谷 好通コラム

2004年12月02日(木曜日)

1069.スモッグに沈む街

以前、上海の李さんから聞いたことがある。
「私が生まれ育った西安は、いつも空が黄土色だった。
はるか遠くタクラマカン砂漠からの黄砂で空がいつも覆われていたから。
大学に通った上海では、空はいつもねずみ色だった。
だから、青い空をほとんど知らなかった私は、
留学でやってきた名古屋に一番感動したのは、空が青かったことです。」

 

上海の空は、
いつもドヨーンとねずみ色に曇っていて、スカッとした感じがしない。
街の遠景もたいていの場合霞んでいる。
“スモッグ”のせいである。

 

それでも最近は、
排気ガスとか排煙の規制が普及してきて
スモッグもかなり解消されてきているという。

 

昔は、産業用として石炭がたくさん使われていて、
それはそれは排煙がひどかったらしい。
今では工場もほとんど石油化されて、
昔のような極端なスモッグは出なくなっているという。

 

確かに、2年ほど前、私が上海に通い始めたことに比べても、
今は、明らかに空がきれいになってきているような気がする。
青空ですら、時折見ることが出来るのだ。
上海で青空を見たことがなかったと言う李さんが、
上海の大学に通っていた頃に比べれば格段のきれいさなのだろう。

 

それでも、やはり上海のスモッグは確実にある。

 

30日に南昌から上海に飛行機で飛んできた時のこと。
南昌の空港を飛び立ってしばらく、下の風景は山が続き、
それに白い霧がかかって、絵を見ているようできれいであった。
やがて上空に至り、
いつものように、空は吸い込まれるような群青が広がり、
下には真っ白な雲海がある。

 

 

飛行機が飛び立って45分ぐらい。
この日の強い偏西風が追い風になって、
行きは1時間20分かかったものが、帰りはもう着陸態勢に入る。
下にはまだ白い雲が広がっていた。
かなり低い所にある雲である。

 

ところが、ふと気がつくと、
その雲が“ねずみ色”になっている。
「あれっ?」と思って後ろの方を見ると、
白かった低空の雲が、境界線を持って突然ねずみ色に変わっているのではないか。

 

 

上海に近くなって、突然低空の雲が真っ白からねずみ色に変わった。
まるで、ねずみ色の海が広がっているようだ。
だんだん高度を下げていく飛行機は、
そのねずみ色の海に体を沈めていくようだ。

 

 

やがて、ねずみ色の雲の中にどっぷりと入り込んだ頃、
その雲の底に上海の街がうっすらと見えてきた。

 

 

着陸寸前。
高度は200mを切っている。

 

 

あの鼠色に突然変わった雲は、上海のスモッグだったのである。
降り立った空港は、
いつもの国際便が降りる上海・浦東空港ではなく、
上海の市内にある古い空港・虹橋(ホンチァオ)空港である。

 

 

いつもの浦東空港は、上海市内から50km以上離れていて、
しかも海沿いにあるので、こんな現象がなかったのだろうか、
晴れた日の虹橋空港に降り立ってはじめて知った鼠色に沈む上海の姿であった。

 

それでも、スモッグはかなり解消されている事は分る。
朝、ホテルで起きて外を見ると、
はっきりと青空が見える。
こんな空は、2年前、上海に来始めた時には決してなかったものだ。
しかし、
ビル街は、街の底によどんだスモッグで、
相変わらず煙って見える。
このスモッグは、昼になってもなくならず、ずっと街を煙らせている。

 

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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