谷 好通コラム

2003年05月23日(金曜日)

716話 自ら生還した男

今日、東京で2つの対照的な出来事があった
午後一番にあった出来事

 

典型的な離陸失敗の例
小さな会社がちっぽけな目標を持って離陸したが
自己責任という
最も基本的な部分での欠如が原因で空中分解した

 

最初の時点で
気がついていたものの、その破綻はもう少し後のことと思っていただけに
少なからずショックであった

 

経営者は、自らの会社の失態が、あるいは苦境の原因が
その部下のせいであり、経営者自らの中にその因があるものでない
そう言い放ったところで
公の立場である法人の代表として、自己責任の欠如という
経営者としての資質が欠けているということを、自らが、暴露したことに他ならず

 

その経営者本人が認識する、しないに関わらず
すでに、その根源において
その会社は崩壊してしまっている

 

そんなことがあって
沈うつな時間が過ぎた後

 

 

爆発的に明るい出来事があった

 

旧友・「田(デン)国男氏」との再開である
彼とは、3年ほど前にちょっとだけ会ったことを除けば
もう10年ぶり近くの再開になる

 

彼は現在、人材教育のコンサルティングをしている
会社の経営者である
昔、私たちと取引関係にあったのだが
色々な行き違いがあって、長い時間その関係が途絶えていた

 

久しぶり会った田氏は
10年前の彼そのままであった

 

見た目もそのままならば
語り口から、その情熱あふれる生きざままで
10年前そのものの若さであった

 

しかし、10年の間に
私も思い出しきれないほどの、たくさんの事があったように
彼も10年分の多くのことがあったに違いない
彼のことだから
私なんかより、もっとたくさんの事があったのであろう
それほど激しい生き方をする人だ

 

彼が今年のはじめ、テレビに出た
30分番組の主役として

 

TBSの全国ネットでの放送であったので、私も一部分であったが見た
なんと彼は患者として出たのだ
(詳しいことは憶えていないが)

 

スポーツマンであった彼が
あるとき胸の苦しみを感じ
子供たちの勧めで病院に行った

 

そこで即入院
心臓を動かしている血管が詰まっていて、つまり心筋梗塞
しかも、彼の場合は4本の血管が詰まっていて
医者より
「手術しても、助かるかどうかは5分5分以下
その賭けがいやなら、投薬で延命を図ることも出来るが」と言われた

 

言ってみれば死刑宣告だ

 

その時、彼は荒れたそうだ
短い期間ではあったが
毎晩飲み歩いて、毎度ぶっ倒れるまで飲んだそうだ
自暴自棄の状態であったのだろう
その頃のことを彼は「つらかった」と言っていた

 

しかし、飲み歩いているうちに
仲間から
「心臓病の手術の天才がいるそうだ」
「手塚オサムの“ブラックジャック”のモデルになった人だそうだ」
そんな話を聞いた

 

しかし、どの話も
漠然としてはっきりしない

 

それから彼は
生きることが出来るかもしれないと
その医者が誰であるのか、それがどの病院にいるのか
インターネットを使って
必死に探したそうだ

 

そうして、とうとうその医者を突き止めた

 

もちろん、すぐ訪ねた
直接その医者に会いに行ったのだ
自分の病気のことを、余命いくばくもないことも話して
手術してもらうことを懇願した

 

自ら、自分を助けてくれる医者を捜し当てたのだ

 

偶然にも、まったく偶然にも
いつも満床のベットがたまたま一つ空いていて
田さんは、入院、手術を受けることが出来ることになった

 

そのときたまたま、テレビ局の人が来ていて
田さんに、入院から手術、退院までを取材させて欲しいと言って来た

 

田さん、即時にOK
そのOKした理由が振るっている
「テレビが取材していれば、手術もきっと、いつもより力が入るだろう。
助かる確率が高くなるに違いない!」
だそうだ

 

当然のように手術は大成功
その様子が全国ネットで放映されたわけだ

 

4本の血管を取り替えるため
腕と足から血管を移植する手術であって
まさに大手術
その腕と足から血管を取った傷跡を見せてくれた
いや、すごいものであった
さすがに胸の手術後まで見せて欲しいとは言えず、見なかった
(内心は見たかったが)

 

死の瀬戸際からの生還

 

元気にしていて
ちょっと胸が苦しいと思って、病院来って見たら
「あなたは、助かる可能性が低い」と
死刑宣告を受けた

 

自暴自棄にも陥ったが
助かるかもしれない糸口を見つけて
自ら必死に情報をまさぐった
あきらめなかったのだ

 

そして、その情報にぶち当たって即行動
テレビ取材を受けるということも含めて、自分が助かるための計画をして

 

その手術を受ける決断をした

 

そしてそのタイミングが、たまたま偶然にもベットが空いている幸運に恵まれた

 

彼は、自分の運命を自分で切り開き
見事、生還した

 

 

生きる意志の強い人は
何者をも恐れず、正しいと思ったことを
何のためらいも無く言い、行動し、実現していく

 

生きる意志の強い人は
絶望の中でも
ほんの少しの糸口を見つけることによって
自らの意志によって
生き続けることを決してあきらめず、見事生還した

 

この人
剛直であるだけに
たびたびの失敗もしている

 

しかし、その一つ一つに
「自分が選んだことなんだから」と
何のためらいもなく、自己の責任であることを言い
笑い飛ばしてしまうのであった

 

 

その主人公である田さんは
もう、すっかり元気元気で、東京営業所のいつもの居酒屋「一歩」で
みんなと飲んだ

 

さすがにタバコはやめていたが
酒はガンガン飲んでいるそうだ(昔に比べれば、うんと減ったそうだが)

 

その何時間か
私にとっては同窓会であり、旧友会であり
何年ぶりであろうか、こんなに楽しい酒は

 

 

田さんに豪快に突っ込まれ、たじたじのsenmu

 

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2003年05月23日(金曜日)

715話 知らんかったぁ~

私は銀行から、お金を借りている
事業をやっていくからには
それなりの借金はある
世の中には無借金会社というものもあるが
それはそれで、それなりの意味があるとは思うが
もともと一文無しから始めた事業であり
また、先行投資を繰り返すことが宿命の商売なので
無借金状態でいようと思ったら
それは、事業の成長のスピードを相当に落とさなくてはならないことになる

 

安いコストで有効に資金を調達して
それを、事業を進化させるために、有効に活用していく
これは事業をやっていくためにはプラスのことであり
それが事業として役立つことであり
有効な投資ならば、借金も会社としての実力の一つであるとは、実感を持って言える

 

大きな借金を背負っていることを、不幸などと感じていたら
事業はやっていけない

 

しかし
これは、事業の発展のための資金調達であり
それによって最終的に利益を生むためのもので無ければならない
そして
資金調達に伴う“金利”とは、新たな利益を生むための“コスト”であり
それ以上でもなければ、それ以下でもない
金利とは、“コスト”
新たな利益のためのコスト

 

だから、そのコストが
事業としての利益を圧迫するようなレベルであってはならないし
間違っても、利益を食いつぶすようなレベルものであっては
資金調達の、その意味から逸脱するだけではなく
事業そのものを食いつぶしてしまうことになる

 

“金利”とは、事業として、より多くの新しい利益を生むための“コスト”

 

だから、現在のように非常に金利が低い時代は
先行投資のための資金調達のコストが非常に安く済み
これから事業をもっと伸ばしたいと考えている者としては
大変ありがたい時代なのである

 

私の会社が資金調達のために使っているコスト
つまり金利は、平均約1.7%
たとえば
1億円借りていたとしたら、年間170万円、月間約141,666円
この金利が高いのか、どうか分からないが
事業を成長させていくために必要なコストとして
許容範囲であると考えている

 

 

個人の借金は
多くの場合、お金が足りなくて借りる
そのときの収入が、それまでの生活を維持するために足りなくなったとき借りる
あるいは
今の収入では買えないものを、タダ単に欲しいから買う。そのために借金する
両方とも同じような意味を持つが
これは事業の観点からすると破滅的なことと写る

 

そのときの収入では維持できない生活を
これからも続けようと考えること自体が無理なことで
それを借金でまかなってしまうと
それ以降、収入が劇的に増える、つまり
維持しようとしている生活に対して足りない収入が、足りるレベルまで増え
そして、借金を返すための資金の分まで収入が増えなければ
借金は増え続ける

 

今はデフレの時代、収入は低くなっていくのが
経済の流れなのである
収入以上の生活レベルを続け
しかも、その上に借金を返済することなど“無理”なのだ

 

そして、悲劇的なことに
個人向けの借金は恐ろしいまでに金利が高い
事業のための資金調達の金利の10倍以上
これは事業で考えた場合だと、絶望的な金利であって
そんな金利を、つまりコストをかけてまで調達した資金を使わねば
資金繰りが出来ないような会社は
遅かれ早かれ、必ず破滅する
常識的なことである
それは、個人であっても同じことであろう

 

そんな馬鹿高い金利を取る借金とは
必ず破滅する人が発生することを勘定に入れた
それも高い確率で破滅する人がいることを、最初から見込んだものであり

 

そういうものが「サラ金」であって
それは、人の不幸を前提とした事業であって
今の世の中でもっとも卑しい事業であると思ってきた

 

しかし昨日、驚くべきことを知った
個人に対して、恐ろしく高い金利をもって貸し出しをしているのは
主にサラ金だけかと思っていたら
いわゆる一般のクレジットカードも、同じような貸し出しのシステムを持っていた

 

実際に私は、銀行とか金融公庫などからしか借金をしたことが無いので
うかつにも、そんなことを知らなかったのだ

 

クレジットカードのキャッシング機能というのだそうだ

 

自分が買い物をした代金を
自分の預金から、自動的に支払ってくれるクレジットカードは
大変便利なものであり
私自身も日常的に多用している
それが、日本国内だけでなく、世界中のたいていのところで通用したのには
驚きと共に、現代社会の発達に改めて感心したものだった

 

そのクレジットカードで“現金”を調達できることは知らなかった
自分の預金に残高が無くても
貸し出しという機能で“現金”が、ATMのような機械で(これもATMというのか?)
クレジットカードを通して暗証番号を打てば
現金が出てくるというのだ
まるで、キャッシュカードのように

 

しかも、その金利が15~28%と、まったくサラ金と同じような高金利であり
同じような約款であるという

 

私は、何がどうあってもサラ金からだけはお金を借りない
そう思っているのだが
私が今持っているクレジットカードが
サラ金と同じことをやっていたなんて
びっくりしてしまった

 

カードローンだという
これでお金を借りることをキャッシングだという
「カードローンで気軽にキャッシング」か?

 

そしてそのカードとは
大手のスーパー・デパートから、航空会社、自動車ディーラー
ホテルチェーン、石油元売り、などなど
ありとあらゆるところから発行されているクレジットカードに
“カードローンのキャッシング機能”が
ついているらしいのだ

 

いや、知らんかったぁ~、である

 

15~28%という
事業のための資金調達であったならば致命的な
高金利の個人向け貸し出しの
網の目が
ここまで、消費者の身辺に、くまなく徹底的に張り巡らされているとは
そして、収入以上の消費を、執拗にテレビコマーシャルで煽っている

 

事業のための借金の金利は
1%~2%
一部の優良企業ならば、0.数%での調達すらしている
家を建てるための貸し出しは3.数%
正当な理由のある借金の金利とはそんなもの
このデフレの時代
そんな金利でも、それなりに負担なのだ

 

その10倍以上の金利の借金など考えられない
それは、正当な理由の無い
発展的な展望の無い、タダの刹那的な欲望だけに根拠する
不当な借金だから
そんな馬鹿げた金利で無ければならないのだろう

 

この先、日本はどうなっていくのであろう
暗澹とした気持ちになる

 

考えてみれば
国自体が、収入よりはるかに大きな予算を組み
借金の泥沼地獄の真っ只中におり
なお深みにはまっていくことをやめようとしていない

 

先日の名古屋の新聞に
名古屋の予算は
月40万円の収入の家庭が
毎月60万円使う生活をしているのと同じである、と書いてあった
しかも、そのための借金の金利を、また借金をして払っている
その先には破綻があるのみ

 

その姿は
返済不能の借金を繰り返し
ぜったい抜け出せない泥沼にどっぷりとつかりながら
なお、ブランド物のカバンを誇らしげに持ち歩く
悲しい姿に似ている

 

そう結んでいた

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