谷 好通コラム

2002年07月21日(日曜日)

474話 プロの仕事とは

一昨日、平年より18日遅れで梅雨明け宣言が出た

 

満を持したかのように
洗車客が殺到し、快洗隊は大繁盛

 

昨日20日は、洗車売り上げが平月としてはギネスの
37万5千円に到達した
今日・日曜日も、昨日ほどではないが朝からラッシュが続いている

 

そんな中、朝から快洗隊でビデオ撮りをした
「快洗Boss」のプロモーションビデオである
いつもなら、ビデオは自分達が素人仕事で作ってしまっていたのだが
今回は、高額商品の紹介でもあるので
プロに頼むことにした

 

撮影スタッフは総勢7名
実にいいテンポで撮影を進めていく
さすがにプロと、思わされた場面が何度と無くあった
449話に出てきた、Iさん
つまり今回の撮影を引き受けてくれた会社の社長Iさんも
快洗隊に来て撮影の様子を見に来てくれた
Iさんが直々に撮影現場に出てくることは非常に珍しいことだそうで
スタッフもちょっと緊張気味か

 

私達ど素人と
彼ら撮影のプロとの違い

 

当然ながら機材は違う
とんでもなく違う
彼らが持っているビデオカメラは、何千万円もするものだそうだ
ホームビデオがデジタル化されて
いくら画質が良くなったとはいえ、その結果は雲泥の差であろう
その他諸々、大量の機材を持ち込む

 

もっと決定的に違うのは撮り方

 

自分の目に映ったものは信用しない
あくまでもファインダーを通して見えたものだけ見て
私達の日常での視点とは全く違うアングルまで使って
自在に撮っていく
どんな画像になっているか
ハタから見ているだけでは全く分からない

 

私達は何かを見たとき
その物とか情景だけではなく、その背景も一緒に見ている
加えて、その時の状態
温度とか風の具合とか、そんなものも感じながら物を見ている

 

しかし、それを画面として切り取ってしまったとき
写っていない背景は、“無いもの”であり
背景があることによって、その物が理解できる事がある場合
その背景が無くなってしまうと
その物が何であるのか分からなくなってしまう

 

そんなことを良く考えながら、撮っているように思えた
快洗隊での撮影の時は
モニターを見なかったので
どんな場面になっているのか、想像がつかないが
いずれにしても
私達の撮り方とは、全く違う視点で撮っているようだった
見ていて感心するばかり

 

 

それとは逆に
商品などを静止画像として撮る時は
画像に写っている商品だけが主役であって
脇役も、背景も無い

 

だから
背景は基本的に白であって
背景は“無い状態”にする

 

だから
その商品が置かれている“環境も無い”

 

実は
快洗隊の撮影後の細かい商品の撮影は
本社の2階の会議室で行う予定であったが
しかし、そこは狭すぎるということで
監督が、「下の倉庫で撮りましょう」と言った

 

倉庫は、スポットクーラーがあるだけで、冷房が無いに等しい
暑い!
だけど、絵には関係ないから「構いません」と言う

 

それで結局
スタッフ全員、何時間も!
温度が確実に40゜C以上!はある倉庫で撮る事になった

 

しかも
余分な光が入るからと、倉庫の大扉まで閉めてしまった

 

しかも
スポットクーラーの風が邪魔だからと
拭き出しをアッチに向けてしまった
(スポットクーラーはコッチに向いていないと全く涼しくない)

 

し、しかも
撮影の為の照明は、恐ろしく熱~い熱い

 

たぶん撮影している倉庫の片隅は
50゜~60゜Cは、あったのではないか

 

そんな環境の中で
商品の並べ方に細かく注文をつけて
1カット、1カットに、こだわりながら
実に丁寧に、何カットも、何カットも撮っていく

 

この時は、モニターを見せてもらったのだが
画面の中に並んでいるケミカルなどの商品は

 

「涼やかに映っていた」

 

このビデオが出来上がった時
この場面が、灼熱地獄の中で撮られたものと気がつく人は、一人もいまい

 

多少狭くたって
涼しいクーラーの効いた会議室で撮っても
画面の中の商品の映りがムチャクチャ変わるわけではないのに

 

「より良い画面を作りたい
下の倉庫で撮った方が、より良い画面が取れるならば
それが分かっているのなら
自分達が暑いのを我慢することは、当然のこと
それがプロと言うもの」
きっと、こんな風な考え方なんだろう

 

「すっげぇな~」
「プロってこういうものなんだなぁ」

 

私は感心してしまい、ほとんど口出しをしなかった
(これは珍しいことである)

 

 

快洗隊のスタッフもプロである!

 

どんなに暑くても
(今日の気温は35゜Cを越えて、フィールドは40゜C以上であっただろう)

 

どんなに車が混んできても

 

1台1台、きちんと綺麗に磨き上げていく!

 

店が混んで車が詰まってきた時、私はマネージャーに聞いた
「快洗Bossに入れたあの車、お客さんはもう洗ってもらえると思っているのに
機械を動かそうとしないのは、なぜ?」
「きっと、あの車のお客さんはイライラしているよ」

 

そうしたら
H.オサムマネージャーが目の色を変えてこう言った
「機械を動かして、あの車の洗車を始めてしまうと、
みんな1台ずつ他の作業をしているから、コントローラーの私が洗い始めるしかない
とすると、コントローラーとして接客に行く時には
作業を途中で中断することになってしまいます。
機械に入れたのは、洗車の準備をしたということで
専任であの車を洗うスタッフが付かなければ、Bossを動かす訳には行きません。
あのお客さんには、待ち時間を言ってありますから大丈夫です。」

 

私は、それでも、なお言った
「それは、分かるけど・・・でも、お客はイライラしているよ」
その場は
「むずかしいなぁ~」で終わってしまったが

 

あとでじっくりと考えた

 

確かに、マネージャーの言う通りであって
私が完全に間違っていた

 

お客さんは「手洗い」を注文しているのだから
人間が付かなければ、洗えない
途中で放り出すわけにはいかない
その専任の人間がいないのだから、機械を動かしてはいけないのだ

 

私は長い間、ガソリンスタンドをやってきて
自動洗車機を使ってきた
機械をフル活動させることが、たくさんの洗車をこなす事であり
車を機械に入れたら、すぐ動かし始めることが身に染み付いている

 

ここで、売っているのは「極上の手洗い洗車」であり
機械は洗車機ではない
手洗い洗車は人間が主役であり
快洗Bossは、それを助けてくれる非常に能力の高い「道具」なのだ

 

私はそれを、いつもみんなに言っている
その私が・・
あの場面に出くわして、とんでもない間違いを口走ってしまった

 

私は、実際の作業から離れて7~8年になる
頭では分かっていても
実際に場面に出くわしたら、昔の感覚になっていた

 

恥ずかしい

 

フィールドで実際に作業をしなくなると
ボケてしまう
実践的なことを忘れて、ただの能書き人間になってしまう
私達のスタッフにも、もっともっと現場にだして、作業をさせなければ
的外れの、能書き人間の集団なってしまうぞ、これは

 

うすうす気づいてはいたが
一度背広を着て
ネクタイを締めて
能書きで仕事が出来るようになると
現場で汗を流すことを嫌がる傾向を持ってくる
これは危機的な現象だ
どんどん素人になってしまう

 

プロとは、作る・造る・作る・創る能力を持っていること

 

 

私は、現実には、もう作業を出来るような体の状態でないが
“何も言わず”
実際の作業をじっと見つめて、彼らがやっていることを
プロがやっていることを
“理解”することを一所懸命やろうと思った
”むやみに口を出さず”

 

そういえば、撮影の会社の社長Iさんも
同じようなことを行っていた
納得である

 

※ビデオカメラを向けられて、神経がカメラの方に行ってしまい
ただの素人のような動きになってしまっている“プロ”井内

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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