谷 好通コラム

2003年03月04日(火曜日)

655話 貧すりゃ鈍す?

前回の話で
会社が赤字経営になってくると
かえって採算感覚が鈍くなって
経費の節減、仕入れのチェック、増販に対する意欲
赤字の時こそ、しなければならない経営努力がおろそかになり
お金の使い方が投げやりになる
下手すると赤字スパイラルに落ち込む
というようなことを書いた

 

今回は、それとはチョッと違った話

 

会社が赤字になると
商品力を落としてしまう例

 

昨日、松山で泊まったホテルは
間違いなく赤字経営であると感じた

 

設備的にはそれほど悪くない
料金もちょっと高いがまあまあ(7,700円)
いつものインターネット「旅の窓」で探してもらったホテル
(実は、私はこのサイトに登録したパスワードを忘れてしまい
不本意ながらこのところ、事務所のSさんに宿を探してもらっている)

 

部屋も広くはないが、それほど圧迫感はない
しかし、宿泊客は少なそうだ
レストランにも誰もいない
「ここで食事をしたら、いつ仕入れたか解らない材料で料理をするのだろうな」って
そんな感じ

 

フロントには、おじいさんと、入ったばかりであろう若者が立っていた
出来るだけ経費を節減しているのであろう
必要なところだけ照明が着けてあり
あとの不必要なところの照明は消してあった
一見、フロントが“休み”のように見える

 

本館のとなりに新館があって
私は新館のほうの部屋であった

 

新館だけあって、設備は最新である
ロビーは大理石の床、大理石のフロント、シャンデリア
ただし、誰もいなかった

 

チェックインなどの業務は、すべて本館のフロントで行い
新館のロビーには誰もいないし、何も置いてない
売店も閉めてある
フロント業務の合理化なのであろう
その様子は結構不気味である

 

部屋には、最新設備
枕元ですべてがコントロールでき
しかも部屋のテレビとは別に、枕元にもすごく小さいテレビが付いていた
(写らなかったが)

 

冷蔵庫には何も入っていない
これは、ビジネスホテルでは当たり前で
何階かに自販機があって
飲み物などをそこで買ってきて、自分の部屋の冷蔵庫に入れる仕組みだ
ところが
新館のどこにも自販機はない
本館に行っても自販機はない
それは、道路に面した外に置いてあった
自販機は外に置いた方が、通行人も買ってくれるはずだから
よく売れるだろうと考えたのか

 

部屋の掃除も決して行き届いているとは言えない
極端な人件費削減を行っているらしい

 

タオルは全部濃い青色、シミがあっても解らない
しかし、ビジネスホテルには珍しく
風呂に「ヘアートニック」「ヘアリキッド」「アフターシェープローション」の
ミニボトルのセットが置いてあった
これは、きっと
大量購入したものの不良在庫になったものだろう

 

新しいのに、なんとなく汚い
とにかく不気味なホテルであったのだ

 

いろいろな事情で客足が減ったのであろうこのホテル
経営努力として
経費節減、それも一番効果的な人件費の節減を徹底的に行ったのか

 

それはそれとして正解であろう
売り上げが落ちているのに、何の努力もしないのでは、話にならない
特に人件費は、経費の中でも最も大きいものだ
ここに手を着けないで、経費節減は絶対出来ない

 

しかし、それを下手に行なってしまった結果
「快適な宿泊」「利便性」というホテルの商品そのものの
商品価値を下げてしまっている
これでは元も子もない

 

人件費の削減で
ただ単に人数を減らすだけでは経営改善に全くならない

 

人員を減らす時には
「理にかなった業務の効率化」「スタッフのスキルアップ」
この二つを伴うことが絶対条件である

 

能力とモチベーションの低いスタッフが大勢でやる仕事と
高い能力を持った、やる気のある少人数のスタッフがやる仕事では
後者の方が、圧倒的に質の高い仕事が出来るものだ

 

過去の甘い状況での仕事に
慣れてしまっているスタッフを、たくさん抱えている場合
企業は再構築(リストラ)をするが
「少数“精鋭”体制」にするという肝心な努力を怠り
ただ単に人数を減らすのだけでは
仕事の質、商品の質を下げることになって
なおいっそう売り上げを減らし
利益を減らし

 

やはり赤字スパイラルの中に落ち込んでいくことになりかねない

 

企業の再構築
リストラクチャリングが目的の人員削減は
きちんとその本質を認識した上で実行すれば
少数“精鋭”体質を作り出す、絶好のチャンスでもあるが

 

経営者が「赤字経営におびえる」だけで、「客の満足度に鈍くなり」
商品価値の無意味な低下につながるような
単純な人員削減、人件費削減は
「貧すりゃ鈍す」
企業の再構築でもなんでもなく、ただの自滅型企業縮小でしかない

 

その意味でも、今の厳しい状況の中
企業の優劣に差が、なお一層出る時代なのであろう

 

自省の意味を含めて、私自身、よく考えなければならない

 

 

ただいま松山から大分へのフェリー
ダイヤモンドフェリー・神戸⇔松山⇔大分の便
「クィーンダイヤモンド号」の中だ

 

神戸からの到着が強風のために遅れ、松山港を40分遅れて出発
※松山港に入港するフェリー

 

 

2等客室とは雑居部屋で
一人分の居場所は、幅・約60cmのマットの上
しかし、今日は空いていたため3人分は占拠できる、快適だ
(前話で乗船料1,300円と書いたが、あれは割引料金。2,600円が正解でした)

 

 

※ラウンジ

 

 

※松山を出港直後、松山空港に降りる飛行機が見えた

 

 

※ほぼ瀬戸内を走るこのフェリー、まったく揺れもせず快適そのものでした。

 

 

4時間と少しで大分港に到着
九重連峰と別府の街がきれいに見えた

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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