谷 好通コラム

2004年04月05日(月曜日)

926話 その光景に絶句

台南市について、その足でイリさんは、
私達をホームセンターに連れて行ってくれた。
そこでどんな物が売られているか、見せてくれるつもりであったらしい。

 

地下の駐車場に入っていったら、
ツナギを着た若者が近づいてきた。
「洗車しましょうか?」とか、そんなことを言ったらしい。
値段は300(台湾)元、日本円で約1,000円だ。

 

私はイリさんにお願いした。
「ほうっ、イリさん、良かったら洗車をさせてやってくれませんか。
ぜひ、どんな風にやるのか見たいと思いますので。」

 

こころよくイリさんは承知してくれた。

 

洗車が始まる。

 

駐車場に洗車屋さんの一角が作ってある。
まず、水が回りに漏れないように
コンクリートで5cmぐらいの土手が作ってあるスペースで水をかける。
家庭用のプラスチックのカバーのスプレーガンで、
ヨッコラショ、ヨッコラショと部分的にスプレーする。

 

 

何ともしょぼい圧力で、「あんなんで、いいのかなぁ」と思ったが、
なんと、水を掛けただけで、
仕上げのコーナーに車を移動してしまった。
そして、
大き目のタオルで拭き始めてしまったのだ。

 

 

車を洗っていない・・・
水を掛けただけで、ゴシゴシと砂埃ごとタオルで水を拭き取り始めてしまったのだ。
「あれじゃあ、車が傷だらけになってしまうよ。」
イリさんの車は、去年の11月に買ったばかりの新車で、
そんな車に、こんないい加減な洗車をやるように頼んだことを後悔した。

 

これが、拭き上げに使ったタオルだ。
ほとんどドロドロ状態。

 

 

それからまたびっくり
今度は、店長という人がやってきて、俄然セールスを始めた。
「ボンネットに鉄粉が付いているから、これを取らなくてはいけない。
それであとは、このポリッシャーで磨くとものすごくきれいになるから、
ぜひ、やらせて欲しい。
それには、契約して会員に入ってもらうと安くなる。」

 

 

そう言って、
ボンネットの上を粘土でゴシゴシと擦り始めた。
ボンネットの一部を試しにやって見せるということだ。

 

私は野次馬のように、近づいてボンネットを見た。
彼が指差していた鉄粉とは、なんかのゴミで、爪ではじいたら一回で取れた。
しかし、それでも店長は執拗に粘土でボンネットを擦る。
何のためにやっているのか分からずに見ていると、同じところを50回は擦る。
その上で、
コンパウンドをたっぷり付けて、シングルポリッシャーで磨き始める。
同じところを、また何度も何度もだ。
心配になって、そっとボンネットを触ったら、触れないほど熱を持っていた。

 

 

そして、
「どうですか、こんなに艶が出ました。」と自慢げに見せている。
思わず絶句!

 

天井が、蛍光灯をネットのように張り巡らせた照明なので
艶の具合、塗装の具合が極端に見にくいが、
塗装の表面が弱って、つやがボケて来ていることが、かろうじて見て取れる。

 

見ていてハラハラしてきて、
「もう、上に行きましょう」と、イリさんを誘って、上のホームセンターに行くことにした。
車の持ち主さえいなくなれば、
無茶なデモもしないだろうと思ったから。

 

その脇では、洗車?をやっていたツナギの若者が、
チューブに入ったワックスを、
丸いスポンジでゴシゴシと擦って塗っている。
片手には、ものすごくワックスで汚れたウェスを持っている。
きっとワックスを塗ってから、そのウェスで擦り取るのであろう。

 

目まいがしてくるような光景である。

 

 

ホームセンターの見学をして、再び洗車屋さんのところに戻ってきた。
案の定、あの汚いウェスで仕上げをしている。
タイヤには、ひび割れの原因になる油性のタイヤワックスを塗りつけて、
テカテカのタイヤにしていた。

 

隣では、まったく洗車もせずに、水をかけもせずに、
粗目の粘土でゴシゴシと鉄粉取りをやっていた。

 

何で、私がしかめっ面をしているか分からないイリさんに
とりあえず詫びて、洗車屋を出ることにした。
もちろん、磨きも断ってもらい、
会員になることも断ってもらった。

 

天井には、
直径1cmほどの極細の蛍光灯が、ネットのように張り巡らされている。
これが曲者のである。

 

 

その日の夜は、イリさんに台南の名物「屋台のような店」を何軒も案内してもらった。
3口で食べられる“わんこそば”ぐらいの「坦々麺」。
めっちゃうまくフツールーツを食べさせる店。
豚の内臓料理専門の店。(ここで私はノックアウトした)
翌朝は、お粥の店。牛肉料理の店。豆腐デザートの店。

 

この話は、別の話でじっくりと

 

翌日、つまり今日、もう一軒大きな洗車屋さんを見に行った。
超有名なデパートの巨大な立体駐車場で、
その一つのフロアをほぼすべて占める大型かつ有名な洗車屋さんである。

 

まさかと思ったが、
その店でも、昨日見た光景とほぼ同じ光景が繰り広げられていた。
むしろ、この店では
洗車はバケツの水で濡らしたタオルで撫でるだけという物凄いことをやっていた。
まだ、しっかりと汚れがついているのに、
汚れきったバフに、たっぷりとコンパウド入りワックスを塗りつけて
あのシングルポリッシャーで、磨きまくっている。
あるいは、削りまくっている。

 

スポンジバフのつぶれ方を見るとかなり力が入っている。

 

 

どこでも、こうなのだという。

 

まったく言葉も出ない光景。
そして、
天井には、またあの蛍光灯がネットのように張り巡らされていた
ただし、この洗車場は天井が高いので、
あの地下の駐車場の低い天井にあった極細の蛍光灯ではなく、
普通の蛍光灯である。

 

 

このネット状に張り巡らせた蛍光灯は、
四方八方から、光をボヤっと出すので、塗装の傷とか艶の状態をまったく見せない。
とにかく、物凄く綺麗に見えるのだ。
表面にワックスのようなものを、とりあえず乗せてやれば、
物凄く深い艶が出たように見える恐ろしい効果がある。

 

その反対に、“少ない光源で強い光を出す”「水銀灯」の下では、
傷の様子、艶の出方がはっきり分かる。
しかし
本当にその車をきれいにしようと思ったら、
逆に、そういう照明が必要になってくるのだ。

 

快洗隊の天井は、どこも水銀灯である。
ごまかしの効かない環境の中で、本気に車をきれいにしようとしているからだ。

 

ネット状に張り巡らせた蛍光灯の下では、
傷も見えず、艶のムラも見えず、仕上げの漏れも見えない。
とりあえず綺麗に見えてしまうのだ。
そんな環境では、かえって車を綺麗にする事が出来ないのである。
もちろん技術も上がりようがない。

台湾の車が、不思議に艶がないのは、
こういうことに原因があったのかもしれない。

他にも、色々な洗車事情見た。
こういうところで、どうすればいいのか、
正直、分からなくなっている。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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