谷 好通コラム

2017年06月01日(木曜日)

6.01.私の思春期は劣等感のかたまりだった。

私は四才の時、脊髄性小児まひ(ポリオ)にかかって、
左足に障害を持ちました。
でも、
子供の頃は、それを意識したり、
自分が他の人よりも劣っているとはまったく思いませんでした。
というよりも、
自分を他人や友達と比較すること自体がありませんでした。
自分以外の人、つまり他人は、
自分にとってやさしい人か、好きな人か、怖い人か、嫌いな人かであって、
他人にとって自分がどうなのかは考えもしません。
だから自分が足に障害を持っていても、
それが他人と違うことであることにすら気が付かないものです。
私はただ、競走したら誰にも勝てないだけで、
それが自分が劣っていることだとは全く思いませんでした。
ただ足がひどく遅いだけです、

 

赤ん坊が自己保存のかたまりのように、
幼少時は、自分から人を見るだけで、
人から自分がどうみられるかは、意識せず、気づきもしません。

 

それが、思春期を迎えて、
自我に目覚め、
他人から見られている自分に気が付くと、
猛烈に「どう見られているか。」が自分の思考と行動を支配します。
真っ先にヘアースタイルを気にし出し、
やたらと整髪料を使い始めます。私はバイタリスでした、
それから異性が気になりだし、恋をして、胸がときめいて幸せですが、
自分がその娘からどう思われているか、
どう見られているかの不安が自分を支配するようになりました。
そんな時に、
通学の時に、ふと道端の家のガラスに写った自分を姿を見て、
自分がデブで、尻が出っ張っていて、
ぴょこぴょことびっこを引きながら歩く姿がひどく不恰好に思えて、
劣等感のかたまりになりました。
すると、もう、
恋した女の子に「好きだ」なんて絶対に言えません。
小学校5年生で長谷川さんに恋をして、
でもすぐに、たまたま隣の席になった西尾さんを好きになり、
でも、西尾さんが八田君というスマートでイケメンな男子を好きだと聞いて、
絶対に自分には勝てっこないと思って、負けたみじめさを勝手に背負い、
でもしばらくしたら、同級生の杉浦さんを好きになって、
でも、「好きだ」とは言えず、
私は21才で結婚するまで、
何人もの数えきれないくらいの女性を好きになりましたが、
一度も「好きだ」とは言ったことがありません。
言っても女の子から「私も好きです。」なんて、
言われることはないという自信というか、劣等感がありました。

 

でも、それが無くなったのは意外なことでした。

 

私は小さい時から親父から
「お前は足が悪いんだから、
座って働く仕事しかできない。だから、もっと勉強しろ。」
と言われ続けていましたが、
私はそれが自分の劣等感を逆なでされるようで
嫌で嫌で仕方ありませんでした。
だから、勉強はしましたが、
仕事は、親父に逆らって、
立ち続けなければならないガソリンスタンドを選びました。

 

まだ若かったので、
足のハンディは頑張れば何とかなりました。
そのガソリンスタンドの仕事で、いい成績を出すことが出来たので、
私の見た目の劣等感は薄れ、
痛みを我慢して仕事で人に勝ったことで、
足のハンディを劣等感に感じることがなくなったのです。

 

デブで、決していい顔をしている自分ではないことは知っていて、
軽い劣等感は持っていましたが、
結婚したことで、それもどうでもよくなって、
自意識に苛まれることはなくなりました。
だんだん、
私は見た目通りのそのままの自分で良くなりました。
仕事で自信を持って
ビッコを引いて歩くのも平気になると、
見た目では何もそれ以上の劣等感を持ちようがないのです。

 

 

人は他人から自分がどう見られているか、
バカにされるような恰好をしていないだろうか。
しみったれて貧乏に見られないか、
どんくさく見えないだろうか
バカに見えないだろうか
田舎もんに見えないだろうか、
役立たず見られないだろうか、

 

人は、周りから自分がどう見えるのかを、すごく気にします。
特に思春期は、
自分からは外を見ているだけだった子供から、
自我に目覚め、外の人から見られている自分の存在に気づき、
多くの場合、自分が嫌いになり、
自分が信頼していた親すら嫌いになって、不安になって
自分に自信が無くなって、反抗期になったり、
何とか見た目だけでも取り繕おうとします。

 

そして、見た目を良くしようとする心情は、
大人になっても続き、
やたらとお洒落をしてみたり、服装に凝って見たり、
高い時計をはめて金持ちに見られようとしたり
最後には、たとえば目を大きく見られたいばかりに美容整形を受けて、
親からもらった体に手を加えて、化けたりして、
実際の自分と違う自分に見られることに腐心して、
自分自身が化けた自分になり切って、
本当の自分を見失い、失ってしまうと、
見た目だけのつまらない人になってしまいます。

 

私は親父の「お前は足が悪いんだから、・・・・」に反抗して、
わざわざ立って働く仕事について
その仕事でうまく行って、自信を持ち
見た目を気にしない価値観を持つことが出来ました。

 

今はもう親父に、ただ感謝するばかりです。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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