谷 好通コラム

2003年11月05日(水曜日)

832話 向こう側の視点

向う側からの視点

 

向うとは、相手からの視点
一つのことを考える時に
自分からの視点ですべてを考えていくと、なかなか解決しないことでも
相手の視点に立ってみると
実に簡単に解決する
そんなことが多い

 

こちら側からの風景と
向こう側からの風景とは、ずいぶん違っていて

 

こちら側から見ていると、とんでもなく複雑なことも
向こう側から見ると、非常に簡単な事があるということ

 

商売で言えば、こちら側とは売る側のこと
反対に、向こう側とは買う側のこと

 

ある商店が、Aという商品を売りたいと思っていた
ところが、なかなか売れない
商店主は色々考えた「何が悪いんだろう」

 

店構えが悪いのだろうか
商品のディスプレーが悪いのだろうか
お勧めの仕方が悪いのだろうか
宣伝が足りないのであろうか
店員の態度が悪いのだろうか
値段が高いのだろうか
色々と考えに考えた

 

そして、ついにお客様に聞いて見ることにした
「どうして、この商品は売れないのでしょうか?」

 

お客様の答えは簡単であった
「これは、私は要らないです。欲しくないです。」

 

向こう側から見れば簡単だった

 

買う側にとって、まったく買う気にならないような商品を
売る側は、一生懸命売ろうとしていただけで
安くしたって
いくらお勧めしたって
きれいに陳列したって
経費をかけて宣伝したって
買う側が欲しくないものは、絶対に売れやしないのだ

 

そんな簡単なことを
売る側からの視点
利益率がどうだとかばかり考えていても
商品そのものに力がない事が見えてこない
そんなことってよくある

 

商売は、買う側が欲しいものを、欲しいときに提供する事が本分であって
欲しくも無いものを、あるいは必要が無いものを
いかに売るかを考えるものではない

 

いかに買う側が欲しいものをつくり出せるか
それが商売の売る側としての一番肝心なところだ

 

買う側が欲しい物を造るという事は
買う側が何を欲しがっているのかを知る事が大切だ
知るためには
調べることも大切だが
売る側が買う側の視点を持てば良いだけで
いちいち調べていたのでは
余計か経費がかかるだけで
だいいちスピードが遅すぎる

 

商売の肝心とは
相手、つまり買う側の視点で自分の商品を見ることが出来るか
自分の店をお客様の目で見ることが出来るか

 

常日頃の事として
どうしても持たなければならない視点なのであろう

 

そこをはずして
売り方だけを一生懸命考えても
何も分からない

 

 

我がビジネス、洗車においても同じ事が言える
売り方を考える前に
販売している洗車、つまりお客様の車へのキレイさが
お客様の望んでいるものであるか
それを第一番目に考えるべきである

 

ユーザーが満足出来ないような洗車、つまり車へのキレイさを
造り続けながら
「なぜ売れないのだろう」と、つぶやいてみても
何も解決策などは出てこないのだ

 

ユーザーが望むキレイさには幅がある
それぞれのユーザーにとって、好みが違うのだから
その好みの違いの分だけ
洗車に対する欲求には幅がある

 

だから
低レベルの洗車をしていても、それで良いというユーザーもいる
それはそれでいい
しかし、それではまったく不満なユーザーもいるわけで
10人中2人がそれで良いという洗車メニューと品質しかないA店と
10人中5人が満足を得られる洗車メニューと品質を実行しているB店とでは
その洗車の売れ行きが
5/2倍だけ違うはずである
それだけでなく
A店では不満であるが
B店の洗車なら満足であるという部分の洗車メニューは
当然、A店の洗車メニューより単価が高いはずであり
それがたとえば2倍であったとするなら
単価×台数=金額
A店とB店との比較では
2倍×5/2倍=5倍の収益の差となるはずである

 

10人中2人がよいとする洗車メニューのA店と
10人中5人が満足する洗車メニューのB店では
洗車収益は5倍違う
ということになる

 

洗車を買うか、買わないかは
すべての選択権がユーザーにある
選ばれる店とは
ユーザーのことをよく知っている店であり
ユーザーをよく知るには
売る側が、つまりこちら側に居ながら
向こう側に自分の視点をきちんと持っていけるかどうか
そこにかかっている

 

売る側の論理は
買う側には関係のないことであって
買う側は、買う側の都合だけで、何をどれだけ買うかを独善的に決める

 

買う側は
義理で買うとか
勧められて買うとか
ましてや、だまされて買うことなど望んでいない
自分のためだけに買う
だから
自分のことをよく知っていて
自分のための商品を揃えてくれている店で
かつ、自分のことを大切にしてくれる店で
自分のために“買う”

 

値段は、その価値にあっているかどうかであって
相対的に高いものであっても
その店の商品と
自分のためを思ってくれる店に、その価値が一致するものならば“買う”

 

売る側としては
いかに自分の視点を向こう側に持っていけるかどうか
それが肝心なことと思う。

 

 

今日は久し振りにワンデースクールで話をした
専務とか、部長がスクールを仕切るようになってから
私の出番が少なくなってきている
それが、かえって
よりユーザーの視点を持つことになっているかもしれない
話をしていて、そんなことを思った今日のスクールでした。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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