腹が立ったこともある。
今回の旅行についてはある旅行社に手配を依頼したのだが、
その値段が、どうも納得行かない。
早い話、高いのだ。
しかも!なんと
向こうの旅行会社指定の土産物屋に3軒も立ち寄る事が条件になっているという。

 

あの悪名高き“土産物屋(みやげものや)”
客の売上に応じて旅行会社にリベートがガッポリ入っていくあの土産物屋だ。

 

アジアの観光地の悪しき習慣で、
現地の旅行会社が提携の土産物屋(一般客は来ない)に客をバスごと連れて行って
とんでもない高い値段で、土産物を買わせ
リベートを業者が取っていく。
それが旅行社の儲けとなって、旅行代金を安くした穴埋めにとするとか、
添乗員さんの給料がそこから出るのだとか、
訳の分からないことを言って、その行為を正当化している。

 

観光客の方も、市中では言葉が通じないからとか
買い物するのが怖いとか、
街の商店では信用できないとか、
添乗員さんが給料をもらえなくては可愛そうだとか
理由にならないな理由で、つい、バカ高い土産を買ってしまう。

 

地元産のお土産を買うなら、
スーパーマーケットが一番であることは、旅慣れた人ならば誰でも知っていることだ。
それに添乗員さんの給料は、土産物屋とは関係ないし、
きちんとしたフィーを払っているのだから、何も気にすることなど無い。
だいいち、
そんな団体観光客専門のうさんくさい土産物屋などに行くことはないのであって、
そこに行くことを旅行手配の条件にするなんて、法的にも有効ではない。

 

こんな悪しき習慣がまだ残っていたとは、びっくりしたが
それを、のうのうと“条件”だと言って持ってくる旅行代理店が、
日本最大規模を持つ大会社であるところにがっかりした。
問題の根は深そうである。

 

世の中には理不尽な事が多い。
特に、海外を知らない人々から、
不案内な土地で、
ウソを言って、不当な利益を騙し取ろうという悪辣な手段は
嫌悪感を通り越して怒りが湧き出てくる。

 

相手が知らないことをイイことに
不当な利益をむしり取ろうとは、下劣極まりない行為だ。

 

 

かわいい理不尽もある。

 

H.オサムには2人の子供がいて、
上が「楓(かえで)君」、下が生まれて6カ月の「光(ひかる)君」
ある時、家族でお寿司を一緒に食べた事があった。

 

お兄ちゃんの楓君は自分用に出してもらった“わさび抜き”のお寿司を持っていた。
だけど、ちょっとご機嫌が斜めであった楓君はなかなか食べようとしなかった。
そこに、まだ離乳食を卒業したばかりの光君が、
楓君のお寿司に手を出したのだ。
「だめっ」と一喝する楓君。
それまでちっとも食べようとしなかったお寿司を、楓君はおもむろに食べ始めた。
別に食べたいと思っていなかったお寿司を、
弟に取られそうになったら、やおら食べる気になったのだ。
「取られるくらいなら、食べる」

 

子供なら必ずやるかわいい理不尽である。
(競争原理の芽生えである。)

 

 

かつてのガソリンスタンド
私がまだ二十歳代の若いころ、ガソリンスタンドに勤めていた。
その時、ある店で知恵を教えられた。
車にまったく不必要な作業(商品)を、あたかも必要なこととお客様に伝え、
それをしないと、「もうすぐ壊れる」と脅かすと、
面白いようにその作業(商品)が売れるというのだ。
しかも、ただ口で言うだけではなくて
バッテリーには電圧計とか、カークーラーにはガスの圧力計などを
あらかじめ、正常な状態でも、異常な数値が出るように調整しておいて、
インチキなメーターを見せて
「もうすぐ、だめになる。」と脅すというのだ。
これこそ悪知恵。

 

こんな理不尽な事は無い。
そんなことをやっている店は、商売にとって一番大切な“信用”を無くし、
じわっと客を無くしていって、いずれ潰れてしまう。

 

今では、そんな馬鹿なことをやっている店は一軒も無いことを信じる。

 

商売は、正直が一番強いのだ。やっぱり。
洗車は目で見て分かる商品の典型である、その意味では最高だ。

 

 

2年ぐらい前に行ったドイツ
その時に立ち寄ったライン川沿いのワイン倉で
ものすごく美味しいアイスワインを買った。

 

持って帰れないので、ドイツから日本に送ってもらったのだが、
その時、「本当に同じワインが送られてくるんかいな~」などと
あらぬ心配をしたが
ちゃんと、あのワイン倉で試飲したとびっきりのアイスワインそのものが
地球の裏側から送られてきた。
それからみんなで、大切に大切に飲んで、ひと月ほどで惜しみながら飲み干した。
濃厚な甘さがあるのだが、不思議にさっぱりしていて
むせ返る様な芳醇な葡萄の香りがする。
今まで飲んだワインで、最高の美味しさであった。

 

 

このとびっきりのアイスワインを売っていたワイン倉には
ライン川観光の観光バスが連れて行ってくれたのだ。
土産としてワインを買えるようにと、知っている古びたワイン倉を案内した。
この観光バスが、ワイン倉からリベートを取っているのかどうかは分からないが、
少なくとも、あの味であの値段は間違いなく安かったように思う。
それより何より、「買って良かった~」と思う物を買うことが出来たのだ。

 

アジアの国の悪習、あの観光客専門の悪徳土産物屋とは、まったくの反対。
文化の差を感じる。

 

さらに
・・・・
去年、あるアジアに近い観光地の飛行場の免税店で「アイスワイン」が売っていた。
「オッ、あのアイスワインだ」と
何本も買ってきたが、めっちゃくちゃ甘いだけで、
ぶどうの香りも何も無かった。
あのドイツのアイスワインとは似ても似つかぬもの、無駄遣いであった。
そのまずさに誰も飲まず、その辺に転がっていて、
きっと大掃除の時に捨てられるのだろう。
理不尽な物を売るものだ。

 

また、ドイツに行くことがあって、ライン川に行くことがあったら、
ぜひまた、あのワイン倉に行って、山ほどのアイスワインを買って来たい。
死ぬまでにもう一度だけ、
あの豊かな葡萄の香りが、口中に広がる絶品のアイスワインを飲んでみたい。

 

商売はリピート。
商売は、「また欲しい」と、思ってもらえる事が一番。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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