谷 好通コラム

2002年04月09日(火曜日)

391話 その人・その時

仕事を一生懸命やっているのに、全く成果が上がってこないものがいる
多分どの会社にも、そういう人がいる
管理職のスタッフも、どうすればいいのか分からなくて困っている

 

新人の頃は
いくら研修を重ねても
実際に顧客のところに行き、仕事をしていく中で
研修どおりには行かない事だらけで、なかなか成果は上がってこない
これは当然のことであって
経験を積むに従って、実践的なことを覚え
それに従って成果も上がるようになってくる
いわゆる、だんだん戦力になってくるということ

 

しかし、問題なのは
豊富な経験を持ち、十分な実績を持っているのに
部署が変わったり、取扱商品が増えたり、新しいことを指導したりするようになると
まったく、通用しなくなってしまうことがある
その様子を見ていると
見ている方からすれば
なぜ駄目なのかは、一目瞭然
どこが、どういう風にピンとはずれの行動になっているか、良く分かるのだが
それを指摘しても
その指摘されたことが、何故ダメのか理解できない様子で
けげんそうな顔をしている

 

彼の豊富な経験からすれば、間違ったことはやっていないのだ
自分の方法で、たくさんの成功を勝ち得てきたのだ

 

その方法で成果が上がらないのは
新しい部署の、その地域の人たちがおかしいのであって
あるいは、新しい商品が駄目なのだ
あるいは、会社のやり方が間違っているのだ

 

そうではなくて
自分の今のやり方が、新しい地域、商品、会社の方針に合ってきていない
そういう風には、どうしても思えないのだ
話をしても、堂々巡り

 

駄目だとは思っていない、正しいと思っている事を、駄目だと言われる訳だから
「理解されない」「分かってもらえない」
となり、意欲も低下する
ひょっとすると被害妄想にすら取り付かれる

 

こうなると、出口が見えなくなって来てしまう
町の居酒屋で、グチグチと愚痴っているオジサンたちもその類か

 

時代は、過去とは比べ物にならないぐらい激しく変化している
その変化の速さは、絶望的といえるほどのスピードだ
このところ、2軒目、3軒目の快洗隊直営店を立ち上げるべく
用地の物色に走り回っている
そこで驚くのは、町の変わりよう
3年ほど前にあったはずの店舗の、かなりの数が違う店舗になってしまい
町の様相すら変わってしまっているのだ
一緒にいた地元の人間に言わせると

この店は、3回経営者が変わりました
最初は、「うどんや」で、その次が「ファミレス」、この間まで「とんかつや」でしたが
今は、「居酒屋」になっています
・・・・
激し過ぎる・・・

 

どんどん変わっていくことに、自分なりに先頭を走っているつもりではあったが
チョッとうんざりするぐらい
商売のサイクルが短すぎる
目まいがしそうなくらいだ

 

こんな時代に、昔のやり方は、なかなか通用しない
必死でついて行こうとはするのだろうが
経験を積み重ねれば、積み重ねるほど
自分の中の「引き出し」が、いっぱいになってきて
新しいものを受け入れるだけの隙間がなくなってくるのか
まるで風呂がオーバーフローするように
入れた新しい湯が、入れた分だけ外にこぼれてしまう
しかも、上からどんどん湯を注ぐので
こぼれてしまうのは、今入れたばかりの新しい湯で
古い冷めかけた湯は、底のほうにドヨーンと溜まったままだ
そのうちに新しい湯を入れるのを受け入れなくなる

 

新しい経験を、新しいものとして受け入れなくなってしまう
新しい経験をも、古い経験から作った物差しで計り
新しいものとして受け入れないのだ

 

風呂桶のキャパシティが小さいほど
若い時の経験が、その人の一生を縛り付けてしまう

 

経験を積むと、人は賢くなる
経験が知恵になり
たくさんの経験が、たしかな判断の元になり、豊かな感性の元にもなる

 

しかし、経験を積むことによって、自分の行動の拘束に結び付けてしまう事もある

 

肝心なのは、自分自身の価値観をしっかり持っていること
その価値観の元に
新しいものを、新しいものとして、受け入れてしまうだけの底の深さを持つこと

 

新しいものも、あっと言う間に古いものになり
古いものの良さが見直されることもあり
古いからこそ価値のあるものもあるのだ

 

その人、その人が自分の価値観をしっかりと持ち
その時、その時に不用に惑わされず、しっかりと時代を見据えて
その時代に通用する行動をとることが出来ることが必要なのだろう

 

満開の桜が散りかけ
新しい葉が出てきた
散りかけの花と、芽吹き始めた葉っぱが混在しているのも、またいい景色です

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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