谷 好通コラム

2002年11月21日(木曜日)

578話 撤退も前進の源

UFJ総合研究所から、毎日メールが送られてくる

 

今、何かと話題になっているUFJ銀行が
わが社のメイン銀行なのだ

 

当初は、義理でUFJ総合研究所の会員になったのだが
毎日送られてくるメールが、最近は楽しみになってきている
その中で、非常に共感できる話があったので、ご紹介したい

 

 

『失敗できる「ゆとり」を創ろう』
吉本興業株式会社 代表取締役会長 中邨 秀雄

 

吉本興業は決して順風満帆、ここまできたわけではありません。その歴史はまさにトライ&エラーの繰り返しでした。成功した事業や成功したタレントが脚光を浴び、マスコミにもてはやされるので「失敗」がないように見えるだけ。

 

吉本では、単なるお笑いの興業屋からの脱皮と経営の安定化をめざし、東京での夕刊紙発行やディスコの経営、中国進出など、これまで様々な新事業に挑戦してきました。そして、その8割は失敗で、残りの2割が現在の吉本を支えています。創業メンバーの一人である故・林正之助から経営のバトンを引き継いだ僕に至るまで、失敗し撤退を余儀なくされた事業は100を下らないでしょう。

 

夕刊紙、ディスコ、中国はいずれも失敗で、1993年に進出した夕刊紙では結局、3億円をフイにし、スタートからわずか4ヶ月で撤退しました。

 

 

◆どんな事業も撤退を視野に入れる

 

僕がそんな失敗をしても、大したダメージを受けずに済んだのは、二つの姿勢を崩さなかったからです。一つは、どんな挑戦も自己資金の余力の中で取り組んできたこと、そしてもう一つは、常に一定の期限を区切ったこと。この二つです。

 

現在、吉本の経常利益は30億円ほどですが、うち10%、つまり3億円は失敗しても構わないと考えています。言わば、捨て銭覚悟の先行投資。また、期限は長くて1年、通常は半年で区切り、それだけの時間を与えて赤字脱却できないものには、基本的に撤退命令を下しています。

 

それはちょっと短かい、と思われる方もいるでしょうが、これまでの経験上、可能性のある事業なら半年も経てば黒字基調になるものです。「追加投資であと2億円」「あと1年」などと撤退を先延ばしにすれば、傷が深まるだけ。必ず成功する事業などどこにもないし、どんな事業であれ、常に引きどきを視野に入れておかねばなりません。

 

よく「背水の陣を敷いて」「社運を賭けて」などと言う人がいますが、たとえ成功したとしても、それは単なる僥倖でしかない。そんなことを繰り返していたら、間違いなく会社は潰れます。

 

 

◆吉本は常に「まず事業ありき」

 

企業には挑戦する姿勢が欠かせません。特にこういう時代には、トップはもちろん、従業員も含め、チャレンジ精神が不可欠であり、それを企業風土としてシッカリ根づかせる必要がある。吉本は常に「まず事業ありき」で、社員には「ダメでもともと。なんでもいいから、とにかくやってみろ」と言いつづけています。

 

それができるのは吉本が儲かっていて余裕があるから、そんな反論があるかもしれません。けど、吉本だって初めから余裕があったわけではない。ほんの少しでも儲かったら、明日や将来のことを考えて新事業に先行投資をする。そしてそこでわずかに花開いた事業の利益の一部を再び先行投資に回す。この繰り返しで、いまの金銭的・精神的余裕をようやく創り上げたのです。

 

「新事業を手がけたくともお金がない」と嘆く経営者は沢山いますが、そのための余裕をいかに捻出するか。これもトップの力量の一つです。ジリ貧になってからでは遅い。常日頃からどうやったら「ゆとり」が持てるか、考えつづけることが大切なのです。

 

 

この文書の趣旨は
「引き際」の重要性と
「挑戦」の姿勢の重要性が、矛盾するものではなく
むしろ、両立することが自然なのだ、
と読んだ

 

引き際は、会社経営において最も重要なことだ
収支改善の見通しがないにもかかわらず
いつまでもダラダラと
足を突っ込んでいて、深みにはまり、その足を抜けなくしている
そんなケースがよくある

 

この会社も
たくさんのことに、挑戦してきて
予想外に苦戦して
深みにはまりそうになった時
思い切ってフン切りをつけ
その事業を深追いすることを辞めてきた
そんな気がする
そして
そんな時にこそ、また新しいことがうまく行って
この会社は発展してきた

 

辞めるという事は
それまで、何とかしようと一生懸命やってきたことを思うと
なかなか、思い切ることはつらいもの
そんな時
必ず、フン切らせてくれる何かのキッカケがあった

 

「やめた!」
そう思わせてくれる出来事が必ずあった

 

その事業をやり続けていた時は
辞めてしまうと、どうなるのか解からないから
恐怖を感じるが

 

辞めてから、初めて見えてくるものがあって
「なぜ、もっと早く辞めなかったのだろう」とさえ
思ってしまう

 

うまく行かなかった事業を、深追いしている時は
努力が実らず、空回り
消耗を続けるが

 

フッと、深追いをやめると
体が軽くなって
頭がクリアになって
すぐに新しいエネルギーが湧いてくるのだ

 

そんな時に、当たり前のように新しい発想が
体中に満ちてきて
自らびっくりするぐらい
新しい事業がうまく行き始める

 

そんなことの繰り返しであった
私はそう思っている

 

引き際がいいと
そのあと、びっくりするほど新しい事業がうまく行き始める

 

数え切れないほど
そういう経験をしてきた

 

自分の事業が
深みにはまっていることに気がついていても
深追いを続けると
そのうちに
辞める力すら無くなっていく

 

その意味では、事業は麻薬に似ている
サラ金にも似ている

 

 

※関係ないが

 

私は、昨日深みにはまりかけたか?
「体に残る快感」を振り切らなくてはならない

 

あ~~~快感
わずか“3cm”のつばぜり合い

 

 

(日刊自動車新聞・伊吹記者撮影のド迫力写真、貰った時には思わず息を呑んだ)

 

スタート直後のつばぜり合い
両車の間はわずか3cm
それでも、この2台はかすりもしなかった

 

プロのレースドライバーは
時速200km以上でも、1cm単位で車をコントロールできるという
とても常人の入り込める世界ではない

 

引っ込め!谷好通である

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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