谷 好通コラム

2004年06月04日(金曜日)

970話 風呂に入った後

私は大体の場合、朝風呂に入る。

 

朝風呂は寝起きの頭がすっきりして、それはそれで気持ち良いが、
本当は、夜入った方が
昼間にかいた汗を流せて
気持ち良いと思うが、
帰ってきてすぐ風呂に入るのが面倒で、つい先にビールを飲んでしまう。
それで、朝入ることの方が多くなってしまうのだ。

 

昔々、
私は風呂に入るのが面倒で仕方なかった。
子供の頃、私がなかなか風呂に入らないので、
親からさんざん
「いい加減に風呂に入れ!」と文句を言われて、
しぶしぶ入っていた。

 

そして、私は十代の頃
高校を卒業してしばらくして、何年か家を出た事がある。
親父とつかみ合いの喧嘩をして、家を飛び出たのだ。
(今思うと、これも懐かしい思い出だ。)

 

家を出て一人暮らしになると、誰も私を叱る人はいない。
「風呂に入れ!」という人もいない。

 

元々風呂に入るのが面倒だった私は、
わざわざアパート近くの銭湯に行くなんてのは、もっとメンドクサイ。

 

「明日、風呂に行こう。」と思いながら、
「明日は、・・・」「明日になったら・・・」「明日こそは・・・」と
なかなか風呂に行かず、
とうとう、2ヶ月近くも銭湯に行かなかった。
つまり、風呂に入らなかった。

 

最初の一週間ぐらいは、汗で体中が気持ち悪くなってきて
それなりにイヤだったが、
アパートに帰ってきて、
とりあえず、そのころ愛飲の「ウォッカ」を一杯飲むと
もう銭湯に行くのが面倒になってきて、また「明日、風呂に行こう」となって
ズルズル2ヶ月間。

 

しかし、1週間を越して2週間、3週間、1ヶ月となってくると
だんだん風呂に入っていない自分に慣れてきて
大して苦痛ではなってくる。
こうなると、もう1ヶ月が2ヶ月になっても同じ、
風呂に行く面倒に比べれば、多少の我慢は何でもない。

 

私の近くに来た人が変な顔をするようになっていた。
“臭かった”のであろう。
しかしニオイは時間が経つと慣れてしまうもので、
ずっと自分の臭いを嗅いでいる自分は、どおってことない。
それに、ある程度垢が溜まってくると固形化するのか、匂いはむしろ収まっていた。

 

そのころ、貧乏であった私達は、ただ飯を食いに実家巡りをしていた。

 

ある時、ある友達の実家に遊びに行った時、
みんなと一緒にコタツに入った。

 

そして、暖かいコタツに気持ちよく入っていたみんなは、
異様な匂いが漂ってくるのに気が付いた。
私のニオイだ。
2ヶ月風呂に入っていない私の体は、コタツに温められて、
固定化していた垢が蒸されたように
ムア~~~~~~っと、匂いはじめたのであろう。
「くっせ~」と、みんなが騒ぎ始める。

 

異変に気が付いた友達の親が、匂いの素が私であることを突き止め
私に風呂に入るように命じた。

 

友達の実家の風呂は「五右衛門風呂」。
2ヶ月ぶりの風呂は、この世の極楽のようであった。
「ふう~~う、う~~~~~ん、ふ~~~」
何度かため息をつきながら、長く長く風呂に入って
外で、体を石鹸をつけたヘチマで擦って、また風呂に入って
また外で体を擦って
また風呂に入って、
多分一時間ほど風呂に入ったり体を擦ったりして
2か月分まとめて風呂を楽しんだ。

 

風呂から出てきた私は、2kgは軽くなったような気がする。

 

あのときの爽快感は今でも記憶にはっきりと残っている。

 

あの強烈な爽快体験があってから
私はすっかり風呂好きになった。
あれから今でも、ほとんど毎日風呂に入っている。(当たり前か?)

 

すっかり風呂好きにはなったのだが、
それでも、
今でも、やっぱり風呂に入るのは面倒ではある。
だから、夜入らずに
朝風呂が定着しているのだ。

 

 

たとえば
風呂に入るのは面倒だが、
風呂に入ってしまえば、すっかり気持ち良くって
風呂に入って良かったと思う。
だから、朝風呂ではあるが、必ず毎日風呂に入る。

 

たとえば
歯を磨くのは面倒で、なかなか磨きに行きたくないが、
歯を磨かないと気持ち悪いし、
磨いた後は必ず爽快感がある。
寝る前と朝食後には必ず歯を磨く。

 

たとえば
朝、布団から出て起きるのは、
布団があったかくて気持ち良いので、出たくないが、
思い切って出てみれば、
すぐにすっかり目が覚めて、起きて良かったと思う。

 

新しい仕事だってそうだ。
今までと違うことをやるのは、今までと同じことをやるより
はるかに面倒だが、
やって見れば、新しい発見があって、
新しい縁が出来て
あるいは新しい成果が出て、
やって良かったと必ず思うものだ。

 

やるまでの面倒と
思い切ってやってからの爽快感。

 

どっちを選ぶのか。

 

 

33年前に2ヶ月風呂に入らなかったことがあるこの男。
会ったら、そのことは忘れてやってください。
そうしないと何となく臭ってくるような気がするかもしれませんから、
どうか忘れてやってください。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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