谷 好通コラム

2005年02月01日(火曜日)

1110.何にでも成れる街

長い間、日本国中を回ってきて思うことがある。
日本国中のどこの街も、それぞれに個性を持っているが、
その中でも、
東京だけは、特別の意味を持っていると感じている。

 

生粋の名古屋人である石原所長は、
東京以外に住む気はないと公言するし、
まるで三代前から東京人であるかのような喋り方をする。
同じく愛知県豊田市生まれの鶴見部長も、東京は苦手であると言いながら、
東京で活き活きと仕事をしているし、
新婚早々、奥さんも東京に連れて行ってしまった。
私の息子も、
東京に住み始めたら、
東京以外にはもう住む気がないようなことを言っている。
去年の後半東京に赴任した藤村君(元・快洗隊安城店Mg)までもが、
「ひょっとしたら、僕は、東京とか横浜とかに住んだ方が合っているかもしれない。」
などと言い出す始末だ。

 

いずれにしても、
東京に赴任した人間で、そのまま東京に居ついてしまう人が、
私の周りにはすごく多いのだ。

 

なぜかと聞くと、みんな口を揃えて「東京は便利だから」と言う。

 

便利なだけで、
自分の故郷を捨ててまで東京に住み着いてしまうわけがない。
便利であることは、
何かのための“条件”になることはあっても、
便利であること自体が、“目的”には成り得ないのだ。

 

ローカルに比べて物が揃っていることは確かだが、
そこまで厳密に物が揃わなければ出来ないことなんて、そうは無い筈だし、
ローカルでしか手に入らないものもある。

 

というより、東京には物と人と情報が溢れ過ぎていて、
本当に必要であり本物である物を選別するのに、
余計な労力がいるという不便な一面もある。
加えて、
東京の道路は信じられないようなひどい渋滞が多くて、
車の移動にとってはとても便利とは言えず、
到着の時間の約束を出来る所ではない。
かと言って、公共交通機関を使えば、歩かなければならない距離が長く、
歩行が苦手な私としては、こんな不便な所はないと感じる。

 

色々な意味で東京が一番不便である面もあるのだ。

 

一方、情報という視点からすれば
インターネットが発達した現代、何処ででも情報が豊富に手に入るのだから、
東京に居るという意味は、
以前に比べれば、むしろ薄まっている。
「便利だから」というのは、理由になりそうで、なりようがない事とも思えるのだ。

 

多くの人が東京(関東圏のという広い意味で)に居つく理由。
それが何なのか、長い間漠然としていたのだが、今日ふと思いついたことがある。

 

若い人にとって、
東京は「何にでも成れる街」だと思うのだ。

 

東京には、
日本国中のほとんどの真ん中としての機能が集中していて、
日本の主たる企業は、本社を東京に持ち、
あるいは、本社機能を東京に置いている。
権力機構も東京に権力を集中し、
また、マスコミという一番影響力のある情報も、東京にキーを集中している。

 

だから、東京には“主役”が集まっている。
少なくとも、“真ん中にいる人”が集まっている。
真ん中にいると言っても、確かに“トップ”は大抵の場合真ん中にいるが
真ん中にいる人が必ずしも上位の人がという意味ではない。

 

東京に居ると、真ん中にいる人との関わり合いが多くなり、
真ん中ならではの仕事に関わることが多くなる。
真ん中で仕事をしていると、日本全国に影響を与える仕事となることが多い。
だから、どんな仕事をしても、
なんか大きな仕事をしているような感じがする。

 

もちろん大きな仕事は、
あらゆる力が集まっている東京に集中しているが、
真ん中で仕事をしていること自体が、
大きな仕事であるというわけではないが、
少なくとも真ん中にいると、そんな錯覚に陥ることもあるものだ。
だから、
真ん中で仕事をし始めると、
ローカルで仕事をすること自体が、今の自分が小さな存在になってしまうような、
そんな錯覚を持ってしまうこともある。

 

たとえば(例えが適切かどうか怪しいが)
銀行の女子行員が、お金の札束を数えてくれと言われる。
東京の都銀の行員は、その時10億円の札束を渡され、10時間近くかかって数えた。
(ありえないか)
田舎の信金の行員は、その時2000万円の札束を渡され、12分で数えた。
この仕事の差とは、
仕事の量が多いか少ないかであって、
仕事が大きいかどうかの差ではない。

 

たとえば(例えが適切かどうか、もっと怪しいが)
ある学生が、国会議事堂の前の交通量を数えるアルバイトをした。
ある田舎の学生が、町役場の前の交通量を数えるアルバイトをした。
この仕事の差は、何も無い。
あっても、物価の高い東京でのアルバイトの方が自給が高いぐらい。
しかし国会議事堂前にいれば、ひょっとしたらテレビに映る可能性もあるが、
町役場の前では、万が一にも無いだろう。
そんなこともあって、
国会議事堂の前でのアルバイトの方が、大きい仕事をしたような気がする。

 

同じ仕事をしても、
真ん中でやると、
何か大きなことをやったように感じることもあるし、
あるいは反対に、どんな大きなことをやっても
真ん中ではいつも、大きな事が動いているので、返って小さく感じてしまうこともある。

 

いずれにしても、
真ん中には大きな事や大きな富が集まっているので、
ひょっとして大きな事に巡り合うような、そんな可能性があることは事実だ。
しかし、
大きな事、大きなチャンスも多いが、
そのチャンスを掴もうとしてあがいている人の数もそれ以上に多いので、
チャンスを掴む確率が、別段、地方に比べて高いとは思えない。
しかし、
チャンスの絶対数が多く、
チャンスを掴む可能性が高いように思えることも事実だ。
そして、そのチャンスを掴んだ時の報酬が、
集まっている富の大きさに比例して、大きく得られると感じられる。

 

 

ある意味、東京には自由がある。

 

田舎で奇抜な格好をすれば、変人扱いされるだけだが、
東京では、そんな人の格好をいちいち気にする人もいないので、
本人の意識しだいで、東京では一つのスタイルになる。
田舎では、汚い格好をすれば、ただのダラシナイ人間と見られるだけだが、
東京で汚い格好をしても、
ひょっとしたらそれも一つのファッションと見られる可能性もある。
もちろん本人の意識の問題だが。

 

 

東京と総称する、この場合、関東という場所は、
やたらの人間が集中しているところで、
日本国中の1/3ほどの人口が、
日本のほんの数%の面積でしかない関東平野に集中している。

 

これは二つの意味を持っている。

 

一つ目は、
人口の密度が高いこと、
つまり濃いマーケットに中は常に刺激に溢れており、
少々のインパクトでは、砂に水が吸い込まれていくように消えて無くなってしまう事。
言い方を変えれば、失敗が許される街。

 

二つ目は、
逆に、ホンのちょっとのインパクトでも、
それが有効なものであれば、
濃い人口密度に対して大きな影響を与え、大きな反応が得られること。
つまり、大きな富を得られるということ。
言い換えると、
「当たれば、でかい」という事か。

 

 

まとめて見ると、

 

東京とは、
特に若い人にとって、

 

真ん中にいるという事実だけでも、
自分が大きく思え、自分自身に存在感を持てて
しかも、真ん中ならではの大きなチャンスがゴロゴロと転がっていて、
人と違うことをする自由があって、
失敗も許され、
万が一にも、当たればデカイ事になる。

 

そんな街と言えるのではないだろうか。

 

東京とは、(広い意味では関東)
自分がどんな風になるか、その可能性の幅が大きく、
当たればデカク、
日本国中を席巻するような、そんな自分を感じながら生きられる街。

 

客観的に見れば、
あるいは俯瞰的に見れば、
圧倒的な密度を持った群集の中の一人であるのだが、
その群衆の中から主観的な見方で見ると、
自分が真ん中にいて、
大きなチャンスと、中心的存在感を自分に感じさせてくれる街。

 

チャンスにさえ恵まれれば、何にでもなれる街。
そういう意味で、東京とは“夢”を誰でもが顕在的に、あるいは潜在的に持っていて、
“夢”に溢れる街であるという事も出来る。

 

これは、いい意味でも、悪い意味でも、
名古屋でも、大阪でも、札幌でも、福岡でも感じる事の出来ない空気あり、
東京独特の空気であるような気がする。

 

 

その東京に今新幹線で向かっている。
明日の午後、東京での一回目のセミナーがあるのだが、(東京では2回ある。)
明日の朝、
全国的な大寒波に襲われている日本列島の中で、
名古屋も雪が降るらしく、
ひょっとして新幹線が走らないことでもあったら、
大変なことになるので
今日の内に東京に入ることにしたのだ。

 

会場である東京駅の前の丸ビルの会場には、
どうしてもということで、定員の1.5倍の人が来られると聞いている。
またすし詰めになってしまいそうで、
大変申し訳ない限りである。

 

東京で私は何になれるのだろうか。
それでも東京がだんだん好きになってきていることは間違いなく、
私は、夢見るオジサンになってきているのだろうか。

 

一昨日来た横浜の朝、大都会でもこんなに澄んだ朝日があることは
すごくいい事で、ちょっと感動。

 

 

今日来た東京、秋葉原

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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