谷 好通コラム

2005年03月11日(金曜日)

1134.上海で考えたこと

もう2年以上も中国に、
とりわけ上海には三十回以上通っていて、
この街に対して、より親しみが深くなったことも事実だが、
逆に、そこに私達との壁が高くあることを一層強く感じるようになったことも事実だ。

 

高い壁とは、言葉の壁。
日本と中国は同じ漢字を使う民族ではあり、
表意文字である漢字が示す意味はほぼ一緒であり、
中国の略字が読みづらいことはさておいても、書いてある大体の意味はつかめる。
しかし、言葉は全く別のものであってさっぱり解らない。
中国の人と話をする時は、当然、通訳を介して話をするのだが、
この通訳と言うことが実はかなり難しいことなのだ。

 

日本語でしゃべった単語を、一つ一つ中国語の単語にして並べれば、
言葉として通じるように思えるが、
実は全く違う。
それは英語と日本語の関係でも同じことで、
単純に単語を並べても語彙は通じないのだ。

 

通訳は、日本語で喋られた言葉全体の「意味」を「理解」して、
その意味を中国語で“表現”をするという面倒な作業なのだ。

 

そしてその通訳が、“仕事”に関わる話に対してとなると、
その仕事に対する“知識”と“理解”と“技術”を
通訳者が十分に持っていないと、
その“仕事自体”を“理解できない”ので、“正しい通訳”が出来ない。

 

日本で何年か居住して、生活をするのに不自由しないレベルの日常会話が出来たとしても、
いざ、本格的にビジネスの話になると、
全く通用しないことがあるのは、よくあるケースだ。

 

一番手っ取り早いのは、自分がその国の言葉を憶えてしまうことだが、
いかんせん、硬くなりきった私の脳みそは10の単語を憶えると、
11の単語が消えていくという情けなさで、
特に中国語ともなるとその発音は極めて難解かつ困難で、
私は、すでに、簡単な日常語すら憶えることを放棄している。

 

外国でビジネスを成功させようとするなら、たとえばそれが中国ならば、
日本語と中国語の両方について堪能であり、
やろうとしているビジネスについて、その“事情と知識”を持ち合わせており、
しかも、日本人的な感覚と中国人的な感性を両方理解できるような、
そんな“通訳”が、絶対に必要となってくる。

 

ちょっと前までは「李さん」がそうであり、
李さんがどうしても日本に帰りたいとして上海事務所を退職したあと、
「紗」君が、その重要な役割を果たしている。

 

 

二回目の上海でのワンデースクールの今日、
昨日に引き続いて紗君の通訳で、講義を行った。
正直言って、今日は苦しかった。
昨日、緊張のうちに一回目のスクールが終わったあと、
二回目の今日はその緊張から開放されて、
気を楽に、マイペースで講義が出来ると思っていた。

 

この緊張感がなくなった時がいつも危ない。
日本でのセミナーの時もそうであった。
緊張の一回目の名古屋セミナーが終わったあと、二回目の札幌セミナーでは、
時間の読みを間違えるなどの失敗をしてしまった。
その教訓を生かせないのが、私、凡人が凡人である所以。
また、失敗をしてしまった。

 

今日は、現場の方が多く、人数も昨日より多かった。
昆明からわざわざ出かけてきてくれていた“謝”さんが、
昨日に続いて今日も講義に出てくれている。
二日続けて出席してくれた謝さんにいいところを見せようとしたわけではないが、
昨日の話とはかなり違った内容でやろうと思っていた。
加えて、昨日話し忘れたことを、無理やりに話の中に入れようとしたのか、
あるいは、テストプレートを使ってのKeePreの安全性のテストを、
昨日は現場の実技の中でやったのが
うまく行かなかったので、今日は講義の中でやろうと、
無理に話題をそちらに持っていったのが、たたったのか、
いきなり、塗装の理論の展開になってしまった。
しかも、シンプルな形ではなく、
最新のガラスコートの話題とか、あちらこちらに話が飛びながら、
ただでさえ難しい塗装の理論に枝葉の話が入ってしまったので、
余計に話が複雑になってしまった。
通訳の紗君の顔が焦っているのがよく分かる。

 

通訳にとっては、専門用語が一番厄介で、訳すのが大変そうだ。
どうしても、普通の言葉だけでは表現できない部分があって、
それを分かりながら、
そんな言葉を連発する自分を自覚しながら
私は、紗君の顔をじっと見ながら話すようになった。
必死で通訳をしながら、大声を張り上げている紗君に「悪いな~」と思いながらも、
一度始めてしまった理論的な話から、なかなか抜け出せない。
「こんな話、ただでさえ解りにくいのに、通訳を通じて話したら、よけい解らんよな~」
と思いながら、それでも何とかフィニッシュに持っていった。

 

結局、この話で何が言いたかったのか解らなかった人が多かったのでは、と思うと、
今回の講義は失敗であったかもしれない。

 

後悔するか?
こんなぐらいでは、まだとてもとても後悔なんかするわけがない。
失敗なんていつものことである。
(しかし、ちゃんと仕事はしているのだ。)

そのあとの実技は、
昨日足を痛めた私に代わって、谷常務と畠中君と石川君が頑張ってくれる。
通訳はもちろん紗君だ。

 

熱血!谷基司
畠中と石川
みんな真剣だ。

 

 

通訳の沙が、自分の言った事を理解したかどうか心配で、
思わず沙の顔を見つめてしまう谷基司。

 

 

それを通訳する“沙”

 

 

実技を進めるたびに、実に熱心と言うか、執拗な質問が浴びせられる。
ほとんど格闘技のような様相で、実技が進み、
終わったあとはみんなクタクタ。
「日本でのワンデースクールの3倍ぐらい精神的にくたびれた」とは、
明日からまた「南昌」へ飛ぶ石川課長の言葉。

 

中国は貪欲に知識を求めている。
知識に対して貪欲な野獣の中に、
まんまと“スクール”なんてことをやってしまったのだから、
みんなまとめて餌食になったようなものだ。

 

昨日と今日のワンデー、
これがどれくらい営業に結びつくか、
上海総代理店・車聖の営業の責任者である美人Mgの手腕にかかっている。

 

 

しかし、それにしても大変な事を始めてしまった。

 

なんと、これで最後かと思っていたら、
3月29日に、今度は
「広州」でワンデースクールを開く段取りになっているのだそうだ。
講師はどうも私らしい。

 

日本でのセミナーが9回、上海のスクールが2回。
合計11回のセミナー旅行が、11/11で、今日終わるはずであったのに、
この広州の話が出来上がったおかげで、
11/12になってしまったのだ。

 

・・・・・・・ルンルンルンの*:・’゜☆。.:*:・’゜★゜’・:*:.。.:*:・’゜:*:・’゜☆。.:*:・’゜★である。

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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