谷 好通コラム

2003年04月08日(火曜日)

683話 負けたくない!

昨日のレースで、最もエキサイティングな場面があった

 

90周レースの終盤
ラストドライバー畠中が、70周目にかかった頃
その時、我が25番キーパーレビンはトップ!を走っていた
このあと、サーキット全体が猛然とヒートアップするようなことがあったのだ

 


このジュニア耐久レースは
今年から、レギュレーションが変更になって
出場車両のクラスによって、ハンディキャップタイムが設定されていて

 

バリバリに改造されスリックタイヤを履くGTクラス・シビック?50が「12分」
型遅れながらGTクラス・シビックでスリックタイヤを履く?21が「8分」
Nクラスで、Sタイヤを履くシビック?37と
同じくNクラスのレビン・Sタイヤの我が?25が、「6分」

この2台は1周約1.5秒の差(90周×1.5秒=135秒)あるが
燃費とタンク容量の関係で、ほぼ同等のハンディ
そして、それより下位のクラスはハンディキャップなし
しかし、37番はちょっとしたミスで、1分のペナルティを食って25番の後ろにいた

 

そんな条件の中で
順調に走っていた25番レビンは
70周目ぐらいからトップ!に立ち
ハンディキャップを消化した21番、50番のGTシビックと
ぺナルティをこなした37番のシビックから
猛然と追い上げられている場面であった

 

※話は戻って

 

トップに立った25番のラストドライバー畠中は
必死になって逃げていた

 

21番は
21秒後ろにいて、1周2秒ずつ追い上げる
残り20周×2秒=40秒-現在の差21秒=19秒差で負け

 

50番は
120秒後ろにいて、1周7秒追い上げてくる
残り20周×7秒=140秒-現在の差120秒=20秒差で負け

 

37番は
38秒後ろにいて、1周1秒~1.5秒追い上げてくる
残り20周×1.5秒=30秒-現在の差38秒=8秒差で勝ち!

 

21番と50番のGTシビックには追いつかれ、追い抜かれる
しかし、チームメイト37番シビックからは逃げ切れる計算

 

計算どおりに行けば3位入賞
しかも、耐久レースは最後の10周で、必ずドラマが起こる
下手すると、2位!とんでもないことが起きると優勝!
なんてこともあり得るのだ

 

逃げる25番キーパーレビン・畠中!
追い上げる、21番、50番、37番シビック軍勢!

 

7~8周で、21番シビックが追いついてきた
テールツーノーズ
ぴったり25番の後ろについた21番は
「どこからでも抜くぞ」と言わんばかりに後ろからあおる
21番シビックはスリックタイヤを履いているので、絶対的なスピードでは
25番は歯が立たない

 

しかし!
25番畠中は
「絶対、抜かせんぞ!」
2台ピッタリくっついたまま、コーナーに突っ込み
21番がインを刺そうとして頭を突っ込んできても
25番は絶対インを開けようとはしない!
(レースあとで、「でも車1台分は空けてたでしょ」と畠中は言うが、
あれは、どう見ても、絶対、空けていなかった)

 

 

ストレートで少しだけ車間が空いている

 

 

普通いくらがんばっても、そんな状態は1周も持たないのだが
畠中は、くっつかれたその周も
次の周も!
その次の周も!
そのまた次の周も!
「絶対抜かせんぞ!」でがんばった!

 

競り合いは、かえってタイムを落とす
ヒート中は1分48秒になっていて、37番がじわりと近づいていた

 

そんなことは知ったことではない
ストレートでは、それでも2~3m離れるが
各コーナーでは、くっつかんばかり
シケインでは、真横に並び、サイドバイサイドで2台一緒に入っていく
両者の間は10cmあるかどうか
ぶつからないのが不思議と言うか、うまいと言うか
キチガイ沙汰である

 

場内放送のアナウンサーが狂ったようにワメク!

「並んだ!並んだ!抜くか21番!・・・イ~~~~~ヤッ。25番抜かせない!!!」
「ブロック!ブロックだ。強烈なブロックだ~~!!」
「25番! キーパー快洗隊グリットレビン! がんばるぞ~~!!」
(「キーパー快洗隊グリットレビン」とは、25番の正式名)

 

 

4周あまりブロックしたあと
とうとう力尽きたように、21番に抜かれてしまった

 

21番に抜かれるのは当たり前である
絶対的にポテンシャルが違うのだから
しかし、畠中は「絶対負けたくない!」だけで頑張ってしまった
4周あまりといえば、10分に近い
限界を超えた状態で、歯を食いしばった

 

抜かれはしたが
それでもなお、25番は21番の後ろを必死になってついて行く

 

 

やがて・・・
21番がペースを落とし始めた
そして、ついにガクンとペースを落とした
何かトラブルのようだ

 

 

またしても、25番キーパーレビンがトップに立つ
しかし、それもほんのつかの間
猛烈な性能を持つ50番GTシビックが、圧倒的なスピード差で25番を抜いて行った

 

だが、それでもまだ2位
37番は、タイヤに限界が来ており
なかなか追いついてこない
37番のラストドライバー山本は、非常に苦しそう
21番は完全にペースダウンだ
(21番の藤田選手「ブレーキを使い果たし、サイドブレーキだけで走っていた」そうだ)

 

「2位でもいいか」
などと、罰当たりなことをつぶやいた頃
86周目

 

突然、25番がピットに帰ってきた!
「ガス欠か?」

 

ピットに入ってきた畠中
「オイルが無い!」と悲痛に叫ぶ
悔しさに、ハンドルを叩き、足をジタバタさせる畠中
沈痛なピットクルー

 

オイルの油圧が、まったく上がって来ないのだそうだ
あわてて、エンジンオイルを足すが、それほど入らない
エンジンをかけてみる
「ガラッガラッガラッ」
・・・・
完全にブローアップの音だ

 

「あと1周回る!」と、畠中は言い張るが
冷静なテツ清水が止める
周回数があと少しなので、そのままピットにいて
トップがチェッカーを受けたあと
ピットロードでコールラインを超せば完走になると言うのだ
念のためにコースマーシャルに確認する

 

その通りだ
無理して出て行っても、1周回れるかどうか分からない
ならば、完走を取るのが当たり前

 

チェッカー後
ガラッガッラといわせながら
とぼとぼと25番がピットロードを行き
ゴールラインを超したところで、息尽きた
ボヤ~ッと25番から降りる畠中

 

ポツポツと何歩か歩いて
しゃがみ込んだ

 

吉田が水を持って行き
私も、近寄っていく

 

「すいません」と一言、畠中
そのあと何をしゃべったのか覚えていない
多分、3人とも黙っていたのかもしれない
涙が止まらなかった

 

 

(グリットコラムから写真を借用)

 

しばらくして
表彰式が始まった
1位は、ぶっちぎりで50番GTシビック
2位は、チームメイト37番シビック
3位は、ボロボロになって完走の、21番GTシビック

 

私たちは、とりあえず3ラップ遅れでチェッカー扱いの、4位であった

 

表彰式を見ていても
あそこへ昇りたかった、とは思わなかった
全力を使い果たしての結果に、満足しきって
表彰台の下のピットウォールへの出入り口に3人並んで
座り込み

 

 

「キャンギャルのパンツ見えそうで見えんなぁ~」
と、私
「そうですね~、見えませんね~」と畠中、吉田

 

 

私たち3人は立ち直るのも、おそろしく早いのだ

 

(もちろん2位入賞のチームメイトに祝福を送るのも忘れなかったのだ?)

 

21番との4周にわたるデッドヒート
あそこで無理せずに
すんなり譲って、周回を重ねてい“たら”、多分2位が取れたかもしれない
エンジンがブローアップしたのは
あの時に無理したのかもしれないのだ

 

どっちが良かったのか
私たちは、あそこで戦った畠中を熱烈に支持する

 

「負けてたまるかっ!」
それでいいのである
経営者は、それでなければ勝てないのだ
「負けてたまるかっ!」

 

 

チームメイトで冷静に2位になった37番
田中さん、清水さん、山本の3人で、5月から、スーパー耐久への挑戦が始まる
しっかり完走して
出来るだけ前を走って
ばっちり、「キーパー」と「快洗隊」の宣伝をしてください。

 

 

田中選手の奥さんは、びっくりするほど綺麗な眼をした外人さんであった
日本語ぺらぺら、すごい
ピットのみんなにニコニコと挨拶をしたり
ヒェ~~~であった。すばらしい

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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