谷 好通コラム

2002年05月08日(水曜日)

413話 京都の不思議

2002年05月08日(水) 413話 京都の不思議
※この話は、私のパソコンが壊れる前の日
つまり5月3日に書いたものです
(やっと、仮にですがパソコンが復活しました)

 

411話の中で
日本は人が過密であり、時の流れ方が急で
目先の損得に気を取られ
古いものが大切にされていない、残っていない、と書いた

 

いや?
古いものが山ほど残っている町が日本にもある
そう思って、京都に行った

 

一人でいくつかのお寺を見て歩いた
毘沙門堂、詩仙堂、曼朱院などなど
いずれも、うっそうとした木々の中にあり
建物は何百年も前に立てられたものが、しっかりと保存されており
また、一般に公開されて、キチンと使われていた
ゴールデンウィーク真っ盛りの中であったので、人はやはり多い

 

しかし、その中でも
名神高速“京都東インター”を降りてほどなく、山手にある「毘沙門堂」は
あまり有名でないのか
人はまばらで、静かである
にもかかわらず、一番見応えがあったのがその「毘沙門堂」であった
ここは、観光客があまり多くないからなのか
本堂に上がりこんで、本尊に好きなだけ手を合わせることも出来るし
みんな勝手に鐘を叩いたり、木魚を叩いている
もちろん、ふざけてやる人はいない
お参りをするためにやっている
護摩木を熱心に書いている人もいた
素朴な信心のために、お寺が開放されている感じだ
また
たくさんの襖絵があり、それらは「逆遠近法」という変わった手法で書かれていて
絵の中のある一点に視線を置いて、絵に近づいたり、横切ったりすると
絵が動いて見えたり
絵の中の岩が立体的に見えてきたり、と不思議なものであった

 

庭もすばらしかった
今回見に行ったお寺の庭の中では、一番雄大であり、自然を感じさせられ
繊細かつ迫力があった

 

観光コースの定番になっている有名なお寺には
観光客があふれている
しかし、この寺には、もちろん観光客も来るが
その寺をこよなく愛して、通い、思いを伝えに来ている人たちの方が多い
そんな風に見えた
お寺の本来持っている役割が果たされていて
活きているお寺だなぁ、と思ったのでした。
京都「毘沙門堂」は、私のお勧めです。

 

京都には、古いお寺がいっぱい残っている
それこそ“無数”にあると思えるほど、多くのお寺が残っている

 

では、昨日の話のように、京都は人が過密でなくて余裕があるから
古いものも大切に残されているのか
とんでもない
京都は超過密な大都会である
家も、隙間なくビッシリ建っている
なのに、神社仏閣は無数があり
そのたいていは、広大な敷地を持ち
京都盆地の市街地に面した周囲の山肌には、神社仏閣の所有地なのであろう
自然のままの森が広がっている
その自然が、お寺の庭園の一部となり、背景となり、借景となっているのだ

 

たいていの大都会のように
市街地の周囲の丘陵地帯に住宅地が広がっている風景はなく
住宅が密集しているはずの山手には
優雅に、神社仏閣が自然の森の中に存在しているのだ
市街地は、京都盆地の“中だけ”のようだ
山に囲まれた京都盆地の“中”で、人がひしめき合って住んでいる
もちろん、その京都盆地の中にも数え切れないほどのお寺がある
ますます、住民の住むべきところは狭くなっているのだ
だから道路も狭い
一歩住宅地の中に入ると、車がすれ違うのも一苦労なぐらい“狭い”

 

加えて、京都には都市高速がないし
古都の美観を損ねるから、これからも半永久的に出来ないだろう
道路は、いつ来ても、どこを走っても車であふれ
慢性の渋滞で、実に走りにくい町だ
NAVIには渋滞を知らせる赤い線が、あちらこちらに出ている
京都は人の生活において、不便な町であることは間違いない

 

京都の町は古い文化を持っていることで、経済が成り立っている
みんなが見たがる神社仏閣のおかげで
観光客がいつもあふれている
海外からの観光客も必ず京都は訪れるようだ
わが英会話教室の教師、カナダ人の“アイラ”も
「京都に行ってきました(英語で)」と、うれしそうに話していた
京都は世界有数の観光都市であるのだ

 

しかし、ただそれだけでなく
市民の意識の中に、京都独特のものがあるようにも思える
京都は、明治維新まで日本の「都」であった
徳川の時代から、経済の中心は江戸に移ったが
文化としての日本の中心である「都」は、やはり京都にあって
いまだに市民の意識として、日本の中心であるとのプライドを持っている
東京に対するライバル心は、京都が一番強いと感じるのだ
大阪は東京に対して、コンプレックスのようなものを感じることがあるのだが
京都は、東京を逆に馬鹿にしているようなところがある
京都は、共産党が強い
しかし日本の中で一番共産主義的でないのが京都、のような気がするのだ
だから、この場合
反政府の心情が、結果として共産党を支持させているのではないだろうか
あるいは「反現代社会」と言えようか

 

現代社会の不便さを甘んじながらも、神社仏閣を大切にしようとする心情

 

良いとか、悪いとか別にして
大渋滞の市街地と、のどかな自然をたっぷりと抱えたお寺たちの風情から
京都らしさを
感じたのでした

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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