谷 好通コラム

2001年12月07日(金曜日)

297話 静かな街と人

年末が近づくと
また、やたらに工事が多くなるように思える
車で10分も走ると
道路か、町並みの中に工事を見ない事はない

 

何のために壊しては、また作るのか
街としての完成の時は、いつか来るのか
全体としての完成がないまま、壊し続けて、作り続ける
いつも工事中
ずうっと、製作中

 

結局、街はどうなりたいのか
人は、町をどうしたいのか
人は、どんな風に完成した町に住みたいと思っているのか
それとも
工事をしていたいのか
工事そのものを続けている事に、意味があるのか

 

諫早湾をギロチンで締めてしまった時
議論が沸き起こった
諫早湾を締めてしまえば、有明の海が壊れる事は誰でも知っていた
人口の何万倍もの生き物が死んでしまう事も、みんな知っていた
あれは、あのギロチンを作る工事、そこに最も意味があった
工事そのものに一番意味があった
工事をしてお金を使う事に意味があった
その代償として
何億、何十億の生き物の命が天秤にかけられたのだ
私は、いまだにそう思っている
人は、どこかで何かが、ズレてしまったのか

 

人の文明は、今、加速度的に進化している
私たちもそれについて行かねばと、足をジタバタさせながら頑張る
しかし、文明が進化することとは何だろうか
人が欲望をより多く満たす事が、進んだ文明なのか
しかし、欲望は限りない
欲望が欲望を呼び
一つの欲望が満たされた瞬間から、また新たな欲望が始まる
あるいは、満たされたその瞬間に気が付かない事すらある

 

人が本当に望んでいるのは、平和であろう
おだやかな気持ちに満たされた平和であろう
その事もみんな知っている
でも、目の前の欲望をとりあえず満たしてから
平和になろうと、みんなが思うので
とりあえず、目の前の欲望をみんなで取り合う
そこがスタートで
スタートを切った瞬間に、また次のスタートが見えて
またスタートを切る
いつまでもスタートのままで、行き着くゴールはない

 

すべてが完成する前に、またどこかで壊し始めて
作るために壊して、あるいは壊すために作る
止めどもなく続く工事中のように
完成する事は決してない

 

平和な、作り上げられた街などないと思っていた
街が完成して、静かな平和に満たされている街などないと思っていた

 

地球のほぼ反対側に飛んでいって
それが間違いである事を知った
平和を感じさせる街があった

 

変わらない事が素敵であることを教えてくれた街
自分の生き方を考えさせられてしまう

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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