谷 好通コラム

2002年07月24日(水曜日)

476話 夢の様な出来事

このところ、予定に“追われている”
予定は追っていくものであって、追われ始めるといい仕事が出来ない
主体的に予定を入れていけば
効率的な日程を組むことが出来る
しかし、逆に
追われ始めると、こなすのが精一杯になって
全く非効率的な日程になっていってしまう

 

刈谷→大阪→小郡→広島→刈谷→福岡→名古屋→東京→名古屋
これで3日間の日程

 

どこかで歯車が狂ってしまったようだ
特に今回は予定外の日程が入った
とはいえ、そんなことでガタガタになってしまうような予定ではイカンのであって
自らの主体的な行動を、今一度再構築しなければならない

 

予定外の日程とは
一昨日の
社員の肉親の方のお葬式と、同日にもう一人のお通夜
喪服を着たまま
1日に4回も新幹線に乗ってしまった

 

大阪でのお葬式は、営業所責任者Kのお父さんがお亡くなりになったもの
長く病に臥せっておられて
何度も危機を乗り越えてきたのだが
とうとう帰らぬ人となった
長男である責任者Kは、去年も今年も社員旅行も行かず、であった
お葬式は、心のこもった式であった
ちょうど1年前、私も親父を亡くし
その時のことを思い出し、Kの姿が自分にダブって見えた

 

暑い中
大阪でのお葬式のあとは、そのまま新幹線で今度は「小郡」に
小郡では、中国担当の山本君、そのおばあさんのお通夜に出る“予定”であった

 

お通夜の会場は
小郡から車で4~50分行ったところ
有名な秋芳洞がある秋芳町
かなり田舎である

 

普通、社員のおじいさん・おばあさんの通夜・葬式にはあまり出ないが
山本君は、おばあちゃんにゾッコンで
広島赴任の時にも
「おばあちゃんの傍にいてやりたいなぁ」と、困った様子であった
その大切なおばあちゃんが亡くなったとするなら
これは行かなくちゃ、と思ったし
山本君のご家族に挨拶をしたかったので、異例ではあるが行くことにしたのだ

 

午後6時開始時間に数分遅れ
すでに
お通夜は始まっていた
田舎のごく普通の民家
2間続きの座敷に親戚の人たちみんなが座って
揃ってお経を読んでいる

 

その中に山本君もいて
私を見つけると
「ありがとうございます」と言って、席から立って出てきた
ニコニコ笑って明るい・・・何かヘンだ

 

それから、読経の席に招かれ、座った
これが田舎の通夜なのか
十数人の親戚縁者が
若い和尚の読経に合わせて、みんなそれぞれ一心に経を読む

 

お経は、歌とは違って
それぞれが、自分の自然な音程で、息継ぎもそれぞれで
不思議な自然さであり
ボワ~ンとして包み込まれるようなハーモニーを奏でる
心を込めた読経であるが、力みはまったく感じない
その心地良さに
自分の心が、宙に浮く錯覚に襲われる

 

私は足の具合が悪くて
座敷に座ることが苦手で、正座は10秒も出来ない
あぐらをかいて座っても、悪い方の足の筋がすぐに痛くなってきて、つらい
痛くなってくるまでに30分もかからない
それを過ぎると、あぶら汗が出てくるほどになる
だから、ここ何年か、足がしびれるまで座ったことが無い
親父の葬儀の時も、法事の時も
それがつらくて、我慢し過ぎてしまい、そのあと何日も後遺症のようになってしまった

 

田舎のお通夜なので、それがちょっと気になっていたが
もしそうなったら、早々に引き上げればいいかと、思っていた
ところが
不思議なことに
読経の不思議な響きに酔っていたら
あっという間に40分以上が経ってしまったのだ
足はそれほど痛くない

 

むしろ、縁側から入ってくる風が涼しくて、心地よい

 

ふと気が付くと
山本君が、ひときわ大きく経を読んでいる声が聞こえてくる
きちんと正座して
背筋をピンと伸ばして
堂々と経を読んでいる

 

サーキットを走っている彼とは別人のようで
その姿が不思議であった

 

私は経が全く読めない
肉親のお通夜に、縁類みんなで、経を合唱している山本君の姿は
私にとっては、驚きであり、思わず尊敬してしまった

 

田舎に住んでいる人にとっては、当たり前なのかもしれないが
私には新鮮な驚きであった
肉親をみんなの読経で送る
なんて素敵なことだろう

 

私はこの人たちを心の底から、幸せだなあ、思った
うらやましいと思った

 

お経の合唱が終わり、若い髪フサフサの和尚の講話が終わって
皆さんに挨拶をした
山本君が、育ての親と言う人を紹介してくれた
年の頃なら70過ぎ
それから、「私は産みの親です」と
隣でニコニコ笑って、50過ぎのおばさんが自己紹介

 

みんなニコニコ
ポカンとしていると、「育ての親」と言う人が、「祖母です」と
またニコニコ笑っている
それから
妹とか、何とか色々な人が挨拶をしてくれて
みんなニコニコ

 

私も、よく分からないまま、ニコニコ

 

結論!
このお通夜の主は、山本君の“ひいばあちゃん”
“ばあちゃん”ではなく“ひいばあちゃん”なのだ
だから
山本君は、ひ孫になる
(どうもT部長が、“ひい”の部分を聞き落としてしまったようなのだ)

 

私は、山本君の“ひいばあちゃん”のお通夜にのこのこ出て行ってしまったのだ

 

享年99歳!!
大往生である
見事な大往生
みんなニコニコの訳が分かった

 

ひいばあちゃんが、亡くなったというので
ひ孫の勤めている会社から、花輪が届いて
その会社の社長が弔問に来る
みなさんは、「変な会社」だと思ったであろう
だから、私は、ヘンな会社の、ヘンな社長
顔から火が出るほど恥ずかしかった

 

しかし
皆さんは、ニコニコと「よう来てくれました」と、心底から歓迎してくれた
うれしかった

 

「来て良かった」と、本心で思った
T部長の勘違いが、素敵な、夢のような1時間程をくれた

 

思い出に残るひとときであった

 

ひ孫・山本君とそのフィアンセ、もう一人はだれか?
縁類の子供には違いない
フィアンセの彼女は、親戚の人たちから親しげに溶け込んでいて
それも素敵な光景であった

 

 

こんなところへ住んでみたいなぁ

 

 

ここはひとつのユートピアかもしれない

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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