谷 好通コラム

2004年06月16日(水曜日)

977話 高速バスの悲惨

錦州から北京へは高速バスで移動することになっていた。
本当は飛行機の便も出ているのだが、
飛んでいる曜日と飛んでいない曜日があって、
たまたま勘違いで、飛んでいない曜日で予定を組んでしまったのだ。

 

仕方なく高速バスを使うことにしていた。

 

私は高速バスには良い思い出が無い。
はるか昔に、古屋→東京の高速バス「ドリーム号」に乗り、
何があったかは忘れてしまったが、とんでもなくシンドイ目をして
金輪際、絶対に高速バスには乗らないと決めていたのだ。

 

しかし、あれから何十年も経って、バスも改良されただろうし
錦州→北京→上海の予定を立ててしまってしたので、
今回は仕方なく高速バスに乗ることにしたのだった。

 

錦州から北京までやく500km、高速バスで6時間とあった。
なんとなくだがいやな予感がする。

 

昨日の錦州での「奥星越秀」さん話し合いも無事進んで、夜は楽しい宴会。
すっかり美味しいご馳走と
好物になりつつある“白酒”(40゜以上ある蒸留酒)を美味しく飲んで
お腹充実のうちにホテルに帰る。
しかし、ホテルの電話が外線とつながらず、交換台の呼び出しも分からずで
錦州でのインターネット接続は早々に断念
夜はぐっすりと眠った。
次のの朝は早い。

 

錦州の朝は、さわやかであった。

 

 

高速バスは朝8時出発、6時に起きて荷物の準備をする。
朝ごはんは必ず食べる。
しかしこの日は、昨日の張さん達が朝ごはんも一緒に食べようと
わざわざホテルに来てくれた。
朝ごはんを食べて、すぐバスの発着所に送ってくれるという。

 

しかしいつもは、
朝ごはんを食べてから、
ゆっくりとトイレに入るのが日課になっている。
それをせずにすぐに出発というのは、ちょっと不安に感じたが
せっかくのご好意なのでそうすることにした。

 

バスの発着所は賑わっていた。

 

 

さて、6時間も乗る高速バスは、どんなバスだろう。
パンフレットには“豪華バス”とあったそうだが、
中国の“豪華”はかなり怪しいところがあって、バスを見るまでドキドキものであった。

 

バスの発着所は賑わっていた。
私たち3人の切符で満席になったそうだ。
どのバスか?

 

これか?

 

 

いえいえ、私達のバスは「これはすごい」の最新のサルーンバスであったのだ。!(^^)!

 

 

わざわざ見送りにまで来てくれた張社長たち
ありがとうございました。

 

 

北京行きのサルーンバスは
席は三列で、一つ一つのシートがたっぷりとしていて肘掛が付いている。
これなら大丈夫と嬉々としてバスに乗り込む。

 

しかし、残念ながら
最後の切符だったので、一番後ろの席であり、ここだけ肘掛はなかった。
ここまで着たらもうしょうがない。観念して座り込む。

 

バスは市内を抜けて高速に入る。
市内の道路は路面が悪く、肘掛なしの後ろの席はつらいなぁと思っていたが、
高速道路に入ると、いくぶんはマシで
これなら6時間がんばれると思った。

 

 

走りはじめてから1時間ぐらい経ったであろうか、
やはり、キチンと、もよおして来た。
ウ○○.がしたい。
まずい。

 

しかし、よかった。
この最新鋭サルーンバスは“トイレ付き”なのである。
私はいそいそとバスの中ぐらいの階段脇にあるトイレに向かった。
乗客の目の前でトイレに入るのは恥ずかしい。
しかし、そんな事は言ってられない。
・無理やり体を押し込むように入って
・やっとのことでおさまったが
・さすがに小さいし、狭い。
・照明のスイッチを探すがない。
・照明なしみたいだ。中はほとんど真っ暗。
・予想通り、やはりトイレット紙が無い。
・紙を持って入って良かった。
・さっさと用を済まして、水を流そうとする。
・水を流すノブらしき物が無い。暗さに目が慣れてきたので、必死に探すが無い。
・かなり時間がかかったがやっぱりない。水が流せない。
・ふと、顔を上げると目の前の壁に「大○禁止!」と書いてある。
・○の中の文字は“解”であって、それは中国語で○ン○のことであるらしい。
・禁止ったって、しちまったものは引っ込みようがない。
・「どうしよう・・・」
・私は“してはいけないこと”を、してしまったのだ。
・しかも、その証拠が流せない。
・バスというこの狭い閉じ込められた空間の中では、逃げ出すことも出来ない。
・さぁ、どうする・・・・・
・泣きたくなってきた。

 

そのあとの処理は、具体的に書きたくない。
皆さんも読みたくないと思う。

 

しかし、ひとつだけ言うならば、
色々やればやるほど裏目に出て、かなり悲惨なことになったことは事実だ。
それでも、なんとか形だけでも始末できて、

 

とりあえず、今、無事に自分の席に着いている。
ジッと、誰かが文句を言い出さないか構えているが、誰も何も言わない。
それどころか次の人がトイレに入っていったが、何もなかったように出てきた。
ちょっとホッとする。

 

実はこの話
あの地獄のように狭い大○禁止のトイレに行って
悲惨な出来事があってから、
すぐに、これを書き始めたのだ。
何かやっていないとバツが悪くて、いたたまれない。
いたたまれなくなって書き始めたコラムは、多分これが初めてだ。

 

 

休憩で寄ったサービスエリアには、
絶対に積み過ぎであるトラックが何台も止まっていた。

 

 

何だかんだで
途中で錦州での話も書いて、
つまり、コラムを2つ書いてしまった。

 

となりでにくったらしいほど熟睡している李と荻野

 

 

バスが走りはじめてから、そろそろ4時間

 

途中から降ってきた雨の中を走る。ず~っと同じような風景であった。

 

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2004年06月16日(水曜日)

976話 張さんの大成功

錦州の空港に着いたのは、午後2時過ぎ
訪問先の会社の社長など幹部の方たちが、
BMWの“X5”を2代連ねて出迎えてくれた。
この“X5”、4.4リットルのV8エンジンの一番高いやつである。
それが2台。

 

錦州は中国では田舎の部類に入る市である。(それでも人口は300万人)
その街に、このX5はこの2台だけであると同時に
最高のステータスであるのだろう。
X5が2台と、なぜかテレビカメラマンまでいる。

 

びっくりした。

 

飛行場から工場までは20分ほどのところにある。
道は広い。
片側ゆったり3車線+自転車車線って感じだ。
道路が立派な割には車の量は少ない。

 

前に行くのが、張社長が乗ったX5、それに先導されて私達が乗ったX5が行くのだ。

 

 

工場に着いたら、またびっくり
今度はビルの入り口にずらっとスタッフの人達が整列して待っていたのだ。
歓迎のセレモニーらしい。
こんなの初めてで、ものすごく照れる。
(本当にメチャクチャ照れた(^_^;))

 

 

今度は、この会社の案内ということでAVルームのような部屋に案内される。
パワーポイントで会社の歴史から、考え方、将来の計画など
映像を使って大変分かりやすく説明していただいた。
なかなかの設備である。

 

 

この会社、正式名「錦州奥星越秀汽車服務有限責任公司」は、
(とても長いので奥星越秀さんと書く)
8年前に
社長の張さんと奥さんの二人で
ちっぽけな「洗車屋」を始めたのが最初であったという。
その洗車屋さんは張さんの努力で大繁盛店になった。
そして儲けて、何年か前に鈑金塗装の大きな工場を建て、これまた大繁盛。
今では、十数台分の鈑金塗装ブースと、修理工場を持ち

 

 

保険業も忙しいらしい。
加えて、今、中国で大流行の“自動車倶楽部”を作り
レッカー車を揃えてロードサービスまで繰り広げている。
GPSの仕事もしているようだ(私はGPSのことはよく分からない。)

 

いずれにしても、
夫婦二人で、裸一貫で始めた洗車屋をここまで大きくしたのは立派である。
この社長の立身出世伝は、錦州のみならず
遼寧省、吉林省、黒龍江省など中国東北部では広く有名なのだそうだ。

 

 

そして今回、そんな功績もあって
奥星越秀さんが、政府から自動車のメンテナンスの学校を作るようにと
投資を受けたのだそうだ。
・車の鈑金塗装
・車の修理整備
そして、
・車の美容、つまり洗車とかコーティングとかの類である。

 

そのようなことを教える総合学校を作ることになっているとおっしゃる。
鈑金をスウェーデンの何とかという会社。
塗装をデュポン社
修理を中国国内の修理に長ける大手会社
そして、洗車からコーティング、
その他色々な車の美容をアイ・タック技研が担当するというのだ。

 

何ともすごい話。

 

しかも、この学校の単位を全部とって無事卒業すると、
4年制大学を卒業したのと同じ資格を得られるという。
何とも何ともすごい話。

 

その学校の建物は、パースを見ると
とんでもなくでっかく立派なものであるが、
中国の「・・・・を作るつもり」「・・・・・を建てるつもり」は、アテにならないことを、
私は今まで何度も経験している。
しかし、
「2ヵ月後の8月に着工する。その時の着工式にはぜひ来て欲しい。」とか、
具体的な話がいっぱいあって、
建設用地を前回李さんと鴨居君が訪問した時に見せてもらっている。

 

これは本物のようだ。
何ともすごい話ではないか。

 

 

私は率直に聞いた。
「汽車美容の会社とかケミカルメーカーはたくさんあるのに、
なぜ、我々アイ・タック技研を選ばれたのですか?」

 

私は、うまい儲け話とかの類が嫌いだ。
そういう話に乗ってろくなことはないと信じている。
この学校の話は、別に儲け話でもなんでもないが、大きい話ではある。
だから、何故アイ・タックなのか、この点について納得行く話でなければ
この話は辞退しようと思っていた。

 

張社長、曰く
「最初はやっぱり、上海のショーです。
会場で話をいっぱい聞きましたが、
アイ・タックさんは、ケミカルなどの商品の売り込みなどではなく、
洗車とかコーティングの実際の話を熱心にしてくれて、うれしかった。
この会社は、車の美容のことを本等に知っている本物だと思った。
だから、ぜひ合作したいと思いました。
そして、いよいよアイ・タックさんに決めたのは、
前回、李さんと鴨井さんが錦州を訪問してくれた時、
鴨井さんの作業を見て、
これこそ、車を本当に大切にしている本物のプロだと思った。
あの熱心さも感心しましたが、
私も洗車から身を起こした人間です。
作業を見れば、それが本物であるかどうか、
その会社がどんな会社であるのか分かるつもりです。」

 

 

私にとってこれ以上の殺し文句はない。
「分かりました。ぜひ協力させていただきたいと思います。」
返事はこれ以外になかった。

 

錦州の学校の話がどのような形で、
どんなレベルで実現し、私達がそこで何が出来るのか
まだほとんど見えていない。
そして、それがどのようにビジネスにつながっていくのかも、勿論はっきりしていない。

 

ただ、精一杯協力して、
汽車美容(洗車・コーティングなど)の学科が設けられるという
夢のような学校の実現に力になりたいと思ったのです。

 

将来、
人口300万人の田舎“錦州”に
立身出世伝の張さん有り。
奥星越秀さん有り。

 

そして、KeePre有りとなるかもしれない。
また、中国に楽しみが増えてしまったのだ。

工場からの帰り、飛行場からずっとビデオを回し続けてくれていたカメラマン。
デジカメを向けたら、照れくさそうにポーズを取ってくれた。

 

 

工場の表の壁に張り出されていた、優秀社員の人達

 

 

現場をよく知っている社長の会社。りっばな会社である。

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2004年06月16日(水曜日)

975話 小さな飛行機で

昨日、つまり15日
錦州のホテルでインターネットへのアクセスに失敗したので
このコラムを昨日中にアップできませんでした。
ですから、この話の中での今日とは15日のことです。

 

 

朝、JAL便に乗って、上海に着く。
機体はボーイング767-300、国際便としては小さめの機体だが、
それでも、乗客280人ぐらいの中型機。

 

そして今乗っているのが、
上海から地方都市“錦州”に飛ぶ“上海航空”
機体はカナダのボンバルディアCRJ-200である。
この機体は小さい。
横4列席で12列。つまり4×12=48席の小型ジェット機だ。

 

この機体は日本でもJALグループが
名古屋→新潟、名古屋→帯広線などに使っている。
小型だが最新鋭の飛行機のひとつである。
まるでビジネスジェットのようで、軽快で大好きな機体のひとつである。

 

 

飛行機に乗る時
「小さい飛行機は揺れるので怖い。飛行機はやっぱり大きい方が安心だ」
という人がいる。

 

たしかに、小さい飛行機は質量が小さいわけなので、
荒れた気流に入った場合、気流の乱れに敏感に反応して
鋭い揺れ方をする。
急に“ビシッ、ガクッ、ドン”と揺れるわけだ。
それに比べて大きい飛行機は、質量が大きいので
気流の乱れに対して鈍感に反応し、
“ドッスン、ズッシン”という感じの揺れ方になるわけ。

 

小さい機体は振幅は小さいが、周波数が多くガタガタとたくさん揺れる。
大きい機体は振幅は大きいが、周波数が少なくゆったりと大きく揺れる。
どちらが怖いか。

 

それぞれの感じ方によるわけだが、
やはり急に鋭い揺れ方をした方が、ドキッとする分怖いのかもしれない。

 

しかし考えてみると、私は小さい機体の方が安全に思えるのだ。

 

飛行機の揚力は翼の面積に比例する。
(もちろん翼の形状によって大きく変わるが)
空気抵抗も面積に比例する。

 

面積は大きさの二乗に比例し
体積は大きさの三乗に比例する。
だとするならば、
たとえば、
ある飛行機の2倍の大きさ(長さ、高さ、幅)を持った飛行機の場合、
その飛行機を持ち上げる揚力を発生する翼の面積は2倍の二乗、
つまり4倍の翼の面積と揚力を必要とし、
反面4倍の空気抵抗があることになる。
しかし、
その体積は三乗なので、飛行機は8倍の体積を持っていることになるが、
揚力は4倍でしかないので、
持ち上げられる重量は4倍でしかない。
つまり、8倍の体積の飛行機が、4倍の重さでしかないわけで、
その飛行機の体積あたりの比重は、1/2となる。
つまり、その2倍の飛行機は、
1倍の飛行機の半分の機体の材料しか体積当たりに使えないことになる。
つまり、体積に対して、
機体の構造が薄いことになる。
“張子の虎”の状態だ。

 

それに比べて小さい飛行機は、大きさの割りに材料がたっぷり使えて、
大きな飛行機より丈夫に出来ていているので
いくらビシッバシッと揺れても、
壊れる心配が無いような気がするのだ。

 

ねっ、丈夫そうに見えるでしょ

 

 

もっともこれは素人考えなので、当てにはならないが。

 

そんなことをブツブツ考えながら、
気流が悪い中を飛んでいく我がCR-Jは、本当にビシッバシッと揺れたのだ。
小さい飛行機の場合、短距離路線に使われることが多く、
あまり高い高度を取らない事が多いのだ。
だから、ちょうど気流の乱れている雲の上端を飛ぶことになって、
余計に揺れる事が多い。

 

 

狭い機体の中、こっそりカメラを後にして機内を撮ったつもりが、
後の人にしっかりとカメラを見られていた。
(怒られんで良かった。)

 

 

中国の国内線は、
ほとんどの場合、食事が出る。
この上海→錦州の便でもやはり食事が出た。
それも、てんこ盛りなのだ。
暖めたご飯とチキンと豆の炒め物
それに、漬物と袋詰めのお菓子などが何と5個も着いている。
杏のクッキー、ザーサイ、アンパン、ピーナッツ、ピスタチオ
それぞれたっぷり入っている。
日本の国内線の飲み物“だけ”とは大違いである。
中国の国内線、気に入った!

 

 

大満足ではあるが、
実は、朝、名古屋空港でサラダセットを食べ(ダイエット中なのだ)
名古屋から上海の飛行機の中で
いささかカロリーオーバーのランチを1/3残して食べ、
そして、この国内線でもたっぷりのランチも食べてしまったのだ。
午後12時点ですでに三食を食べてしまった。
今までのダイエットの何日間分が木っ端微塵である。
ビシッバシッと揺れながら高度を下げて錦州の空港に近づく

 

空港に降り立ったCR-Jは、一段と小さく見えた。
錦州空港もかなり小さい。

 

 

預けた荷物の受け取りのコンベアーには、
私たち3人の荷物の他には、あと3つ乗っていただけであった。

 

 

錦州空港には、錦州で一番大きな修理工場の社長と幹部の方たちが
出迎えてくれた。
その工場の方たちの話は、次の話にする。

 

しかし、出迎えの方たちの中にテレビカメラが混じっていたのには驚いた。
私たちをしきりに撮っている。
これから何が起こるのやら。

 

 

工場へ向かう途中で踏切があった。
単線のその線路には長い長い貨物列車が通る。
かなり大きな貨車が何と54両!
これを、たった一両のディーゼル機関車が引っ張っていたのである。

 

 

そして、列車が長い時間かけて通り抜けた後の踏み切りの向こうには、
私たちと同じように長い時間待たされたのか
不機嫌そうな“ロバ”とおじさんがいた。

 

 

錦州、あなどってはいけないようである。

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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