谷 好通コラム

2002年03月04日(月曜日)

368話 洗車とラーメン?

洗車とラーメンは、商品としての性格がよく似ている。
第1話で、そう結論付けた。
この第2話では、繁盛するラーメン屋を考えていく事によって、洗車のビジネスについての考え方を探って行きたい。
いろいろな事を考えるとき、そのことを直接突き詰めていくより、他の事にたとえて考えていった方が分かりやすい、そんなこともよくある。

 

その前に、ここで「洗車」ビジネスについて、簡単な定義づけをしておく。

 

【洗車とは、車を洗う事が目的ではなく、キレイにする事が目的である。】

 

洗車という商品を、「車を洗う」という意味だけではなく、車をキレイにすること、そのすべてのことを包括した意味での商品と考えるべきである、ということ。
つまり、「洗車」という文字そのものは、「車を洗う」と書くが、ユーザーの目的は、車を洗うという行為が目的ではなく、「車がキレイになる事」が目的であるということ。
車を洗うのは、車をキレイにする“手段”であって“目的”ではない。

 

【キレイにするという目的のための手段、「洗う」「磨く」「掃除する」「修復する」】
目的である「車がキレイになる」ためなら、「洗う」ことも手段としてあるが、洗うだけではキレイさに満足できない人(あるいは時)には「磨く」という手段も必要であり、あるいは、室内のガラスとか、シート、足回り、ホイールだとかを「掃除する」する手段も必要である。
また時には、どうしても気になる傷があれば、それをリペアしたいと思う欲求があり、それも「キレイ」にする手段として考えることすら出来る。
そんな広い意味を込めて「洗車」を語って行きたい。

 

洗車ビジネスの定義
車をキレイにして、顧客の満足を売ること。
その手段には、「洗う」「磨く」「掃除する」「修復する」までが包括される。

 

では、ラーメンの話。

 

ラーメン屋さんはいっぱいあるが、わざわざラーメン屋さんなんかに行かなくてもいい理由は、山程ある。

 

その?
街のコンビニストアには何十種類かのカップラーメン、インスタントラーメンが売られている。その一つ一つにはメーカーの工夫が凝らされており、実にバラエティーに富んでいる。そして、今では商品の差別化を図るため、日本国中の有名なラーメン屋さんと提携して、その味をカップラーメンに復元し「うまいインスタントラーメン」を作る企画が流行っている。
その?
カップラーメンを作る事は何も難しくない。
熱い湯を入れて、決められた時間待てば、誰でも、いつでも、何も工夫しなくても、努力しなくても、約束された味を作る事が出来る。
その?
すでに買ってきているカップラーメンを家で作って食べれば、外に出て行かなくても済む。自分だけの時間に、テレビとか、本とか自分の好きなものを見ながら、しかも、自分の好きな格好で誰に気兼ねすることなく、食べられる。
その?
安い!
工場で大量生産されたカップラーメンは、ラーメン屋さんで人の手でいちいち作られるラーメンより、圧倒的にコストが安く、どんな高級カップラーメンでも、ラーメン屋さんよりは「安い!」

 

それでもなお、ラーメン屋さんは世の中にあふれるほど有って、もっともポピュラーな外食になっている。何故人々は、自分で作る事に何の不自由も無いラーメンを、わざわざラーメン屋さんに食べに行くのであろうか。
「外に出ていて、たまたま外食になってしまったから。」こんな理由も有るだろう。しかし、そんな時でも、私達はうまそうなラーメン屋をつい探す。だから客が一人も入っていないようなラーメン屋は避けがちだ。多少待ってでも“行列”の出来ているラーメン屋で食べようか、などと思ってしまうものだ。
何故、ラーメン屋が成り立っているか、
「うまいラーメン屋!」一言で言えばこれに尽きる!自分で買ってきて作るラーメンよりも、もっとうまいラーメンを食べられる事を期待して、うまそうなラーメン屋を探す。

 

ここで、味という要素を別にして、単純に外食の店舗を考えた時、繁盛店を作るには色々な要素がある。
?まず立地。たくさんの人が商圏に居て、そこへ来るのが便利な場所。目立つ場所。
?とにかくデッカイ看板を立て、たくさんの人に店の存在を告知する事。
?感じの良い接客。客の立場に立ち、不快感を与えないCS精神あふれる接客。
?清潔感あふれ、いつも掃除が行き届いている。
?漫画など、ラーメンを食べながら楽しめるものがある。
?かわいい女の子の店員さんがいて、目の保養になる
などなど

 

しかし
その店のラーメンが“まずくては”、すべてが台無しになる。
?自分の家のすぐ近くにあって便利な店だが、ラーメンはまずい
?でっかい看板が有ってよく目立ち、一度入ってみたが、まずかった
?店員さんは、みなすごく感じが良く、気配りもすばらしいのだが、ラーメンはまずい。
?清潔で、気分がいい店だが、ラーメンはまずい
?漫画がいっぱい置いてあって、楽しいのだが、ラーメンはまずい
?一目ボレしたかわいい女の子がいつもいるのだが、ラーメンはうまくない

 

一度入って見るが、食べたラーメンがうまくなかったら、なかなかもう一度行こうとは思わない。商売、繁盛するかどうかは、リピーターが多いかどうか、客が居着くかどうか。せっかく努力して、また、資金を投下しても、目的であるラーメンがまずかったらそれで終わってしまう。

 

ラーメン屋は、ラーメンがうまくなければ話にならない。
便利さも、目立つ事も、CSも、清潔である事も、楽しい事も、かわいいオネェちゃんも
ラーメン屋さんはラーメンがうまくて、はじめてプラスαのメリットになり得る。

 

でも、ラーメンがうまいこと、これがなかなか難しい。
なぜならば、人それぞれ、うまいと感じるラーメンの味が違うから。うまいか、まずいかは人によって感じ方がバラバラで、千差万別なのだ。
こってりとした豚骨スープでなければ、絶対にラーメンではないと、福岡営業所のHIRAYAMAは言う。札幌営業所のTAKAは、観光客相手のあの味噌ラーメンを道産子は食べない。もっとサッパリとした醤油ラーメンこそが札幌ラーメンだと言い張る。
と思えば、私は、スーパーの片隅でやっている「寿がきや」の中途半端な豚骨ラーメン(300円)がおいしいと思っている。
細麺でなければダメだ、チヂレ麺こそがラーメンだ、と、言い出せばキリがない。
人それぞれ「好き好きがある」という事であって、うまいという事に絶対的な基準などない。だから、ラーメン屋さんは自分の味覚と、感性を頼りにして自分が一番うまいと思うラーメンを極める。それが多くの人に共感を持ってもらい、「うまい」と感じてもらえれば繁盛するだろうし、誰もその味をうまいと思わなければ、誰も食べに来ない。
だから、ラーメン屋さんは、繁盛店のラーメンを勉強のために食べに行って、多くの人がうまいと感じる味を自分の下に覚えさせる。それが自分に共感できるものならば、一生懸命その味を出せるように努力するし、その過程で自分なりの感性・味も加えていこうとする。
修行である。

 

ラーメン屋さんは、「味」に全精力を傾ける。
その気の無いラーメン屋さんは、たぶん、一番安くて、仕入れが楽な食材屋さんから当たり前の「麺」を仕込み、通り一遍の茹で方で、出来合いのスープの素を買ってきて、それを湯で割って、スープを作るだろう。当たり前のラーメンの出来上がりだ。
まずくはないかもしれないが、うまくも無い。個性も無い。
そんなラーメンを出しているラーメン屋さんが、いくら便利な場所に目立った看板を立てて店を出しても、いくら愛想を振りまいても、漫画を置いても、かわい子ちゃんを揃えても、決して繁盛するとは思えない。

 

ラーメン屋さんはラーメンの味に自分のポリシーを持ち、客に「うまい」と言わせたいと努力する。そんな事が一番大事なことではないだろうか。それが客の一番望んでいることだと思うし、真の意味でのCS、顧客満足だと思うのです。
その上で、店は清潔でなければならないし、便利な場所にあって欲しいし、感じのいい接客があれば最高だと思うのです。

 

この話、2話でまとめるつもりだったが、思ったより長くなってきてしまったので、一番肝心な話、「では洗車はどうすればいいのか」を、明日もう1話書くことにします。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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