谷 好通コラム

2003年03月06日(木曜日)

657話 慣れが“ダレ”に

私は日ごろ、「慣れ」は「ダレ」に通じると、スタッフによく話す

 

「慣れ」は仕事において必要だ

 

仕事は、学習しただけで出来るものではない
学習したことを、実践を通じて「慣熟」し、体に叩き込んだ時点で
初めて世の中に役に立つ仕事が出来るものだ

 

洗車技術においても
研修による学習で一応の技術の伝達は出来るが
果たして、それでお客様の車を本当に綺麗に出来るかというと
とても無理な話だ
頭と手先で技術を覚えただけでは、上質な商品を作り上げることは出来ない

 

繰り返し、繰り返し、同じ作業を行い
しかもその作業に集中して、体に叩き込み、染み込ませ
何も考えなくても
体が自然に動き
車がすばらしく綺麗に仕上がってしまうところまでになって
はじめて
いつでも、どんな場合でも
上質でしかも均質なサービスを作り上げることが出来るものだ
そうでなくては、本当のプロとは言えまい

 

技術は“習熟”、慣れが必要だ
しかし、逆の意味で、慣れがマイナスになることもある

 

JRの出札カウンターでの接客に思うことがある
私は、東京駅で新幹線の切符を買うとき
いつも、東京駅のJR東海の新幹線カウンターで買う
ここは出札係が全員女性
しかも入社したての初々しい若い女性ばかりでやっている
出札のためのコンピーュターのオペレーションが非常に早い
そして、非常に感じがいい
(べつに、若いおねぇちゃんが好きだから、ではないのだ (^^) ホントに)

 

多分、彼女たちは4月に入社して、しっかりと研修を受け
オペレーションのみならず、接客のイロハから徹底的に仕込まれる
そして、彼女たちが研修生としてカウンターに立つ5月ぐらいには
元気のいい明るい声が東京駅の中に響き渡る

 

この頃の彼女たちは
みんな、こちらの方をきちんと見て、しっかり聞き
ハキハキと元気のいい返事をして
時にはメモを書いて、出札のオペレーションをしてくれる
いい笑顔で
実に気分がいい
接客の基本は、やはり笑顔

 

万が一、オーダーと間違った出札をしてしまったときには
「すいません、うっかりしました。」と
本当に申し訳なさそうな表情をして、テキパキと出札作業をやり直す
そして最後には、頭をペコンと下げて
「お待たせして、申し訳ありませんでした。」と、丁寧に詫びる

 

みんなの一生懸命さが、ヒシヒシと伝わってきて
気分がいい
間違いがあっても、怒る気になんかなりゃしない

 

それが、月日が流れて
みんな作業にもだんだん“慣れて”きて
オペレーションもものすごく早くなってくる
少々の難しい出札でも、誰に聞くことなく難なくこなしていく
この年代の子達は物覚えがいいのであろう
あっという間にベテランの域に行き着いてしまうのか

 

その辺の地方駅のベテラン男性出札係より
はるかに手際がよく
接客態度は圧倒的に良い
全く気分がいい

 

ところが!それが
1年近く経って、今の季節ぐらいになってくると
慣れが、だんだんと“ダレ”になってくるのか
彼女たちの顔から
(すべての人ではないが)
笑顔が消えている

 

切符の種類を間違えて出してしまい
客から
「これ違うよ、○○って言ったでしょ。」
と言われても
「・・・・・・・・。」
無言で、切符を作り替え始めるだけ
もちろん「ごめんなさい」とも言わない

 

そして、何もなかったように新しい切符を手渡し、精算する
表情ひとつ変えずにだ

 

何が、そうさせるのであろうか
こうなってしまうと
接客を全く忘れ、ただの機械の機械的な操作員であるだけだ
そんなケースをよく見かける
東京駅のオペレーターだけでなく
地元のローカル駅でも、そんな経験をたびたびした

 

“慣れ”は、一歩誤ると“ダレ”になる
大変残念なことだ

 

名古屋に本部があるカレーショップチェーンで
「カレーハウスCoCo壱番屋」という店がある
急成長したチェーンで、今では全国に800店以上を展開しているらしい
この店の接客は
たいてい、どの店でも、その素晴らしい
一番素晴らしいのは
いつまで経ってもスタッフのモチベーションが下がっていないところ

 

私は、カレーが特に好きであるわけではないが
よくこの店に行く
ホッとするからだ

 

接客の低下は、モチベーションの低下に他ならない
「JR」と「カレーハウスCoCo壱番屋」の、どこが違うのであろう

 

自省を込めて、よく考えなければならない

 

 

もうオープン寸前の「快洗隊知立店」
?快洗隊がこれからどんどん多店舗化していく過程において
これは、大きな課題である

 

(写真の看板部分は一部合成です。)

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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